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バイオテクノロジーと食品安全性
よく聞かれる質問(FAQ)
2000/4/7 1.一般的な質問と定義
2.安全性問題と一般の関心
3.OECDにおけるバイオテクノロジー
1.一般的な質問と定義
バイオテクノロジーとは何か?
バイオテクノロジーについては何年にもわたって様々な定義が議論されています。以下は、1980-90年代に発表された主な定義です。
- バイオテクノロジーとは、財やサービスの提供のために、生物を媒介とした物質処理に科学的・工学的原理を適用することをいう。これらの原理は幅広い分野を対象とするが、特に微生物工学、生化学工学、遺伝子工学、化学工学に大きく依存する。―OECD 1982年、「バイオテクノロジー、その国際的動向と展望」
- 新しいバイオテクノロジー研究においては、組み換えDNA技術、ハイブリドーマ(融合細胞腫)技術、その他の場所を特定した遺伝子操作技術を伴うプロセスを用いる。―OECD 1998年、「経済研究調査:第2部―1998年」
- 「バイオテクノロジー」とは、自然形または変化した形での生物、生物の一部、その生成物を直接または間接的に利用する際に、科学や工学を応用することをいう。―カナダ環境保護法、1985年
- 微生物やその活性成分の動きに基づく生産過程の科学、また、高等生物の細胞や組織を利用した生産過程の科学。―オランダの展望、1981年
- 生物学的システムの利用を伴う産業プロセスの集合。生物またはその成分の産業プロセスでの利用。―OTA報告 1981年
幾つかの国や国際機関は、異なる(おおむね一般的な)定義に基づいて、規則を策定しています。これらの規則は、その科学的根拠とはかかわりなく設けられています。
遺伝子工学とは何か?
遺伝子工学とは、新しい有機体を作るために、機能性遺伝子を種の境界を越えて人為的に移動させる一連の技術のことです。この技術は、遺伝物質やその他の生物学的に重要な科学物質の操作を伴います。遺伝子は、有機体の特質を決定する一連の青写真として機能する特別の化学物質です。遺伝子を1つの有機体から別の有機体に移動させると、これらの特質も移動します。遺伝子工学により、遺伝子を自然界の境界を越えて移動させることが可能です。その結果できた有機体は新しい遺伝子の組み合わせ、即ち、自然界には見られず、自然界のメカニズムによっては作り出せない特質の組み合わせを持つことができます。このような技術は、従来の植物・動物品種改良技術とはまったく異なるものです。
バイオテクノロジーと従来の品種改良技術とはどう異なるのか?
遺伝子標識を利用した品種改良(どの種がどの遺伝子を持っているかについての情報を品種改良者が利用するもの)など一部のバイオテクノロジーは、伝統的な品種改良技術の延長と考えることもできるでしょう。しかし、遺伝子工学などの他のバイオテクノロジーは、これとは異なります。遺伝子工学は、細胞外で操作した遺伝物質を加えることで生物の特質を変化させる全く新しい技術です。従来のいかなる植物品種改良技術でも、樫の木の遺伝子を小麦に加えることはできません。遺伝子工学のみが、自然界の境界を無視した人為的手段により、そのような遺伝子の移動を行えるのです。
なぜ或る生物の遺伝子を無関係な遺伝子と組み合わせることができるのか?
全てのDNAは同じ基本成分からできているので、例えばウイルスのような単純な有機体から転写した遺伝子は、原則として、植物のようなより複雑な有機体の中でも同じように機能することが可能です。大規模なゲノム・プロジェクトで得られた膨大な配列データが入っている最新コンピューター・データベースによって、特定の特性を持つ遺伝子(例えば、柑橘類におけるビタミンC生成を指定する遺伝子)の識別作業が以前よりもはるかに容易になってきています。一旦識別、分離すれば、遺伝子配列を切り取ってバクテリアに貼り付けることができます。するとそのバクテリアはその遺伝子を多数複製するので、これによってり、例えばインシュリンのような重要な薬品を、動物でなく遺伝子組み換えバクテリアから生産することが可能になります。このようなインシュリンは、以前よりも清潔で制御可能な環境で生産されています。また、直接的に遺伝子を細胞に組み入れる方法もあります。それは、リン酸カルシウムを使用する生化学的方法や極細の注射針で遺伝子を注入する方法です。
ゲノムとは何か?
