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企業、産業、サービス

記録的な2000年の鉄鋼市場

2000/12/5

■今後の見通しには暗雲

 OECD鉄鋼委員会第57回会合は、2000年の世界の鉄鋼需要が過去最高に達したことを明らかにしました。しかし、世界の鉄鋼消費量は大きく伸びたものの、依然として価格低迷や貿易摩擦の問題があります。

 2000年の世界の鉄鋼需要は、鉄鋼製品で7億3850万トンに達する見通しです。これは1999年に比べて8%の増加で、1997年の鉄鋼危機以前に記録された過去最高を6.5%上回る水準となっています。また、粗鋼生産も今までで最高の8億4600万トンになるとみられます。

 OECD域内については、鉄鋼需要は約7.2%増加、粗鋼生産は6.4%増の4億9100万トンになるとみられます。鉄鋼輸入は前年比12.5%増と急増し、1億トンの大台を初めて突破する見通しです。鉄鋼輸出も8.8%の伸びが予想されます。1998年に従来の鉄鋼貿易のフローが激変して以来、OECD域内の鉄鋼貿易は不規則で予測しにくい動きを続けています。

 鉄鋼の需要と生産は全体的には増加しているものの、一部地域の設備稼働率はかなり低い状況が続いており、70%を下回っています。鉄鋼需要が非常に強く、生産も過去最高水準にあるにもかかわらず、一部の鉄鋼製品は値下がりしており、貿易摩擦や輸入制限の動きが増加しています。こうした状況を考慮して、OECD鉄鋼委員会は、こうした市況の低迷の要因を分析するためにより積極的に関与していく予定です。これまでに、いかに委員会の役割を強化するかについて多くの議論が行われました。


2000年の鉄鋼市場の動向と2001年の見通し
(国別動向)

米州

 ブラジルでは、2000年上半期のGDP伸び率は、前年同期比3.8%となった。工業部門が5.0%、農業部門が6.5%、サービス部門が3.0%それぞれ伸びたのが要因だ。2000年通年のGDPは4%前後の伸びが予想される。インフレは引き続き抑制されており、輸出の増加と輸入代替が好調なことから、貿易収支も改善しつつある。2000年上半期のブラジルの粗鋼生産は前年同期比9.7%増加した。鉄鋼輸出は4.5%減の470万トン、輸入は6.0%増の34万7000トンとなった。この結果、2000年上半期の明らかになっている鉄鋼消費は12.2%増となった。大半の鉄鋼消費部門での回復を考えると、2000年通年の鉄鋼消費は12%の増加が予想される。2001年については、重大なインフラ投資の伸びと貿易収支の一層の改善を受けて、GDP伸び率は4%に達するとみられる。このため、2001年の見掛け鉄鋼消費は前年よりも6.3%高い水準になると予想される。一方、粗鋼生産は、高炉の改修で生産が一時的に止まった影響で、1.5%の減産になりそうだ。

 カナダに関しては、2000年の経済成長率は4.7%に達するとみられ、2001年も3.4%の成長が続く見込みだ。インフレは抑制されており、インフレ率は2000年が2.6%未満、2001年は1.8%未満にとどまるとみられる。失業率は2000年には6.9%まで低下を続けたが、2001年は7.1%に悪化しそうだ。金利は1999年10月以来、上昇し続けており、2000年の平均は7.3%、2001年は7.5%と予想される。鉄鋼市場は、2000年1−8月までは前年同期よりも高水準で推移した。見掛け鉄鋼消費は17.9%の増加となったが、鉄鋼業界の総出荷量は2.3%増だった一方で、国内向け出荷は1.2%減となり、輸入が67.1%増の590万トンに急増した。輸入量が現在のペースで増え続けると、2000年の鉄鋼輸入は850万トンを超え、過去最高を記録する可能性が大きい。米国、EU15カ国、中東欧、アジアからの輸入が大幅に伸びている。2000年1−9月の需要は強いものの、市場での在庫のだぶつき、輸入の急増、価格水準の下落によって、2000年末および2001年通年の見通しはこれまでよりも暗くなりそうだ。最近、カナダと米国の自動車工場が生産停止を発表したことも、こうした市況悪化の兆候である。目下の2001年見通しとしては、カナダ経済の主要部門の減速に伴い、鉄鋼需要も3.5%減少するとみられる。出荷と消費は比較的力強いものの、高水準の輸入量、価格下落、在庫増加によって、国内の製鉄業者が打撃を受ける可能性がある。

 米国については、2000年7−9月期の経済成長率は2000年前半の大幅な伸びに比べて減速した。製造業の動向を示す指数は低下し、GDPも政府支出と住宅建設の減少、設備投資の抑制でこれまでよりも穏やかな伸びにとどまった。また7−9月期の在庫は予想外に増加が続いた。半面、消費支出は実質可処分所得が伸び続けていることから再び増加した。鉄鋼消費部門に関しては、建設部門は2000年には前年比2%の伸びが予想される。オフィスビルや製造施設の需要で非住居用建設が4%伸びたのが要因だ。また、自動車生産は鈍化しており、前年比1.5%の伸びにとどまるとみられる。2001年の米国の経済成長率は3.4%と、1995年以来の低い伸びになる見通しだ。消費支出の減少が悪影響し、自動車生産は6%程度の減産になる公算が大きい。住宅部門も同様に打撃を受けるだろう。また設備投資は企業収益の伸びの鈍化が響くとみられる。

