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2003/10/16
大半のOECD諸国では医療関連支出の伸び率が経済成長率を上回っているため、政府は新たな財源の確保あるいは個人負担率の引き上げを余儀なくされています。2000年と2001年の医療関連支出はOECD平均で年4%(実質)の増加となりましたが、実質GDP成長率は平均で年2.3%にとどまりました。この結果、医療関連支出の対GDP比は一段と上昇し、1970年の平均5%強、1990年の7.3%から、2001年には8.4%に達しました。
特に米国、カナダ、フィンランドでは、医療関連支出の対GDP比は1990年代の横ばい傾向から一転し、2000年と2001年に劇的に上昇しました。これは、一つにはこれらの国の景気が減速したためですが、医療関連支出がそれまで抑制されていた反動から一気に増加したという面もあります。医療関連支出の対GDP比が他の国より大幅に高いのは米国で、対GDP比は1970年の6.9%、1990年の11.9%から、2001年には13.9%に達しました。2001年の対GDP比が米国に次いで高かったのはスイスとドイツで、それぞれ10.9%、10.7%でした。以下、カナダの9.7%、フランスの9.5%と続いています。
大半の国(韓国、メキシコ、米国を除く)では、医療関連支出の財源は公的資金のため、支出の増加は財政を圧迫します。民間支出が医療関連支出で特に大きなシェアを占めている米国でも、公的な医療関連支出の対GDP比はOECD平均並みの6%に達しています。
2001年の医療関連支出全体に占める公的支出のシェアはOECD平均で72%と、1990年のシェアとほぼ同じでした。残りの28%は民間(主に民間保険と個人)の支出ですが、その金額と内訳は国によって大きく異なります。米国では、民間保険が保険医療関連支出全体の35%を占めており、消費者の直接的な支出は15%に過ぎません。これに対し、スイスでは民間保険のシェアは医療関連支出全体の10%にとどまり、33%は消費者の直接的な支出でした。スイスばかりでなく、韓国とメキシコでも個人負担のシェアが比較的高くなっています。
医療技術と新薬がコスト増の主因
医療関連支出の増加をもたらしている主因の1つは医療技術と新薬の開発・普及です。大半のOECD諸国では過去20年間にCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴断層撮影装置)などの診断技術が急速に普及しています。MRI数は過去10年間に特に急増しました(特にスイス、オーストリア、アイスランド、フィンランド)。
新薬や高額医薬品の登場を映し、医薬品費も1990年以降多くの国で急増しています。スウェーデンとオーストラリアでは1990〜2001年に医薬品費が実質で倍増しており、カナダ、フィンランド、アイルランド、米国でも70%以上増加しています。
白内障手術、人工関節置換術、心臓手術など、様々な外科手術を受ける人も急増しています。冠動脈バイパス術(CABG)と冠動脈形成術の手術件数は、それまで手術件数が比較的少なかった国(冠動脈形成術ではオーストラリア、デンマーク、ハンガリー、スェーデンなど)を中心に、1990年代に増加しました。CABGと冠動脈形成術の手術件数が圧倒的に多かったのは2000年も引き続き米国でした。米国の医療関連支出総額が他の国より多いのは、一つにはこうした高額な手術を受ける人が多いためです。
OECD諸国では手術件数が急増しているにもかかわらず、供給は必ずしも需要に追いついていないようです。急を要しない手術については、英国、北欧諸国、スペイン等の国では依然として長期間待たされる状態が続いています(1)。
病院のコスト削減努力
病院のコスト削減努力と手術当日に歩行可能となる手術(日帰り手術)の増加があいまって、ほぼ全てのOECD諸国では病院のベッド数が減少しています。人口1000人当たりの急性期治療病棟の病床数は平均で1980年の5.7床から2000年には4.0床へと減少しています。また、2000年の急性期治療病棟の病床数(人口1000人当たり)は、一部の欧州諸国(ルクセンブルク、チェコ、ドイツ、ハンガリー、オーストリア)の6床以上からメキシコ、米国、スウェーデン、フィンランドの3床以下まで、国によっても大きな開きがありました。
病床数の減少だけでなく、平均入院日数(ALOS)も急激に減少しています。急性治療のための平均入院日数はOECD平均で1985年の9.6日から2000年には6.9日へと減少しました。この期間に平均入院日数が特に減少したのは北欧諸国(デンマーク、フィンランド、スウェーデン)やフランス、オーストリアなどの欧州諸国です。平均入院日数の減少はしばしば効率性の指標とされています。他の全ての条件が同じであれば、入院日数が短ければ患者1人当たりのコストは減少するからです。しかし、入院が短すぎると治療結果や患者の安心感と回復に悪影響を及ぼし、再入院率の上昇につながる可能性があります。
健康リスク
OECD平均の早世率(潜在的余命損失年数から計測)は過去30年間に半減していますが、これは総じて心臓病関連の死亡が急激に減少しているためです。2000年の米国の早世率は引き続きOECD平均よりはるかに高く、男性で21%、女性で34%、OECD平均を上回りました。米国の殺人による早世率は男性、女性とも特に高く、OECD平均の4倍となっています。
肺がんによる死亡と高い相関関係があるたばこ消費量は、多くのOECD諸国で過去20年間減少しています。しかし、肥満者率は全てのOECD諸国で上昇しています。オーストラリア、米国等では過去20年間で2倍以上に、英国では3倍に増えています。オーストラリアや英国では成人の20%以上が肥満です。米国では、1990年代の初めには成人の23%が肥満でしたが、10年後にはこの比率は31%へと上昇しています。大陸欧州の肥満者率はこれよりもはるかに低いものの、やはり上昇傾向にあります。肥満になり始めてから関連の病気(糖尿病、高血圧、心臓血管病、喘息など)を発病するまでには時間がかかるので、医療関連コストは将来的に増えていくことが考えられます。
上記は、OECD諸国の主要な医療関連指標の変動と傾向を示した「Health at a Glance - OECD Indicators
2003,」で取り上げられている動向や推移の一部です。本書は、健康状態(余命、早世率、自己申告による健康状態)、医療関連資源とその利用状況(開業医・看護師、医療技術、病院ベッド数、平均入院日数)、医療関連支出(1人当たりと対GDP比、公的支出と民間支出の内訳を含む)、健康の非医学的決定要因(たばこ・アルコール消費量、肥満)という主要4分野の比較データを提供するものです。
CD-ROM版の「OECD Health Data 2003」には更に多くの指標が掲載されています。2003年10月3日に発表された「OECD Health
Data 最新版」では、OECD各国の医療関連支出の状況を示す支出関連データと医療制度グラフが特集されています。詳細についてはウェブサイトをご参照下さい。
[1]OECDの新報告書"Tackling Excessive Waiting Times for Elective Surgery:
a Comparision of Policies in Twelve OECD Countries"は待機手術の待機時間に差が出ている原因について調査し、この問題への対策を特定しています。
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