遺伝子は、有機体に特性を与える指示です。この指示は、全生物の各細胞の中のDNAと呼ばれる長い紐状の分子の中で記憶されます。この一連の指示全体をゲノムといいます。全ての有機体は、様々な大きさのゲノムを持っています。例えば、ヒトゲノムは、10万個の遺伝子を持つものと推定され、線虫(微少な生物)の遺伝子は約19,000個と考えられています。また、アラビドプシスは1億5,000万個の塩基対を持つが、単細胞の大腸菌は4,000個強に過ぎません。遺伝学の知識のお陰で、我々は個々の遺伝子を識別でき、また、しばしばその具体的特性を知ることができます。遺伝子組み換えの技術(遺伝子工学、遺伝子操作とも呼ばれる)のお陰で、1つの有機体のゲノムから個々の遺伝子を切り取って他の有機体のゲノムに転写することが可能なのです。
実質的同等性とは何か?
実質的同等性の概念は、新しい遺伝子組み換え食品が市場に出る前に形作られました。この概念は、1993年のOECDの刊行物「最新バイオテクノロジーにより作られた食品の安全性評価:概念と原理1、2」で初めて説明されました。同刊行物は、OECD加盟19カ国のおよそ60人の専門家が遺伝子組み換え食品の安全性評価方法を二年以上討議した上で発表されまました。
この専門家の多くは政府に任命された、消費者の安全に関する監督官庁の科学者でした。
1996年のWHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)の専門家協議で、出席者は「遺伝子組み換え作物により作られた食品および食品成分の安全性確立に実質的同等性の概念に基く安全性評価を適用する」ことを推奨しました。
実質的同等性は安全性評価の代わりとなるものではなく、評価過程の一部であり、規制に関わる科学者にとっては有効な枠組となるものです。本概念の根底には、どのような安全性評価も、意図した影響と意図せず生じた影響の双方を考察した上で、遺伝子組み換え品種が伝統的品種と同じ位安全であるということを示さなくてはならないという必要性があります。その為には、主要栄養素や毒物の農学的特性、遺伝表現型の変化、成分データなどの広範な情報を考慮する必要があります。
実質的同等性の適用に際しては、伝統的成分が安全に使用されて来た長い歴史に基いて、それと同等の成分の検証が行われます。双方の相違点が判明すると、相違点の安全性評価が行われます。安全性評価には、必要に応じ栄養学的、毒物学的および免疫学的試験が含まれます。この過程が適用された一例に、ブラジルナッツの遺伝子を含むよう組み換えられた大豆のケースがあります。この大豆には、相違点、すなわちブラジルナッツの遺伝子が作り出す蛋白質が確認され、この蛋白質に対して特別の安全性評価が行われました。その結果、この蛋白質はブラジルナッツに過敏な人にアレルギーを起こすことが実証されました。大豆にそのような蛋白質が存在することは、受け入れることの出来ないリスクであり、この製品の開発は中止されました。この例は、実質的同等性が効果的な手法であることを示しています。この手法を用いた科学者は、比較することで新品種の相違点、さらには、安全性という重要問題に焦点を合わせることが可能です。
実質的同等性の概念が最初に説明されてから、数多くの食品に対する評価が行われ、この概念の使用法に関する知識が蓄積されました。同時に、OECDや加盟国政府などは食品安全性評価におけるこの概念の妥当性を検証し、この概念を支える手法の開発を続けました。特にOECD新種食品・飼料特別作業部会は、この概念の適用に引き続き取り組んでいます。この作業部会は、相違点が確認された場合もしくは比較物が存在しない時(例えば、食品がまさしく新食品である場合)の、実質的同等性を適用出来ない場合の評価方法論、また、実質的同等性の実証に関係した決定的栄養素や毒物の確認に関する研究・活動を行っています。
決定的栄養素や毒物は、非組み換え作物などに関する知識から人の健康に関係があることが知られている特定の作物の成分です。これらの成分とそれが遺伝子組み換えの結果変化する可能性とを比較評価し、さらに農学的特性、遺伝表現型等の幅広い情報を考慮すると、組み換え作物に意図しない影響が生じる可能性を見積もることができます。例えば、特定の遺伝子の形質表現のレベルが変えられると、それは作物の成分や外観の変化として表れます。
G8首脳らはケルン・サミットで、OECDと加盟国政府の十年以上にわたる業績を評価し、OECD特別作業部会にバイオテクノロジーの影響や食品安全性の研究に取り掛かるよう要請しました。この新たな取り組みにより、実質的同等性の概念は更に精緻なものになるでしょう。
バイオテクノロジーは世界の食糧確保に必要か?
