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■谷口 誠 早稲田大学アジア太平洋研究センター教授 (前OECD事務次長)
私は1990年から約7年半、OECD事務局に勤務し、主としてOECDとその域外国との関係強化に携わった。OECDは外から見ると、Eurocentricだとか、Richman痴
Clubだとか陰口を叩かれていた。しかし近年、アジア、ラ米、東欧諸国との交流を深め、その結果、1973年のニュージーランドの加盟以降21年間門戸を閉ざしていたOECDに、メキシコ、チェコ、ハンガリー、ポーランド、韓国の5ヶ国が加盟し、メンバーは29ヶ国に拡大された。さらにOECDは、特にロシア、中国、インドとの間に特別プログラムを設け、マクロ政策、貿易、投資、税、環境などの分野で対話、交流を深めている。
これは、OECDのグローバル化といってもよい。OECD加盟国の一部には、このようなOECDの門戸開放は、OECDのアイデンティティーを失うものとして危惧する向きもある。しかし、私は世界経済がグローバリゼーションの下で大きな地殻変動を起こしているときに、OECDはかつての先進国中心のOECDであってはならず、よりグローバルな視野に立って、世界経済全体の発展のために、真に役立つ存在感のある国際機関に脱皮すべきであり、OECDはメンバーシップの拡大のみではなく、今後はグローバル化時代にふさわしい新しい政策及び思考を創造すべきだと主張してきた。
私はこのような意図から、OECD勤務の最後の数年、OECDはグローバル化時代を迎えていかなる役割を果たすべきかという課題に挑戦してきた。そしてOECD主要部局からなるスタディ・チームを組織して討議を重ね、その成果は、1997年末、乃he
World in 2020: Towards a New Global Age狽ニして発表された。(日本語版も、先般東洋経済新報社より、「2020年の世界経済」として出版された。)本書は、私がOECD事務次長として勤務した間で最も情熱を注いだ仕事であった。グローバリゼーションのもとで世界経済が大きく変化する中にあり、OECDの描く高成長シナリオの実現には、どのような政策が必要か、また日本は、先進国の中でも最も早く人口減少と深刻な高齢化を迎え、経済成長の鈍化に直面せざるをえないが、その中でいかにして真の豊かさを実感できる経済と社会を実現しうるのか、本書は多くの示唆を与えている。
一つの国際機関の総力をあげて、このような野心的スタディを取りまとめることは決して容易なことではなかった。しかし、私はこのスタディを通じて、OECDは、貿易、投資、税制、金融、労働、教育、環境、エネルギー、農業などの各分野において、世界のトップレベルのすぐれた専門家を擁しており、これらの専門家の持っている豊富な知識と経験をうまく引き出し、これを結集すればきわめて優れたスタディをなしうると確信した。今日の経済社会問題は、高齢化問題や環境問題のように、多くの分野・部門にまたがっている。このような問題について部局を横断して総合的研究を行いうるのは、OECDのみである。しかし遺憾乍ら、OECD主要国の短期的見方と予算上の理由から、現在のOECDを取り巻く環境は厳しい。このOECDのポテンシャルが今後活かされるか殺されるかは、OECD主要国の考え方次第である。私はOECD以外の国際機関での勤務経験があるが、OECDスタッフのレベルは、客観的に見て質的に高い。これまで打ち出されてきた、世界経済運営上の新しいアイデア、ヴィジョン、政策の多くは、OECDの知的貢献に負うところが大きい。グローバル化時代を迎え、アジア経済危機、ロシア、ブラジルの経済困難に直面し、世界経済が新しい秩序を模索している時こそ、OECDの新たな知的貢献が必要である。OECDの十分な活用が望まれる。
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