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IEA諸国におけるエネルギー利用の30年
2003/03/02
「エネルギー・CO2排出量と経済成長のデカップリング(切り離し)加速策について緊急に検討する必要がある」。本日ブリュッセルで刊行された報告書『Oil
Crises & Climate Challenges − 30 Years of Energy Use in IEA Countries』の冒頭で、クロード・マンディルIEA事務局長はこのように述べています。
この新刊は、エネルギー効率や経済構造、所得、ライフスタイル、気候、価格、燃料ミックスなどの要素が、IEA設立以来30年間、IEA諸国のエネルギー利用とCO2排出量の動向にどのような影響を及ぼしてきたかを調査したものです。具体的には、動向をセクターごとに精査し、エネルギー効率と低炭素燃料の利用によって更に持続可能な未来を実現するための方策を模索する際に役立つデータと知見を、エネルギー分野の政策当局に提供しています。
本書の主な結論の一つは、IEA諸国は経済成長を達成するのに必要なエネルギー量を大幅に削減してきたというものです。IEA諸国では現在、GDP1単位の生産に必要なエネルギー量は1973年当時に比べ3分の1減少しています。これは主に製造業の各分野や家庭や商業ビルにおける様々な最終利用、各種の旅客・貨物輸送分野で省エネが大きく進展しているためです。IEAの分析によれば、1973年以降実現されてきた省エネがなければ、1990年代末のIEA諸国におけるエネルギー使用量は実際より50%増えていた計算になります。
IEA諸国の燃料ミックスで主流を占めているのは依然として石油です。しかし、1973年以降、石油消費量は輸送以外の全セクターで減少しています。石油消費量が特に大幅に減少しているのは製造業で、これは他の燃料への代替が進んでいるためや生産1単位当たりの石油消費量が大幅に減少しているためです。製造業の石油消費量減少は、エネルギー効率の改善とエネルギー集約度の低い構造へのシフト(「半導体の増加、鉄鋼の減少」)によるものです。
石油需要の減少は輸送向け石油需要の増加によって相殺されているため、IEA諸国の2001年の石油需要は1973年とほぼ同じ水準となりました。輸送向けの需要が伸びている最大の理由は、個人の乗用車利用が増えていることです。多くの国では乗用車所有率が1973年から100%以上上昇している上、乗用車用エンジンの効率化の一方で乗用車の大型化、重量化、高馬力化も進んでいます。燃料効率の改善が平均するとあまり進んでいないのはこのためです。結果として、乗用車の石油使用量は1973年から1998年に約50%増えています。さらに、貨物輸送向けの石油使用量も同じ期間に80%増えています。これは貨物輸送量が大幅に増えているためと、鉄道や船よりもエネルギー集約度の高いトラック輸送のシェアが一貫して上昇しているためです。
マンディル事務局長は次のように述べています。「本書には驚くべきメッセージが含まれている。CO2排出量のGDP比が低下しているのと同様に、全セクター及びほぼすべての国で1980年代末以降、省エネ率の伸びが鈍化しているということである。これは、1970年代の石油危機とその結果採用されたエネルギー政策が、エネルギー需要とCO2排出量を抑制する上で、1990年代に実施されたエネルギー効率と気候変動関連の政策よりもはるかに大きな役割を果たしたということを示している」。
エネルギー価格の動向を見ることで、これらの長期的な傾向をある程度説明することができます。1973年までエネルギー価格は総じて低廉でした。従って、1973年以降に価格が急騰すると、その対策としてエネルギー効率を高める必要が出てきました。しかし、1980年代半ば以降に価格が総じて下落すると、省エネ率を維持するインセンティブが薄れることになりました。価格の下落に加えて、エネルギー集約度がすでに大幅に低下していたということもあり、1980年代半ば以降、産業界及び個人のエネルギー支出は大幅に減少しました。一部の国では生産コスト全体に占めるエネルギーコストのシェアは1980年代初頭から1990年末までに50%も低下しています。同様に、IEA諸国の家計に占める乗用車用のエネルギーコストのシェアも同じ期間に20〜50%低下し、個人用乗用車の1キロ当たり燃料コストも20〜60%減少しています。
大半のIEA諸国はGDP1単位当たりのCO2排出量を1973〜1990年に大幅に削減しましたが、1990年以降も強力なデカップリングを維持しているのは数カ国のみです。IEA諸国の1990年の総排出量は1973年に比べわずかに増えているだけですが、1990〜2001年には13%増えており、京都議定書に盛り込まれた目標からは程遠いのが現状です。
CO2排出量とGDP成長のデカップリングが1990年以降弱まっているのは、主に省エネ率の伸びが鈍化しているためです。また、発電における低炭素燃料への燃料代替も1990年以降は以前ほどCO2排出量全体の削減に寄与しなくなっています。
近年の省エネ率の低さは、環境面からもエネルギー安全保障の面からも懸念材料となっています。石油と電力に対する需要は急増しています。石油消費量は運輸部門の急増に牽引され、電力需要は家庭や商業ビルにおける様々な家電製品や機器の利用によって押し上げられています。
IEA諸国では電力需要の増加によってCO2排出量を抑制するための負担が大幅に上昇するでしょう。原子力は依然としてエネルギー供給量全体の11%を占めるにとどまっており、再生可能エネルギーも発電に浸透し始めたばかりなので、多くのIEA加盟国では向こう何年かの新規発電能力は化石燃料ベースの発電所の新設によって賄われることになります。
マンディル事務局長は次のように述べています。「IEA設立30周年は1973年以降のエネルギー利用の歩みを振り返る絶好の機会である。我々は、エネルギー効率が大幅に改善しているにもかかわらず、石油依存度が高まるのを回避するとともに、エネルギー需要の増加による環境面への影響を低下させる取り組みを強化する必要があることを示している最近の傾向を憂慮している。IEA諸国のエネルギー効率を低コストで劇的に向上させることは今でも可能である」。
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