必要ではないが、役に立つかもしれません。
現在、食糧は十分に有るものの、世界人口の八分の一は慢性的栄養失調に陥っています。
今後20年間に世界人口は倍増すると見られており、食糧供給も2倍必要になります。
しかも、各人に適切な量の食糧を確保するとなると、3倍近くが必要になるが、それは容易なことではありません。耕作可能な土地は殆ど耕作され尽くしており、土地の生産性は限界に達しようとしています。また、現代の農業手法は土壌の生産力を損ないつつあります。バイオテクノロジーは、新しい農作物の開発に一役を担うことが出来ます。しかし、従来の品種改良技術やインフラ改良等の他の要素も同様に大切でしょう。
2.安全性問題と一般の関心
遺伝子組み換え食品は食べても安全か?
適量を摂取する限り、遺伝子組み換え食品が一般的食料品よりリスクが高いという科学的根拠はありません。遺伝子組み換え食品に関する議論は、何年も後に初めて表面化するかもしれない健康上のリスク、もしくは元に戻すことの出来ない健康上のリスクに集中しています。その様な疑問には当然、ケースバイケースで答えを出すしかありません。OECD加盟国の多くでは、国内規制の必要条件を満たす遺伝子組み換え食品だけが市場に出されています。しかし、多くの国の消費者は、消費者自身が識別、選択出来るように、遺伝子組み換え食品であることを表示してほしいと要求しています。
遺伝子組み換え作物は環境にどのような影響を及ぼすか?
第一世代遺伝子組み換え作物が環境にどのような影響を及ぼすかは、科学的にははっきりしていません。野外実験により何らかの答えが得られる見込みです。遺伝子組み換え作物に伴う主な問題として、除草剤耐性のある雑草や殺虫剤耐性のある昆虫が増えることが挙げられます。この問題と、除草剤や農薬の使用を少量に抑えることにより環境にもたらされるメリットとを比較検討しなければなりません。遺伝子組み換えにより昆虫や損傷に耐性がある植物を産出できれば、遺伝子組み換え作物は、灌漑用水、土壌、化石燃料など食品生産における再生不能資源の保存に貢献できます。しかし、リスクをもたらすかメリットをもたらすかは、気象条件や作物の地理的位置によるので、ケースバイケースで評価する必要があります。また、遺伝子組み換え作物を使用することで生物多様性が損なわれるリスクについても懸念されていますが、科学的根拠は依然曖昧なままです。
人々はなぜ遺伝子組み換え食品に懸念を抱くのか?
遺伝子を組み換えた食品や飼料(選択した遺伝子や指定した特質の組み込み)は次の三大分野で激しい論争を巻き起こしました。
- 人類の健康:様々なところから得た遺伝要素を食料品に導入することは、短期的にも長期的にも人の健康に悪影響を与えるのではないかと心配されています(例えば、アレルギー反応や抗生物質への耐性)。
- 環境面のリスク:遺伝子組み換え植物は、直接的に、もしくは既存遺伝子と新遺伝子間の相互作用を通して、環境に悪影響を与えるのではないかという懸念があります。(新種植物の登場、最強雑草の発生、生物多様性の損失)。
- 倫理的問題:遺伝物質を使用したり、それに対して特許を認めることについては、知的所有権、開発途上国への影響、食品としての摂取、宗教的信念の問題との関係で、懸念があります(例えば、異種交配、終了暗号種子、過剰な産業集中)。様々な種類のリスクを各々どの程度なら受け入れることが出来るかということも、遺伝子組み換え食品の受け入れ決定にかかる倫理的問題の一つです。
なぜ直ちに遺伝子組み換え食品を禁止しないのか? 後悔するより安全策をとったほうがよいのではないか?
