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■前 OECD事務次長 重原 久美春
経済協力開発機構(OECD)は、その名称から明らかなように、経済協力と経済開発を主な目的として設立された国際機関である。因みに、OECDの前身であるOEEC(欧州経済協力機構)はマ―シャルプランの受け皿として第二次大戦後の欧州経済復興のための政府間協力の場として設立されたものであり、名称の中に「開発」という文字は存在しなかった。
OECDは、その発足(1961年)以来、長らく東西イデオロギー対立のなかで、市場経済原理、多元的民主主義、人権の尊重などを共通の価値とする西側先進国間の経済協力のための「クラブ」として機能してきたといわれることがある。確かに、加盟国は、1973年のニュージーランドの参加以来、最近まで24ヶ国に限られてきた。この間、OECD加盟国経済の世界経済に占めるウエイトは圧倒的なものであり、非加盟国経済の動向が、OECD加盟国経済全体に大きな影響を及ぼすことは、(OPEC石油ショックを大きな例外として)常態では殆どなかったといえる。こうした状況下、OECD加盟国と非加盟国との関係は、主として経済開発援助を供与する国と受け入れる国との関係として捉えられてきた。
OECD加盟国が非加盟国ないし経済(香港のような国家の体をなしていない経済主体)との間で、開発援助の供与先としてではなく、政策対話の相手として協力関係を築く必要を感じるようになったのは、1980年代後半における東アジアの新興工業国の目覚しい発展がきっかけであった。こうして、1989年には、韓国、台湾、香港、シンガポール、タイ、マレーシアと加盟国との間で、経済関係の諸問題に関する対話が始められた(対話の場には、その後南米諸国も加わるようになった)。
一方、中東欧(旧ソ連邦諸国を含む)では、ベルリンの壁の崩壊(1989年)以来、社会主義経済から市場経済への移行を目指す動きが相次ぐようになり、これら諸国の経済転換にOECDの強い関心が寄せられるようになった。こうした中で、1990年には、移行経済に対する協力センターがOECDに設立された。NAFTA参加国のメキシコが米国の強い支持の下で1994年にOECDの25番目の加盟国として受け入れられた後、移行経済支援対象であった中東欧諸国の中から、チェコ共和国(1995年)、ハンガリー(1996年)、ポーランド(1996年)が相次いでOECDに加盟した。そして、東アジアからは、1988年以来の対話相手国の中から、韓国が1996年末に29番目の加盟国となった。現在、具体的に加盟交渉が進められてきた国の中でまだ加盟が実現していない国はスロバキアを残すだけとなったが、このほかOECD加盟の希望を寄せているものの、加盟交渉にいたっていない国は少なくない。これらのうち、ロシアについては、将来いずれかの時点でOECD加盟国となることが、双方にとって有益であるという共通認識の下で、OECD協力プログラムが強化されてきた。
アジアでは、中国に対する協力プログラムが遅れて1996年に開始された。当初は、税務、統計整備等の限られた分野での協力プログラムであったが、昨年の私を団長とするミッション・チームの訪中を機に、マクロ経済面でも、徐々にOECDとの対話が進められるようになった。
更に、東欧圏では、昨年から、バルト3国を一つのグループとして捉えた地域プログラムが発足した。一方、ブルガリア、ルーマニア、スロベニアに対する支援プログラムについては、予算の制約を主因としてこのところ削減の方向にあった。しかしながらコソボ紛争終了後の経済復興などのため、対象をこれら諸国は勿論、更に幅広い南東欧圏として、ECや世銀等と連携をとりながらOECDの特色が生かされる分野で具体的な協力プログラムが策定されつつある。
このように対象となる国ないし地域を特定化して、それぞれに適した協力プログラムを実施するほかにも、OECDはより多くの非加盟国・経済を対象として、財政、金融、貿易、投資、農業、工業、科学技術、環境など広範囲に亘るテーマ別の協力プログラムを強化してきた。また、OECDの各種専門委員会にオブザーバーの資格で参加を許される非加盟国・経済も増加してきている。
更に、本年は、OECD閣僚理事会の直前に、ロシア、スロバキア、中国、インド、インドネシア、ブラジル、アルゼンチンとOECD加盟国との間で、閣僚級の特別会合が初めて開かれ、マクロ経済の情勢から貿易・資本取引の自由化問題など幅広い分野に亘って有益な意見交換が行われた。
OECDと非加盟国・経済との協力関係の今後については、建前としては、市場経済の原理、多元的民主主義、人権の尊重などの点で加盟国と共通する価値観を持つと共に、資本自由化コードや環境政策等の面でOECDの高い基準を充たす国には加盟の道が開かれているという基本スタンスを崩してはいない。もっとも、それ以上に大幅な加盟国の増大には、委員会等における議論等の効率性が害われるリスクなどの視点から、慎重であるべきだとする意見もある。こうしたなかで、加盟以外の道での協力関係を、よりメリハリのあるものとすることが益々重要となっており、この観点から各種プログラムの有効性の見直しも進められている。
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