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国境を越えた高等教育の提供に関する現状と課題
2004/10/01
質保証に関するユネスコ・OECD共同ガイドライン作成の背景
国境を越えた高等教育の提供の規模は情報通信技術や交通手段の発達等により年々拡大しており、また、その形態も多様化している。また、高等教育が世界貿易機関(WTO)でのサービス貿易一般協定(GATS)交渉の対象となっていることとも関連し、国境を越えた高等教育の現状把握及び質の保証を含む関連課題の分析の必要性から以下のOECDレポートの作成に至った。これらのレポートは、現在ユネスコとOECDが合同で進めている質保証に関するガイドラインの作成の背景にもなっている。
- OECD (2004), Internationalisation and Trade in Higher Education-Opportunities
and Challenges(高等教育の国際化及び高等教育サービスにおける貿易:可能性とチャレンジ)
- OECD (2004), Quality and Recognition in Higher Education-The
Cross-border Challenge(高等教育における質の保証と学位の認証:国境を越えたチャレンジ)
1.国境を越えた高等教育の提供−現状−
1) 国境を越えた高等教育の規模
- 1998年の国際的な高等教育マーケットの規模は約300億ドル、サービス貿易の合計の約3%に相当(OECD推定)。
- 2001年には150万人の留学生がOECD加盟国に留学。(世界の留学生の85%相当。)この人数は過去20年に倍増。
- 全留学生中、43%はアジアからの留学。日本は中国、韓国、インドにつぐ第4位で全留学生の4%を占める。アジアからの留学生の70%は米、英、豪の英語圏に集中。
- 日本は同時に米、英、独、仏、豪に次ぐ世界第6位の留学生受入国(全留学生の4%)でもあり、日本からの留学生と日本への留学生の数はほぼ均等である。
2) 国境を越えた高等教育の多様化
留学は伝統的な高等教育の提供の形態であり、現在も主要な形態であるが、近年は、学生が母国を離れることなく外国の大学が提供する授業を受けることを可能とするような新たな形態も出現し、増加している。
- 留学についで多いのが、契約に基づき現地の大学で外国の大学のプログラムを提供する「フランチャイズ型」やEラーニングのようにプログラムのみが国境を越える形態。
- " 外国に大学の分校(ブランチキャンバス)設立によりプログラムを提供する形態。
- これらの新たな形態は特に東南アジア諸国で活発。2001年、香港ではこれらの新たな形態により約600種類の外国の学位が提供され、うち半分はイギリス、3分の1はオーストラリア、残りはアメリカ等の学位。
3) 多様な政策的アプローチ
各国政府は多様な目的に応じ、国境を越えた高等教育への様々な支援を行っている。各国の目的には主に4つのものがある。(カッコ内は政府制度及び支援方策の例)
- 相互理解促進(外国人留学生への奨学金の支給)…日本、韓国、アメリカ等
- 熟練した労働力(skilled labor)の誘引(学生ビザ等)…カナダ、ドイツ、アメリカ等
- 授業料収入の増加(自国学生と留学生間の授業料の差別化)…オーストラリア、ニュージーランド、イギリス等
- 自国の人的資本の強化(自国留学生への奨学金、外国大学の積極的誘致等)…中国、マレーシア、シンガポール等
4) WTOでの議論
- GATSの果たす役割は現在のところ極めて限られている。GATSは透明性の確保には貢献するが、高等教育の質の基準等、高等教育の実質的な内容に関する議論をする場ではない。
- 国境を越えた高等教育の規模の拡大はこれまでのところGATS交渉とは無関係に生じてきた。今後GATSが国境を越えた高等教育に与える影響の程度は、各国がどこまでGATSの枠組みの中で高等教育市場の開放をするかによることとなるため、高等教育関係者がGATS交渉の動向を理解することは重要。
2.質保証に関するユネスコ・OECD共同ガイドライン(UNESCO/OECD Guidelines on quality
provision in cross-border higher education)の作成について
国境を越えた高等教育の提供は、多様な機会の提供や、競争を通じた質の向上につながるというメリットがある反面、適切に管理されなければ高等教育の質の低下を始め、様々な弊害を引き起こす可能性もある。政策的アプローチの違いに関わらず、各国が国境を越えた高等教育の提供に関する質保証及び学位の認証の問題に早急に取り組む必要があると合意
したことから、教育に関する国際機関としてユネスコ及びOECDにおいてこれらの問題に関する国際的なガイドラインの作成を検討することとなった。
1) ユネスコ・OECDガイドラインの目的
現在60カ国以上が何らかの質保証制度を有しているが、これらは必ずしも外国のブランチキャンパスやEラーニングといった新たな形態での高等教育の提供を念頭においておらず、結果として質保証に関する隙間が生じ、ディグリーミルのような偽の学位の提供等を引き起こしやすい状況となっている。ユネスコ・OECDガイドラインは質保証に関する国際的な協力を促進することによってこの隙間を埋めることにより、以下の4点を目指している。
- ディグリーミル等質の低い高等教育の提供から学生を守ること
- 学位の国際的な通用性共通性の確保
- 学位の認証手続きの透明化
- 質の保証に関する国際的な連携の促進
2)質保証に関する情報ツールの作成
ガイドラインの作成と並行して、学生がプログラムを選択する際の参考となる、各国において質を保証された高等教育機関に関する情報ツール(データベースまたはポータル)の作成について現在検討中。
- 3)今後の予定
第1回ドラフト会合を2004年4月にパリのユネスコ本部にて開催。
- 第2回ドラフト会合は2004年10月14−15日に東京で開催予定(文部科学省共催)。関連資料は近日中にウェブサイト掲載予定。(第1回会合の資料は掲載済み。)www.oecd.org/edu/internationalisation/guidelines
- 第3回ドラフト会合を2005年1月17−18日にパリで開催し、2005年後半を目途にユネスコ及びOECDでそれぞれ採択予定。
[連絡先]
OECD教育局教育研究革新センター(Centre for Educational Research and Innovation)
籾井 (もみい)圭子(keiko.momii@oecd.org;TEL: +33-1-4524-9185)
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