遺伝子組み換え食品の実際的、潜在的メリットを無視すべきではない。新世代作物は病気、干ばつ、過剰湿度、極度の気温、ミネラル塩に対する耐性が高いと期待されており、これにより、増加し続ける人口のために食料生産を増大することが出来ます。現存の生産物もコスト削減、産出高増大、化学物質使用削減に役立っています。消費者へのより直接的なメリットとなる鮮度、日持ち、栄養価の向上については開発中です。
食品の品質改善について政府は十分な措置をとっているか?
食品の安全性は、人の命がかかっていることもあり、常に政府の主要関心事でした。しかし、最近、食物によって引き起こされる病気が確認され、人々の警戒心や消費者の圧力が強まりました。各国政府は問題があることを認め、対応にあたっています。多くの政府が新たに独立した食品安全機関を設立し、規制の強化と執行、表示計画の導入等を行いました。
政府は消費者あるいは食品・バイオテクノロジー産業の利益に対応しているのか?
政府、産業界、消費者が皆、食品の品質確保に関心を持っています。食品安全性は、容易に確認出来る性質のものではないので、消費者は政府の品質保証に頼らざるを得ません。責任を定める効果的な法制度と明確な規制メカニズムが競争市場で機能すれば、消費者が知りたがっている食品の特質、特に安全性の確認が可能になります。消費者が食品の安全性と品質に大きな信頼を置くようになることで最も利益を得るのは、実際のところ、産業界なのです。しかし、法順守のための管理業務が企業に過大な負担となると、生産コストが引き上げられます。その結果、消費者が医薬品や食品に支払う価格が上がるだけで、その安全性については何も得ることが出来ません。各国政府がOECD推奨の規制に関する勧告と指針(「最適な慣習」)に従えば、この様な事態を避けることが出来ます。
安全性評価について何が明らかになっているか?
従来、食品分野の法規制は、食品自体の主要要素以外の総て、すなわち、残留物、含有物、加工補助剤、包装材料、表示等に集中していました。我々の祖先や我々が、炭水化物、脂肪、蛋白質やビタミンを摂取するために食べてきた様々な植物、動物、その他の製品は概して規制の対象になっていませんでした。食品保存のためのガンマ線照射や明示された酵素添加物の使用等、現代の新技術が導入されるようになって初めて、食品の主要要素そのものや食品に施された技術的処理に人々の関心と規制当局の注目が集まり始めたのです。
バイオテクノロジー、その他の食品安全性や品質の問題は、貿易にどのような影響を与えているか?
遺伝子組み換え食品の急増により、遺伝子組み換え食品の生産、輸入、販売を管理する国内法規も同様に増加しました。全世界でおよそ4,000万ヘクタールが遺伝子組み換え作物の栽培に充てられ、現在農産物食料品の貿易が伸びていることから、バイオテクノロジーに関する貿易紛争も増大すると見られています。主要課題として以下の三点が挙げられます。
- リスクの評価: 遺伝子組み換え食品や飼料に関し、どんなリスクが正当化または容認されるのかという点、リスクの定義、適切なリスク評価法についての見解には相違が見られます。
- リスク管理: 今までに発表された科学的証拠の妥当性、予防原則の定義と適用、表示への取り組み(許容レベル、追跡可能性)等については合意に至っていません。
- 知的所有権: 生物に対する特許に関しては、国によって知的所有権保護への取り組みが異なっています。WTO(世界貿易機関)の貿易関連知的所有権(TRIPs)協定がこうした相違を容認し続けて良いのかという点でも合意されないままです。
食品の安全性問題に対応する新しい規制を設ければ、多数の新たな貿易障壁や貿易紛争が生じる危険があります。しかし、消費者の道理にかなった懸念を無視すれば、貿易自由化全般が支持されなくなるでしょう。各国政府は国内のこの様な懸念に対処する一方、貿易のひずみを最小限に押さえなければなりません。
現在浮上しているバイオテクノロジーと食品安全の問題とWTO次期交渉との間にどのような関係があるか?