 7−9月期の米経済は比較的堅調だったが、鉄鋼市場は大幅に悪化した。安価な輸入品の大量流入と年上半期の記録的な在庫積み増しが市場の重荷になっている。過去数ヶ月で新規受注は落ち込んでおり、設備稼働率も低下、一部の製鉄所は操業の一時停止や完全閉鎖に追い込まれた。とりわけ懸念されるのが価格の大幅な下落だ。多くの総合製鉄会社は7−9月期も大幅な損失を抱えており、こうした企業は損失が10−12月期にさらに拡大する見通しを明らかにしている。見掛け消費は2000年8月までで11.3%増加したが、鉄鋼サービスセンターが在庫圧縮に動いていることや一部の市場が明らかに軟調なことから、買い控えが起きている。新規受注は落ち込み、粗鋼生産も急減した。設備稼働率も2000年上半期は90%を超えていたが、ここ数週間は平均78.6%となっている。2000年上半期は、市況が強かったことから、8月までの鉄鋼の国内出荷は10.7%増加した。製品別では、熱延鋼板と冷延鋼板の出荷はそれぞれ19.1%、14.8%の伸びを示した。また、油井管(OCTG)も石油掘削事業の回復で130%増に跳ね上がった。半面、軽量棒鋼は29%減少した。

 半製品と製品の輸入は再び急増している。9月までのこれらの製品の輸入は、前年同期比14.3%増の2760万トンとなった。日本からの輸入は減少したものの、中国や台湾、インド、ウクライナといった従来とは異なる供給国からの輸入が大幅に増えた。一方、8月までの輸出は前年同期比で約33%伸び、輸出全体の88%は北米自由貿易協定(NAFTA)加盟国向けだった。米経済は引き続き穏やかなペースで成長するとみられるが、一部の重要な鉄鋼製品市場――例えば自動車、機器、建設――での需要は軟化が予想される。余剰在庫は2001年に入っても市場の重荷になるだろう。主要な鉄鋼輸出国の通貨に対してドル高が続くため、輸入は高水準を維持する可能性が大きい。


欧州

 2000年上半期のEU経済は、純輸出の増加と好調な内需によって予想外の力強い伸びを示した。GDP伸び率は2000年が3.4%、2001年は3.1%に達すると予想される。大半の鉄鋼消費部門は景気回復の恩恵を受けており、この結果、2000年のEUの見掛け鉄鋼消費は4%程度の伸びが見込まれる。建設部門は2000年には3%程度の伸びが予想されるが、2001年は金利上昇を受けて1.5%に低下するとみられる。自動車部門については、2000年上半期はかなり力強い状態だったが、7−9月期は減速した。2000年通年の自動車市場は前年比0.5%の伸びを維持するとみられる。2001年に関しては、新車販売が一服するため、1〜2%減になりそうだ。

 2000年通年のEUの粗鋼生産は前年比4%増となり、過去最高の1億6200万トンに達すると予想される。2001年については、鉄鋼消費も生産も前年水準近くにとどまるとみられる。鉄鋼輸入は2000年上半期に前年同期比37%と急増した。これはEU域内の需要が非常に強かったのと、国内価格が魅力的な水準にあったためだ。2001年のEUの鉄鋼輸入は安定するか多少減少するとみられる。2000年上半期のEUの鉄鋼輸出は、対ドルでのユーロ安も手伝って前年同期比15%の伸びとなった。2001年もEUの鉄鋼輸出は一層の伸びが予想される。

 チェコ共和国では、1999年下半期から景気回復が始まり、2000年には一段と回復が進んだ。2000年のGDP伸び率は2.6%に達する見込みで、2001年にはさらに3.0%に加速するとみられる。鉱工業生産は2000年1−9月で5.8%上昇した。このうち最も強い部門は輸送機器・電気器具(13%増)、機械設備(10%増)だった。建設部門は下げ止まり、2000年1−9月で2.8%の伸びを示した。失業率は8.9%水準での安定が続いた。こうした景気回復を受けて、見掛け鉄鋼消費は急増した。2000年1−9月の粗鋼生産は前年同期比13.2%増となり、2000年通年では前年比11%増の約620万トンに達する見込みだ。連続鋳造鋼材のシェアは88%に達するとみられる。2000年上半期の鉄鋼輸出は5.5%増の190万トン、鉄鋼輸入は23%増の130万トンとなった。

