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Home OECD Tokyo > 経済 > OECDジョンストン事務総長が来日:日本外国特派員協会で講演

経済

OECDジョンストン事務総長が来日
日本外国特派員協会で講演

2000/5/9

 ドナルド・ジョンストンOECD事務総長が、5月7日から9日まで来日しました。同事務総長は、滞在中、河野外務大臣ほかの関係閣僚と会談し、日本経済・世界経済情勢等に加え、九州・沖縄サミットに向けてのOECDとしての協力等についても意見交換を行いました。また、日本記者クラブで記者会見を開催した他、日本外国特派員協会では「The Japanese Puzzle...A Solution in Sight」と題して、日本経済の現状と問題点などにつき講演を行いました。講演の要旨は次の通りです。

 日本経済は謎に包まれているように見えます。終戦後荒廃状態にあった日本は、元来天然資源に乏しいため、国民の総意工夫と技術力で比較優位を確立し、世界第2位の経済にまで成長しました。それは日本の奇跡と呼ばれ、世界の模範となりました。

 しかし、そうした奇跡は不意に終わりを迎えました。日本は1970年代および1980年代にG7諸国で最高の一人当たりGDP 成長率を記録しましたが、1990年代に入ると急激に景気が減速し、1990年代の平均経済成長率は1%にまで落ち込み、G7の主要国、特に米国には大きく水をあけられました。ここに大きな謎があります。なぜ、世界最高水準の製造技術を誇り、世界一の外貨準備高を持ち、知識基盤型経済の牽引力である人的資源にも恵まれている豊かな国日本が、世界経済のリーダーの座から転落してしまったのでしょうか。

 私は、前回日本を訪れた1998年10月に、日本経済を野球に例え、最強の野球チームでもシーズン中にスランプに陥ることがある、と述べました。今日の日本ははたして、スランプから脱し持続可能な成長の軌道に戻ったのでしょうか。



景気回復のサイン

OECDの日本経済の専門家は、景気回復のサインを幾つか指摘しています。

  • 工業生産が2年振りに増加。企業マインドも改善。

  • 資本財生産が増加。在庫レベルも上昇。

  • 金融部門の規制改革により、ベンチャー企業を上場対象とする市場(ナスダック・ジャパン)が開設。

  • 企業収益の改善により、サラリーマンの給与所得の増加、内需刺激が期待できる。

 OECDは6月に2000年と2001年の経済見通しを発表しますが、日本については、現時点では緩やかな循環的景気回復に向かいつつあるように見受けられます。OECDでは、日本政府の景気対策に注目してきましたが、ビジネスマインドを改善させた金融安定化策やデフレスパイラルを防ぐための徹底的な金融財政政策は高く評価されています。


公的債務が最大の課題

 私は今回の日本訪問で、日本の景気は回復しつつあるとの認識を強めましたが、その途上にはまだ問題が残されています。日本が直面する最大の問題は、公的債務の増加です。政府は、ある時点で財政再建を加速させる決断を下さなければなりませんが、そのタイミングは大変重要で、早すぎても遅すぎてもいけません。

 財政再建では、適切な金融政策が重要な役割を果たします。金融当局は、金利の設定にあたり、金利の上昇から恩恵を受ける年金生活者などと、ゼロ金利政策の継続を期待する企業との間でバランスをとらなければなりません。

 銀行や建設、不動産、小売り部門では、バランスシートが改善されていない企業が多いことを考えると、低金利政策の継続は、少なくとも短期的には、これらの部門への打撃を緩和するでしょう。そしてそれは、日本の景気回復が遅れるリスクを低下させるでしょう。


規制改革の進行

 規制改革を推し進めることも同様に重要です。日本は、構造改革と規制改革を徹底的に行うことによってはじめて、グロバリゼーションの恩恵を余す所なく享受し、活力溢れるニューエコノミーに加わることができるのです。現在OECDは、「ニューエコノミー」が本当に存在するのか、もし存在するのならニューエコノミーの原動力となっているのは何か、について研究を進めています。この研究の中間結果をいくつかご紹介しましょう。

 第一に、米国の好景気は情報通信技術(ICT)の利用と関連があります。日本と欧州はICTの分野では遅れをとっているようです。しかし、ICTを利用するだけで生産性や成長が伸びるわけではありません。ICTを利用すると共に、ビジネスのやり方も変えなければ、良い効果は現れないのです。OECDの調査では、日本の企業は中間管理職を減らし、意思決定過程を早め、株式持合いや系列取引などの制度を見直すべきだ、と結論付けています。

 第二に、日本には市場の力を妨げる直接的規制が数多く残っています。経済規模とベンチャーキャピタルの比率では、日本はOECD加盟国の中で最も低いレベルにあります。ストックオプションにも厳しい制限があります。

 第三に、日本ではインターネット接続コストが米国やカナダなどと比べて非常に高く、その結果、人口に対するインタ−ネットホスト数を見ると日本の遅れが目立ちます。実際、1000人あたりのインターネットホスト数のOECD平均は50ですが、日本は20足らずです。

 このように、革新や変化を妨げている規制から日本経済を解き放つには、なお一層の改革が必要です。電気通信や医療の他にも、農業、教育、税制、労働市場、コーポレート・ガバナンス、年金などの分野で、規制改革は多くの利益をもたらすでしょう。

 一年程前にOECDは、日本の政府規制に対する審査報告をまとめました。その中で、政府により明確な説明責任を求め、政策決定や産業振興の部門から規制機能を分離するよう提言しました。提言の一部は実行されましたが、さらに、競争政策の強化、電気通信産業や電力・ガス供給部門に対する独立の規制機関の設立などに取り組む必要があります。そのためには、日本の政治のリーダシップと国民の支持が不可欠です。

 21世紀の世界では、各人は自己責任が増すと同時に意思決定の過程に参画する機会も増えるでしょう。政府はこうした状況に国民が十分対応できる環境を整備する必要があります。一方、国民も企業家精神を持ち革新者となることを求められるでしょう。私は、日本がこうした課題に立ち向かうことができると確信しています。日本は、その歴史が実証するように、最も重要な資源である人的資源に富んでいるのですから。

 

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