1994年のウルグアイ・ラウンド合意、特に衛生・植物衛生(SPS)と貿易の技術障壁(TBT)合意は、各国が食品の安全性と品質に関する国際基準の採用や農業貿易の自由化拡大に関心を抱いていることを明確に示唆しています。しかし、バイオテクノロジーを使った農業製品の商品化が進んだことに加え、そうした製品の規制への取り組み(研究、承認、表示)が国により異なることから、WTO加盟国が対処しなければならない多くの貿易問題が生じています。
バイオテクノロジーの採用が本格化すると、少数の多国籍企業が農家や食品生産に対して独占的な支配を及ぼすようになるか?
企業による農業バイオテクノロジーを阻止し、またそれが世界の食糧システムを支配するのを防止するには二つの方法があります。第一の方法は、競争市場を確保するために、反競争行為を禁止し合併や買収を制限する競争政策を各国内で厳格に実施することです。第二の方法はバイオテクノロジーに更に直接的に関連した方法で、各企業が生物の特許を取る力を制限することです。しかし知的財産権を厳しく制限すると、バイオテクノロジーが世界の食料システムに積極的に貢献することを妨げることになります。一方、各国政府が農業バイオテクノロジー研究を国家の課題として取り組めば、多国籍企業が農業バイオテクノロジーを支配するのを効果的に防止することができます。
バイオテクノロジー産業の規模はどの位か?
国際的な会計会社、アーンスト・アンド・ヤングによると、欧州では1997年に所謂「生命科学分野」において、1036の企業が、39,000人以上を直接雇用し、31億ドル以上の収入を得、22億ドルの研究開発投資を行いました。さらに同社によると、1998年に米国企業は99億ドルの研究開発投資を行い、15万3千人を雇用し、186億ドルの収入を得ました。最近の産業予測によると、米国ではバイオテクノロジーを利用した医薬品で市場に出回っているもの、または出る予定のものが80種以上あります。米国穀物生産協会(The
National Corn Growers Association)の推計では、1999年には米国穀物生産の35%を遺伝子組み換え穀物が占めると見られています。また、遺伝子組み換え大豆の作付け面積は1999年には1600万ヘクタールにもなり、穀物生産の55%を占めると予測されています。綿の栽培については、約半分が遺伝子組み替え綿になると見られています。1999年初めまでに、米国は35の遺伝子組み換え作物と、さらに多くの食品加工に使用される遺伝子組み換え酵素や物質を認可しました。欧州連合はこのような作物を9種認可しています。
なぜ知的所有権はそれほど重要なのか?
企業は平均で年間所得の45%を研究開発に投資しています。これは、企業の価値の半分近くが知的資本に組み込まれていることを意味します。しかし、知的資産を盗み、複製し、許可無しに販売することは極めて容易です。このようなことは医薬産業において時折見受けられ、模倣薬が安値で市場に出回っています。バイオテクノロジー企業が、知識には巨額の投資をする価値があり、研究の成果やそこから得られる利益についての権利は研究を行った企業にあると考えるのは当然のことです。知的所有権は、研究者の発案や製品を保護し、研究者が研究を続けるインセンティブになっています。また、知的所有権は研究者がその研究結果について積極的に発言するよう奨励する役目も果たしています。
バイオテクノロジーの産業への応用例としてはどのようなものがあるか?
新しい酵素や生体触媒、組み換え生物、深海にある火口や間欠泉など極度の圧力や温度の下で生息する極限環境微生物などの利用により、よりクリーンで効率的な産業を実現できる可能性があります。またバイオテクノロジーは、生物分解性プラスティック、生体高分子、生物農薬、新種の繊維から材木に至る多様な素材を作り出しました。そうした素材の中には、布地用柔軟剤、防腐剤、インク基剤、溶剤、ヘア・コンディショナー、香水等に利用されるものもあります。これらの製品から発生する廃棄物は、より自然に分解されます。バイオテクノロジーを利用した過程は、化学産業、パルプ・製紙、繊維・皮革、飼料を含む食品加工、金属・鉱物、エネルギ―など広い範囲で利用されています。先進国では、これらの部門がが製造業全体の30〜50%を占めています。農業廃棄物から製造される輸送車両機器用液体燃料のバイオエタノールは、将来、世界の需要の大部分を占めるようになるだろう。バイオエタノールは従来の燃料とは異なり、温室効果ガスを増加させません。現時点ではまだ価格競争力がありませんが、いずれ状況は変わるでしょう。
3.OECDにおけるバイオテクノロジー
バイオテクノロジーと食品安全性の議論におけるOECDの役割はどのようなものか?
