|

再生可能エネルギー
IEA諸国における市場と政策動向
2004/06/01
「再生可能エネルギーは今日のエネルギー・セキュリティーと環境上の課題の解決に寄与する大きな可能性を秘めているが、コスト効果を重視しつつ、再生可能エネルギーに関する政策と市場で何が起きているかにもっと注目しなければならない。」クロード・マンディル国際エネルギー機関(IEA)事務局長は6月1日、ボンで報告書『Renewable
Energy - Market and Policy Trends in IEA Countries』を公表した席上、このように述べました。「研究開発と技術革新に更に注力すれば、再生可能エネルギーは世界のエネルギーミックスで主要な役割を果たすことができるが、IEAの調査では、その実現への道のりは依然として遠い。」
本書は、1970年代の石油危機を機に再生可能エネルギーへの研究開発投資が急増して以降のIEA諸国の経験をまとめたものです。本書は100を超える具体的な市場に関する統計データを収録している他、IEA諸国で採用されている研究開発から市場展開への支援に及ぶ約400の政策と措置について詳述しています。
IEA諸国の一次エネルギー供給量に占める再生可能エネルギーのシェアは1970年から2001年に4.6%から5.5%へと上昇しています。この上昇の大半は1970年から1990年に生じており、この間の再生可能エネルギー供給量の年間伸び率は2.8%に達しています。しかし、1990年から2001年には水力、従来のバイオエネルギー、地熱エネルギーなど一部の再生可能エネルギーについては伸び率が鈍化しています。この結果、再生可能エネルギー源が電力生産量に占めるシェアは1970年の24%から2001年には僅か15%へと低下しています。
太陽発電と風力発電は大幅に増加しています。1970年から2001年の年間伸び率は平均で約18%、しかも過去10年間の年間伸び率は20%以上と加速しています。しかし、この二つの再生可能エネルギーは非常に低いレベルからスタートしている上、ごく一部の国に限られています。従って、この二つが急速に伸びても成熟期に入っている再生可能エネルギーの伸び率鈍化が相殺されるわけではありません。2001年には、風力発電設備の86%はデンマーク、ドイツ、スペイン、米国に、太陽光発電設備の約85%はドイツ、日本、米国に置かれていました。マンディル事務局長は「再生可能エネルギーへのコミットメントをより幅広く共有すべきである」と述べています。
再生可能エネルギー技術が1987年から2002年の政府のエネルギー研究・開発及び実証(RD&D)投資に占めるシェアは全ての技術を合わせても7.7%にとどまっています。この期間の政府のエネルギーRD&D投資に占めるシェアが1%を超えていたのは太陽光エネルギー(2.7%)、風力エネルギー(1.1%)、バイオエネルギー(1.6%)の三つのみでした。再生可能エネルギーが政府のRD&D投資に占めるシェアは、1970年から1986年より1987年以降の方が低くなっています。政府のエネルギーRD&D投資に占める再生可能エネルギーのシェアが低下しているのは、一次エネルギー総供給(TPES)に占める再生可能エネルギーのシェアを高めるというIEA諸国の政治的意向と矛盾しているように思われます。
新しい再生可能エネルギーの市場参入を支援するため、IEA諸国ではその高コストを相殺し、将来のコスト低下につながるような市場の経験を促進する数多くの政策が実施されています。本書によれば、これらの新しい再生可能エネルギーは市場の経験を積んだ結果としてすでに大幅なコスト削減を達成しており、このことは政府の介入が成功していることを示しています。
本書によれば、市場の大幅な拡大は常に一つの政策ではなく複数の政策の組み合わせの結果として生じています。例えばスペインでは、風力技術は固定価格買取制度(FIT)、低利融資、資金助成、タービン製造への地域支援等によって後押しされています。日本では、太陽光技術は、技術の競争力を高めるための広範なRD&D投資、実証プロジェクト、財政的インセンティブの付与、太陽光発電システムから生じる余剰電力を小売価格で買い取るネットメータリング制度等によって支援されました。
市場シェアの拡大にはこうした政策が有効だとしても、再生可能エネルギーには従来の市場や技術インフラへの統合という課題があります。例えば、風力エネルギーと太陽エネルギーにとっては間欠性と配電網の信頼性への影響という複雑に絡み合っている問題が、水力とバイオエネルギーにとっては資源が少ない季節にも供給を維持するという問題が大きな課題となっています。
再生可能エネルギー技術は、今日及び明日のエネルギー問題の解決のために考慮すべき唯一の選択肢ではありません。最終的に、再生可能エネルギーは「外部性」を考慮して、化石燃料や原子力に対するコスト競争力を達成しなければなりません。「安全かつ持続可能なエネルギーシステムを構築する戦略技術を開発するためには、どの程度の支援をどの程度の期間にわたって実施することが適切なのかを見極める必要がある」とマンディル事務局長は述べています。
|