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国境を越えたM&Aと企業間提携に関する報告書、発表
OECDは、世界のM&Aと企業間提携の最新動向を分析した報告書「New Patterns of Industrial Globalisation:
Cross-border M&As and Strategic Alliances」を発表しました。以下は、日本関連部分の抜粋の日本語訳です。
はじめに
新たなグローバライゼーション(国際化)の波が産業の国際化を加速し、国際的なスケールで産業構造を激変させている。国境を越えた企業合併・吸収(M&A)と企業間の戦略的提携(アライアンス)が、現代の産業のグローバライゼーションの特徴である。M&Aとアライアンスは、国際貿易・投資とあいまって、企業活動、研究開発(R&D)及びマーケットを国際化してきている。現代の直接投資(FDI)の大部分は、今やM&Aという形で行われ、企業は、かつてのビジネスの多角化戦略を変更し、企業が得意とするビジネスに集中(特化)する戦略を取り始めている。
「産業の国際化(グローバライゼーション)における新たな潮流:国境を越えたM&Aと企業間提携」は、OECD各国におけるグローバライゼーションの最新動向とその背景について分析し、その産業(企業)パフォーマンス及び各国政府の施策への影響を考察している。日・米・欧州の地域別動向に加え、電気通信(テレコミ)、自動車、鉄鋼、薬品、航空、金融、といった産業セクター別の分析も含んでいる。ビジネス間(B2B)及びビジネスー消費者間(B2C)電子商取引(Eコマース)をめぐる企業間アライアンス、中小企業(SME)の国際化も分析されている。巻末の統計資料は90年代から2000年までのデータを網羅している。
「日本」(「第3章:地域別動向」より)
日本企業を巻き込んだ企業間提携(アライアンス)と合併・吸収(M&A)は近年急激に増加してきており、2000年は過去最高を記録した。1995年から99年までの間、M&Aは2倍以上、1000件に達し、2000年には1600件を超えるM&Aが行われた。日本では、一般的に、海外からの資本注入に対して懐疑的な姿勢を取る経営者が多いが、国際的なM&Aよりも企業間提携(アライアンス)が多いのは、後者の方が、外国企業による日本企業のコントロールの程度が弱いからである。しかしながら、激化する国際競争、長引く不況、国内需要の低下の結果、今では多くの日本企業が、資本を含む、補完的な資産を持った他企業との協力を求めるようになってきている。
近年の外国企業による日本企業の買収(M&A)と企業間提携(アライアンス)の増加にはいくつかの要因がある。第1に、金融セクターの再編・統合が「ケイレツ」システムを弱めてきている。三井信託・中央信託銀行の合併(1999年5月合意)、第一勧業・富士・日債銀の合併(99年8月)、住友銀行・さくら銀行の合併(99年10月)といった、従来の「ケイレツ」を越えた金融セクターの再編は、同一ケイレツ内部でこれまで行われてきた、負債を抱える企業に対する有利な条件での融資がもはや約束されないことを意味する。「ケイレツ」を越えた取引きは、納入企業の選別等、その他の取引関係にも波及してきている。ルノー(フランス)による日産自動車の3分の1の株式取得(1999年5月)は、日本企業が、日本の銀行からではなく、海外のパートナーに資金援助を求めた一例である。
第2に、国際標準にのっとった企業会計制度の導入が、企業決算の透明性を向上させた。新会計基準は、赤字経営の関連企業についての情報も、企業決算に含めることを求めている。企業決算をバランスさせるために、日本企業はリストラを断行するか、非効率な関連会社を切り離すしかない。国内または海外の企業との提携は、企業の財務強化につながり、企業の価値(市場評価)を向上させる手段となる。