バイオテクノロジーに対するOECDの関与は、基本的に、人の健康、農業および食料、微生物を用いての環境浄化を始めとする産業への応用も含めた環境への応用という、三つの主要分野にかかわるものです。OECDの様々な部署がこうした取り組みを行っています。バイオテクノロジーに具体的に関連した活動を行っている部門は2つあります。科学技術産業局は、人の健康に関連したバイオテクノロジー、社会経済問題、科学技術政策関連問題に取り組んでおり、環境局は規制の調和に関連した問題を扱っています。農業局と貿易局など、他の局もバイオテクノロジーに関連するプログラムを行っています。こうしたバイオテクノロジー関連分野にかかわる様々な部門の協力を促進するために、バイオテクノロジーに関する内部調整グループ(ICGB:Internal
Co-ordination Group for Biotechnology)が年に三〜五回の会合を開いています。科学技術政策に関するOECDの主要な目的は、特に公衆衛生や持続可能な産業開発、また培養組織の収集、データバンク、生物情報科学などを取り扱う生物
資源センターなどに関して加盟諸国の政策を支援することです。生物資源センターでは、微生物培養組織と細胞系統の物理的な収集および維持と、それと密接に関連するゲノムの連鎖に関する詳細な情報などを集録した電子的データベースの構築を行っています。どのような国際協力がこうしたセンターの発展や効果的利用の促進、資源の保全に役立つのかということは、OECDと加盟諸国にとって重要な政策課題です。
今OECDが行っている具体的な活動にはどのようなものがあるか?
1999年のOECD理事会、OECD科学技術政策委員会、G8サミットの閣僚コミュニケでは、現代のバイオテクノロジー分野におけるOECDの今日迄の貢献と将来の役割について、承認、再確認されました。現代のバイオテクノロジー、特に遺伝子組み換え食品に関連した今後数ヶ月間に予定されているOECDの主な活動には次のようなものがあります。
- 「遺伝子実験」に関するOECDワークショップ - ウィーン、2000年2月23―25日
- 遺伝子組み換え食品の安全性の科学的および健康面での評価に関する会議−2000年3月
- バイオテクノロジーとその他の食品安全性の問題についてOECDからG8への報告−2000年6月
- (食品安全性と環境に重点をおいた)農業研究、教育、拡大システムに関するOECD会議 −2000年1月
- OECD種子認可制度は、国際的に取引されている種子に遺伝子組み換え作物が入っているか否かを判定する方法を模索しています。
バイオテクノロジーやその他の食品安全性の問題について、OECDが取り組もうとしている重要な課題としてどのようなものがあるか?
OECDは、各国政府が食品安全性、遺伝子組み換え作物、貿易などの関連で、バイオテクノロジーへの取り組みを進めるのにあたり、効果的な支援を行っています。OECDや他の国際機関は、次の三要素の相互作用と取り組む必要があります。
- 科学: 科学的証拠は不完全で多義的であることが多いことを認識した上で、技術が人の健康や環境に及ぼす影響について判明したことは明確に提示し、政策の基盤とする必要があります。
- 規制: 規制は、科学的に定義された健康と環境へのリスクと矛盾するものであってはいけません。各国の規制の類似点と相違点を厳格に定義された基準に照らして分析する必要があります。
- 一般への情報開示: 政府や科学界は、リスクについて判明した点を発表する際や、リスクに対処する措置を講じる際に、透明性を確保する必要があります。
OECDはこれに関連して、研究分析、安全性基準、規制の枠組における国際協力を促進して行くと同時に、政府と産業界で重複した取り組みが行われないよう、安全性評価方法の効率向上に努めます。
G8が食品安全性の調査を、直接この問題にかかわっているFAO、WHO、コーデックス・アリメンタリウスなどの国際組織ではなくOECDに要請したのはなぜか?
OECDは、10年以上にわたってバイオテクノロジー関連の専門的知識を構築してきており、この問題の全側面に科学的および規制的手法を用いて取り組む卓越した能力を備えています。その一例として、バイオテクノロジーの安全性に関する専門家グループが開発し多くの国際協定の基礎となっている、安全性の科学的評価原則が挙げられるでしょう。また、実質的同等性の概念に関するOECDの先駆的研究は、今日では世界中の食品安全性評価の専門家に受け入れられています。
OECDは市民社会や科学界などと協議するか?