 ノルウェーでは、2000年のGDP伸び率は2.7%が予想される。総設備投資は1999年の14%減から2000年には21.6%減と、さらに落ち込む見通しだ。一方、民間消費は2.7%増加、公的部門の消費は2%増加するとみられる。重量鋼管を除く見掛け鉄鋼消費は、2000年1−9月で9.9%増となった。これは主に、オフショア部門の投資増、造船の伸び、それに主要鉄鋼消費産業にとっての輸出環境がやや改善したことによる。しかし、住宅・建設部門での資本投資は減少している。2000年1−10月の粗鋼生産は7%の増産、鉄鋼輸入は9%増、同輸出は6%増だった。2001年については、見掛け鉄鋼消費は6%の伸びが予想される。これは住宅・建設部門の改善、造船とオフショア産業の伸びによるとみられる。

 スロバキア共和国では、2000年の経済成長率は1.6%に減速している。失業率が19%に達したことが背景にある。インフレ率は12.0%に加速した。2000年1−9月の粗鋼生産は8.0%増の260万トン、輸入は12.9%増、輸出は24.6%増だった。この結果、2000年の見掛け鉄鋼消費は減少が予想される。

 スイスでは、2000年5−9月の粗鋼生産は47万5000トンに達し、前年同期よりも9%高い水準となった。2000年5−9月の鉄鋼輸入は11.8%増、輸出は4.3%増加した。鉄鋼貿易の構造に変化はなく、貿易相手国のほぼ96%はEU諸国だった。


アジア・太平洋地域

 日本経済は、主に企業部門を中心に穏やか回復基調を続けている。これは一連の景気対策の効果が出始めたのと、アジア諸国・地域の景気回復が日本にプラスに働いたことによる。しかし、経済の回復にもかかわらず労働市場では厳しい状態が続いており、民間消費も低迷したままだ。政府は民間消費主導の自律的な景気回復を目指して、経済構造改革に乗り出している。10月19日にはこの目的で、「日本新生のための新発展政策」を発表、その実施を決定した。この「新発展政策」には日本経済の再生を実現するための諸政策が盛り込まれている。

 2000年の粗鋼生産は、前年比で約10%増の1億600万トンと予想され、1997年以来初めて1億トンの水準に達するとみられる。これは、IT関連産業を中心とした設備投資の増額に下支えされて内需が回復したこと、それにアジア地域の需要増で輸出が回復したことが要因だ。2001年については、日本経済の自律的な回復で内需が伸びるとみられる半面、輸出環境は悪化しそうだ。このため、2001年の粗鋼生産が前年水準を超える可能性は小さいだろう。2000年1−9月の全地域向けの鉄鋼輸出は前年同期比で7.8%の増加となった。ただ10月以降は、アジアでの在庫調整と、米鉄鋼業界が最近11カ国の熱延鋼板に対して反ダンピング訴訟を起こした影響で、輸出の減少が予想される。地域別では、2000年1−9月のアジア向けの輸出が12.6%増だった一方、米国向けは22.9%減少した。主な製品別では、熱延鋼板は94.2%増、亜鉛メッキ鋼板は21.3%増、冷延鋼板は16.6%増となった。半面、半製品の輸出は35.2%減少し、鋼管類は28.2%減、ブリキ鈑は8.7%減となった。一方、2000年1−9月の鉄鋼製品全体の輸入は23.5%増加した。国別では、韓国からの輸入が7.1%増えたほか、台湾からの輸入も10%増となった。日本経済の回復で、輸入の増加は今後も続くと考えられる。

 韓国では、2000年上半期のGDP伸び率は前年比11.1%となり、予想を上回る伸びを記録した。投資、民間消費、輸出入の増加が続いたのが要因だ。鉱工業生産も、造船、自動車、機械の各部門が堅調で、20.8%上昇した。2000年下半期については、景気はやや減速がみられ、GDP伸び率は6%前後となる見込みだ。2000年通年のGDP伸び率は9%が予想される。さらに2001年の成長率も6%程度となりそうだ。2000年は、建設部門が13.2%の伸びを示すほか、自動車部門も310万台超の生産(10.8%増)が予想される。また、造船部門は24.9%、機械部門は23.8%の伸びになると予想される。こうした堅調な鉄鋼消費産業の動きを受けて、鉄鋼製品の見掛け消費は、2000年には14.9%増の3910万トンになる見込みだ。また、2000年の鉄鋼製品の生産は11.0%増の4970万トンになるとみられる。鉄鋼製品の輸入については、熱延コイル、中板・厚板、線材の需要を満たす必要から、28.8%増の800万トンになると予想される。また、鉄鋼輸出も海外の需要増から前年比4.2%増え、1370万トンとなる見込みだ。


OECDオブザーバー諸国

 インドでは、1999年の見掛け鉄鋼消費は6.5%増で、2000年もさらに7%の増加が予想される。耐久消費財や自動車、産業機械といった鉄鋼消費部門は2000年には11.5%−13.6%の伸びを示すとみられる。一方、全鉄鋼製品の最大の消費産業である建設部門は7%の伸びが予想される。粗鋼生産は、1999年は10.8%増だったが、2000年も10%の伸びが続くとみられる。また、鉄鋼輸出は15%増、鉄鋼輸入全体は10%増となる見通しだ。

 

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