第3に、1980年以降の外国為替法の改正は海外から日本への投資をここ数年で3倍にした。1998年には、日本への対内直接投資は前年(97年)の倍になり、1999年度(99年4月ー2000年3月)の対内投資(2兆4000億円)は、1997年のレベルの3倍以上である。それでも、他のOECD加盟国に比べると日本への対内投資は低いレベルであるが、GEキャピタル(アメリカ)、ボッシュ(ドイツ)、カルフール(フランス)といった外国企業が日本市場に参入し、競争を激化させてきている。
日本の経営者が、海外の企業に対して本当にオープンになったかどうかを判断するのは早計である。自動車業界を例にすれば、日産、マツダ、三菱はルノー、フォード、ダイムラーといった外国企業との提携を選んだが、トヨタは日本の企業であるダイハツや日野自動車との協力関係を強化することによって国際競争に立ち向かっていこうとしている。
「電気通信」(「第4章:セクター別動向」より)
電気通信(テレコミ)セクターは、急速な技術進歩が、規制緩和とあいまって、企業に国境を越えたパートナーとの協力を迫ってきている好例である。固定電話がインターネットと携帯電話に取って代わられ、電気通信企業は、幅広いサービスを提供するために外国企業との提携とM&Aとを通じて、規模の拡大と市場におけるプレゼンス(シェアー)向上を図っている。1990年代、約1900件の国際提携と1200件の国際M&A(2780億ドル)が行われ、1000件を超えるM&Aは90年代後半の5年間に集中している。規制緩和が国内テレコミ市場を外国企業に開放し、技術進歩が、より広域のあるいは全世界をカバーするグローバルな通信サービスを可能にする中で、最近まで国内市場で(政府)独占企業であった多くの通信企業体は、外国企業を買収し、または外国企業と提携することにより、グローバル通信オペレーターとなってきている。
多くのM&Aは米国とEU企業(特に英国、ドイツ、フランス企業)に集中しており、EU内の近隣諸国間のM&Aと大西洋をまたぐ米国・EU企業間のM&Aが活発である。ラテン・アメリカや東欧諸国といった、急激に拡大しつつある通信市場を抱える国々でもM&Aが増えている。アジアでは、香港(中国)企業が、買い手及び売り手双方としてM&Aに関わっており、オーストラリア企業も近年、買収対象として人気がある。日本のNTTドコモは、M&Aを通じた海外進出を比較的ゆっくり行ってきている。次世代の携帯(電話)サービスのコストをカバーするために、KPNモバイル(オランダ)の15%を買ったのが最近の例である。
地元(国内)通信企業を100%買収する例はあまりなく、100%買収する場合には、買収される企業は小規模のインターネットサービス会社(ISP)か、先進国通信企業の海外子会社であることが多い。例としては、ボーダフォン(英国)のベル・サウス・ニュージーランド(米国ベル・サウスの子会社)買収がある。NTTやハッチソン・テレコム(香港)といった、アジアの巨大企業も、欧米において多くの100%買収に関わっている訳ではない。長期的に見て、M&Aに係る巨額の初期投資が回収可能であるという見込みが立てば、現在の提携関係が、将来、相手企業の50%以上の株式買収または100%買収(完全子会社化)に発展する可能性はある。
従来の通信企業同士の合併、例えばドイツ・テレコムとテレコム・イタリア、テレフォニカ(スペイン)とKPN(オランダ)の合併が共に失敗したのを見ても、今後の業界再編は、携帯(電話)通信、インターネット及び電子商取引関連の分野が中心になっていくものと思われる。最近の例では、テラ・ネットワーク(スペイン)とリコス(米国)の合併(2000年10月)がある。新会社のテラ・リコスはAOL(アメリカ・オン・ライン)とヤフーに次ぐ、世界第3位のインターネット・プロバイダーとなり、40カ国、19の言語でサービスを提供することになる。従来の巨大通信企業は、こうした新しい企業と競争する一方、携帯機器を通じたワイヤレス・インターネット・サービスなど、新しい需要にも応えていく必要がある。新旧の通信企業は、少しでも多くの顧客を獲得し、新しい、利幅の大きい市場で高いシェアーを獲得するために、もっと多くの提携とM&Aに関わっていくものと思われる。
「自動車」