OECDは、様々な分野のNGO、環境グループ、農業組合、企業等からの専門家と協議する予定です。この協議はバイオテクノロジー問題への取り組みにおいて、透明性、包括性、分析面の健全性、客観性、信頼性を確保しようとするOECDの試みの一端です。
食品安全性に関するOECDの作業過程はどの程度透明なものになるか?例によって秘密裡に進められるのか?
OECDのウェブサイトでは、バイオテクノロジーに関するOECDの活動についてかなりの情報が公開されています。OECDのバイオテクノロジーと食品安全性に関するウェブサイトでは、質問や意見を掲載することが出来ます。このサイトは、バイオテクノロジーと食品安全性に関する活動を行っている他の国際機関のサイトともリンクしています。OECDは、予め「市民社会」との協議でOECDの活動計画を発表し、様々な利害関係者の意見を聞くことで、OECDが行うバイオテクノロジーと食品安全性に関する活動の質を高めています。協議に参加するグループは、その立場と根拠となる科学を説明するよう求めらます。彼等の意見は理事会やOECDの活動の関係者に報告され、食品安全性に関する今後の活動の方向付けに役立てられます。
遺伝子組み換え作物や食品安全性に関する立場は29加盟国の間で大きく異なっている。このことはOECDの作業にどのような影響を及ぼすか?
OECD事務総長は、食品安全性に関する今後の活動を決定する際に加盟国の指導と協力を得るため、食品安全性特別グループの設立を提案しました。この特別グループは、直ちに設置され2000年末まで最初の課題に取り組むことになる見込みで、食品安全性政策に責任ののある高官や専門家で構成される予定です。このグループが設置されると、以下の責務に取り組むことになります。
- 現行または計画中の、国際および地域食品安全性システムや活動の概要の編集にあたっての助言
- 現行または計画中の国内食品安全性システムや活動の概要の編集
- 国際および国内食品安全システムや活動の概要の編纂結果、OECDにおける活動や各国における関連活動の結果に、明白な欠陥や重複部分がないかどうかの検証。
- 上記活動に関する報告書を理事会に提出する用意。本報告書は、G8の要請で行われるOECD調査報告やOECDの今後の活動計画に反映される見込み。
どのようにして国際的対話を強化できるか?
OECDの作業とは別に、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の共同食品規準プログラムであるコーデックス・アリメンタリウス委員会や、国連工業開発機関(UNIDO)、国際家畜病委員会、アジア太平洋経済閣僚協力会議(APEC)フォーラムの農業技術協力専門家グループ、国連環境計画(UNEP)、国連バイオセイフティ議定書などにおいても、遺伝子組み換え作物に関する議論が行われています。規制改革と調和によって市場アクセスへの問題への取り組みがなされ、遺伝子組み換え作物の安全性と有効性に対する消費者の信頼が深まり、深刻な貿易紛争のリスクが軽減されることが期待されています。
1994年のウルグアイ・ラウンド合意の一環として、規制による保護主義を防ぐとともに、国際基準の使用を推奨するために衛生植物検疫措置の適用に関する協定(SPS)と貿易の技術的障壁に関する協定(TBT)が結ばれました。主要な輸出入国は義務を履行しなくてはならず、WTO加盟52か国で700以上のSPS指標の届け出がありましたが、多くの中・低所得国は1つの指標を届け出るだけでよいことになっています。WTOでは、貿易に関連した知的所有権の協定(TRIPS)が成立しました。この協定では、新しく、独創的で、産業上または他の実用面で利用法があるという3つの基本的基準を満たしていれば、その製品と製造過程の発明についての知的所有権は保護されます。
様々な見解の違いはあるものの、科学、経済学、社会学の分野間で全ての利害関係者、OECD諸国、非加盟諸国の協力と対話がますます必要になっているということでは合意が見られています。クリーンな技術のための政策の国際的側面は、国際的な合意と協定を通して強化されています。1992年にリオで開かれた環境会議とそこで決定されたアジェンダ21は、グローバル化と持続可能な発展のバランスを取る必要を政府が認めたという点で画期的でした。
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