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2003/11/18
IEAはエネルギーセキュリティ、環境目的に向けた日本のコミットメントを賞賛する一方、経済効率により焦点を当てるよう助言
「エネルギー市場改革、京都議定書の批准、京都目標達成のためのより強化された政策パッケージの実施等、近年、日本のエネルギー政策に大きな進展が見られる」。東京における「IEA加盟国のエネルギー政策−日本審査(2003年)−」の発表に当たって、国際エネルギー機関(IEA)クロード・マンディル事務局長はこのように語ると共に、「日本ではエネルギーセキュリティ、環境問題に向けて強力な取り組みがなされているが、経済効率の改善、特にエネルギー市場及び政策の費用対効果の効率向上において一層の取り組みが必要である」と付言した。
エネルギーセキュリティ
日本は、その地理的位置、乏しい国内資源により、他の多くのIEA加盟国に比して、エネルギーセキュリティの課題がより重要である。この結果、日本は供給セキュリティを確保するため、多大な努力を払っている。石油備蓄は90日備蓄義務を大きく上回っており、天然ガスにおいては供給先の多角化、燃料転換の可能性等、柔軟性を確保するための手法がとられている。原子力発電及び再生可能エネルギーを推進する政策は、供給先の多角化に更に貢献するものである。しかしながら、こうした努力にもかかわらず、中東地域からの石油輸入への依存度が増大しつつあることは依然、懸念材料である。エネルギーセキュリティに関しては、それ以外の課題も存在する。インドネシアのアルンからのガス供給途絶は、燃料構成に占めるガスのシェアが増大している中で、潜在的なセキュリティ上の脅威を示すものである。2002年9月に始まった東京電力の原子力発電所の停止もエネルギーセキュリティ上の課題の事例である。更に、夏の電力需要ピークが上昇しており、通常、暑い夏季の需給のバランスが困難になってきている。
原子力発電
原子力エネルギーは、日本におけるエネルギーセキュリティ、温暖化防止達成の上で、極めて重要な役割を果たすことが期待されている。政府の現行の長期エネルギー需給見通しにおいては、2010年までに原子力発電の30%増を見込んでいる。しかし、近年の安全性にかかわる事故や大規模な運転停止により、目標達成は、より困難になってきている。第1の課題は、国民の信頼を回復することである。第2に、日本の原子力発電所の設備利用率は、平均して他のIEA加盟国よりも低いことから、安全性のレベルを損なうことなく、法令その他に基づく運転停止期間及び頻度を短縮すべきである。第3の課題は、自由化された電力市場における原子力の役割を確保することである。これは電力部門における更なる市場改革に向けた直近の議論において、対処されなかった点である。
気候変動緩和
2002年6月、日本は第一約束期間に温室効果ガス(GHG)の6%削減を達成することを約した京都議定書を批准した。しかし日本のエネルギー起源の二酸化炭素排出量は1990年から2000年にかけて11.2%増と大きく上昇した。日本の一人当たり及びGDP単位当たりの二酸化炭素排出量は、IEA平均を下回っているが、増大する温室効果ガス排出量は、日本のエネルギー政策において最重要課題の一つである。目標達成に向けた道程は、2002年3月に発表された政府の地球温暖化対策推進大綱に示されている。
日本は、エネルギー起源の二酸化炭素排出量の増大に対応するため、多くの機器を対象としたエネルギー効率基準、自主的建築基準、ラベリング、再生可能エネルギー、省エネルギー政策への支援、燃料転換への補助金等、広範囲の政策を講じてきている。しかし、家庭部門、旅客輸送部門におけるエネルギー需要の急増に鑑みれば、いくつかの政策を強化することができる。例えばエネルギー効率ラベリングは、より広範な機器に拡大できる。ビルのエネルギー基準を新たな建築物については強制力のあるものとし、既存建築物の改修にも拡大することができる。産業部門の生産高が現在の不況から回復した場合、2010年までに産業部門の排出量を安定化するという経団連自主行動計画の目標が達成できるか否かは不確実である。国内の排出量削減の限界コストが上昇していることから、産業界が京都柔軟性メカニズムに参加することは、気候変動緩和のコストを引き下げる観点から歓迎されるべきである。
経済効率
政策目的を費用対効果の高い形で達成することは、政策担当者にとっての課題である。日本のエネルギー政策においては、ある種のエネルギー供給や省エネ技術を促進するための金融、財政面のインセンティブが複雑に絡み合っている。しかしながら、これらのメカニズムが個々に、あるいは集合的にどの程度有効に機能しているかが明らかではない。日本は、金融、税、規制、研究開発等、種々のインセンティブ、ディスインセンティブを総覧し、これらの費用対効果を見極め、最大の効果を得るべく、その合理化を図るべきである。
最近、いくらか下落しているとはいえ、日本のエネルギー価格は、依然としてIEA加盟国中、最も高い部類に入る。これを是正すべく、政府は市場改革に着手した。このうち、最も進んでいるのは全面自由化された石油部門である。しかし、石油産業は依然、構造改革の途上にあり、精油設備の設備利用率は非常に低く、ガソリンスタンドの数は多い。
天然ガス市場の自由化は1995年に始まり、現在、市場の40%が開放されている。しかし新規参入者の市場シェアで見ると、競争はほとんど生じていない。政府は、市場改革の便益を全面的に確保するためには、更なる措置が必要であると認識しており、パイプラインに対する規制型の第三者アクセス(TPA)の導入、LNGターミナルに対する交渉型の第三者アクセスの推進等、新たな施策を発表した。これらの施策は有益であるが、その効果を綿密にモニターし、競争が生じない場合、迅速に是正策を導入すべきである。天然ガスのより広範な利用を確保するためには国内ガスネットワークを拡大することが重要である。これは供給セキュリティ及び競争をも強化する。
2000年3月、政府は電力市場の30%を競争に開放し、ネットワークに対する規制型の第三者アクセスを確立した。価格はいくらか低下したが、これは主に資本支出の利子率低下に起因するコスト節減が需要家に還元されたことによるものと考えられる。市場自由化による競争的な価格設定もある程度の効果があったようである。新規参入者が市場参入に困難を感じていること、既存の電力会社間でほとんど競争が生じていないように見えることから、政府は第三者アクセス料金の見直し等の施策を発表した。これは賞賛すべき動きであるが、既存の電力会社が巨大かつ強力であり、新規参入者に比して著しい市場支配力を有することについてはほとんど手がつけられていない。新たなプレーヤーの参入が遅々としていることから、既存の電力会社間の競争が重要である。計画中の分離措置、新たな「中立機関」、規制機関の有効性が確保されるべきである。もし競争が生じない場合、独立した全国ベースの送電系統運用者の設立等、より強力な措置の導入も除外すべきではない。ほとんどの供給区域間の接続は弱く、競争促進、エネルギーセキュリティ確保の観点から、接続の強化が必要である。
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