自動車セクターは、米国、EU及び日本の数社によって支配された、統合がかなり進んだセクターであるため、合併は比較的少ない。合弁会社か一部の株式保有(持ち合い)が多い。90年代は、1500件以上の国際提携と830件の国際M&Aがあった。近年最大の合併は1998年のダイムラー(ドイツ)とクライスラー(米国)の合併(400億ドル)である。主要自動車メーカーの統合は近年加速している。フォード(米国)のボルボ・カー(スウェーデン)買収(1999年)及びランド・ローバー買収(2000年)、ルノー(フランス)の日産の株式の37%買収(1999年)などが例である。2000年の1月から10月までの間、101の国際M&A(161億ドル)が行われた。
国際M&Aの大多数は部品メーカーを巻き込んだものである。TRW(米国)、バレオ(フランス)、ボッシュ(ドイツ)といった国際的な部品メーカーだけでなく、より小規模の部品メーカーも外国企業を積極的に買収している。主要な自動車メーカーが自動車生産をOECD域内だけでなく、新興市場でも拡大していくにつれて、多くの部品メーカーも自動車メーカーの「ジャスト・イン・タイム」の部品供給の要求に応えるために、進出先の小メーカーを買収し、外国市場(新たな自動車生産地)に進出してきている。
外国企業の買収や提携は、低コストで新しい市場に進出するためにも行われる。日本の自動車メーカーは既に東南アジアの新興市場を目指している。GM(米国)やフォードは同地域での生産能力とマーケット・プレゼンス(シェアー)を得るために日本企業と提携している。GMはスズキと共同でアジア市場向けの小型車を開発し、それを日本のスズキの工場、またはアジアの他の国で生産する予定である。タイでは、フォードがマツダと共同でピックアップトラックの生産を行っている。最近のダイムラー・クライスラーの三菱自動車の34%の買収は、ダイムラー側が、三菱の東南アジアにおける生産拠点を利用できることを意味する。
近年、ビジネス間(B2B)及びビジネス・消費者間(B2C)電子商取引を目的とした国際的な協力関係が出てきてはいるものの、B2Cを目的とした国際的提携は少ない。これは、多くの自動車メーカーのホームページが国内のIT企業によって構築されているということと、自動車メーカーが、マーケティングにおける大規模な変化を避けてきていることを反映している。自動車メーカーは、独占契約や独占契約でない流通チャンネルに売り上げを依存しており、伝統的な特約店(ディーラー)を経由しない(bypass)B2C電子商取引によって、彼らを困らせないよう、慎重に対処してきている。自動車メーカーにとっては、自動車販売後の自動車整備・点検といったサービスを提供するために、特約店の存在が不可欠である。実際、多くの自動車メーカーのウェブサイトでは、自動車の価格や仕様についての質問等を受け付けてはいるが、自動車工場から直接消費者に車を届けてくれるサイトはほとんどない。代わりに、これらのホームページでは、質問した消費者に最寄りのディーラーを教えてくれる。
B2B市場については、取引きを完全な形で行っているものがまだなく、実際の利益が出てくるのはまだ先である。自動車産業全体をカバーするB2B市場は、価格の低い、他社製品と交換可能な部品、例えば電球、タイヤ、電気コードといったものの価格を引き下げる効果はあると思われる。しかしながら、多くの自動車部品は、デザインや仕様を車(車種・車型)ごとに変えることが要求されるものであり、自動車メーカー(部品の買い手)は、結局(B2B市場を介せずに)部品メーカーとの二者間の個別交渉にもどっていく可能性もある。一部の自動車メーカーが、独自のオンライン部品購買システムを構築しているのは、部品メーカーとの二者間の関係を維持したいためでもある。
"New Patterns of Industrial Globalisation: Cross-border
M&As and Alliances" ISBN: 92-64-18677-8 ¥5,050 pp.200
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