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2001/11/20
OECDは、毎年春と秋の二回、加盟30カ国の経済情勢を分析評価し、政策提言しています。以下は、11月20日に公表された速報版の序章の日本語仮訳です。
序章
OECD地域の成長は事実上行き詰まったが、2002年央から回復の見込み
昨年米国に始まり他の国々へ波及した景気減速はグローバルな景気減速へと転じ、そのマイナス影響は世界のほとんどの国・地域に及んでいる。ハイテク業界の深刻な調整や原油価格高騰の影響が出始めるなど、いくつかの要因から2001年年央にOECD地域の成長は事実上行き詰まった。夏の終わりに、個人消費の持ち直しなどによって、米国の不振が和らぎ、2002年年初には緩やかな成長に戻るのではないかと思わせる兆しがいくつか見え始めた。しかし、9月11日の米国同時多発テロとそれに伴う混乱によって世界経済は深刻な打撃を受けている。したがって、今年後半のOECD諸国全体の経済は20年ぶりにマイナス成長になると見込まれ、来年前半も非常に弱い状態にとどまると予測される。家計・企業コンフィデンスが現在の低水準から上向くとすれば、来年後半に景気は大幅に回復するだろう。OECD諸国全体の実質GDP成長率は平均で2002年が1%、2003年が3%の見通しである。OECD地域全体の失業率は2002年の年央過ぎまで上昇を続け、その後やや低下する見込みである。インフレ上昇率は、原油価格の低い伸びなどにより、低水準を維持するものと予測される。
先行き不透明感の払拭と政策による景気下支え
景気が回復するには、同時多発テロ以来広がっている不安感が払拭されなければならない。リスク回避意識の強まりから、家計と企業は慎重な姿勢を強め、消費を先送りしている。この先、政治的、軍事的な動きによる景気へのマイナス影響がないとすれば、先行き不透明感は2002年前半に解消しよう。このように民間セクターのセンチメントが徐々に改善していけば、「通常のビジネス」環境に戻り、現在の生産能力削減の流れが反転すると同時に企業が新たな設備投資計画に着手する重要なインセンティブになるはずである。また2002年央までには、多くの国が実施した金融政策(一部の国では財政政策)による大きな景気刺激の効果も現れてくるはずである。さらに、原油価格の下落も景気回復を後押しするであろう。
景気下振れリスクは大きい
現状では、将来の経済動向の予測は重要な一連の前提にかかっている。OECD諸国における消費者および企業コンフィデンスの大幅低下、非OECD諸国からの輸入減少、原油価格の現状の好ましい水準からの上昇、予測できない為替相場の変動など、様々な悪材料が発生する可能性がある。全般に、このようなことが発生すれば、現在の景気低迷が一段と悪化し、急速で力強い回復に疑問が生じよう。現時点の予測は、大きいリスクを条件としているが、それでも回復に必要とされる重要な条件を特定しており、有用な試練をもたらすものである。この観点から、現時点の予測は、いくつかの可能な代替的シナリオを取り上げ、適切な政策対応について検討する枠組みを提示している。
米国経済の減速は深刻だが、力強い回復の可能性
米国経済はグローバルな景気減速をもたらした。2000年第2四半期の経済は5%以上の伸びを示していたが、その後は急速に失速し、今では景気後退局面に入っていると推測される。ハイテク業界の調整による悪影響、それに伴う株価の下落、在庫調整、これまでの金融引き締め政策の効果出現など、いくつかの要因が働いている。減速は予期されていたが、その深刻さは予想以上であった。9月の同時多発テロによって先行き不透明感とリスク回避姿勢が強まり、設備投資、消費者需要、経済活動はさらに落ち込んでいる。しかし、主な景気後退要因が消失していくにつれ、需要と経済活動は持ち直し、2002年後半までに景気回復は力強く明らかなものになるだろう。
金融緩和と積極的な財政出動
9月11日以前も以後も、積極的金融緩和は迅速かつタイムリーに行われており、これが景気回復に大きく寄与するはずである。FRBは今年に入ってから主要政策金利を450ポイント引き下げており、名目の(実質ではない)短期金利は1960年代初頭以来の最低水準となっている。予想外の緊急事態が無ければ、これまでの金融緩和が期待通りの効果を出しているという兆候の有無を注視する時期に来ていたかもしれない。財政面では、減税と適切な新規の政府支出を行うという重大な決定がなされている。今春定めた減税のほか、連邦政府は同時多発テロ直後に400億ドル規模の緊急・軍事予算を成立させるとともに、150億ドルの航空業界支援策も打ち出している。さらに、政府と議会は新たな財政計画をめぐる交渉も行っており、900億ドルに上る緊急対策費が2002年と2003年に支出されると推計されている。この新たなプログラムの目的が短期的な景気テコ入れだとすれば、各種減税か財政出動かの選択は、内需押し上げへの即効性によって判断すべきである。この新たな取り組みは、財政への長期的な悪影響を避けるような形にするとともに、可能であればこれを経済の供給ポテンシャルの向上につなげるべきである。
欧州では、成長の急激な減速に伴い、短期金利は低下し、財政収支も悪化している
当初、世界的な景気下降の欧州への影響は最小限にとどまると見られていたが、EUのGDP成長率は2001年に入って大幅に鈍化している。資本財への需要減少による貿易の不振を反映して、輸出の伸びが著しく縮小しているほか、設備投資の増加にも歯止めがかかっている。9月11日の米国同時多発テロによるコンフィデンスの低下によって、このような低迷状態はさらに悪化している。こうした状況に対応するため、今年に入ってから欧州中央銀行の主要政策金利は150ポイント、イングランド銀行の主要政策金利は200ポイント、それぞれ引き下げられた。しかし、特にユーロ圏では依然として景気下振れリスクが大きい。予測で示されているように、労働市場と製品市場がさらに悪化する兆しが出れば、政策スタンスの一段の緩和は避けられないかもしれない。財政面では、多くの政府が2001年と2002年に赤字の拡大に直面する。これは主に歳入の循環的な落ち込みを反映したものであるとともに、危機を和らげるものである。しかし、中期的に財政の持続可能性を確保する必要から、積極財政による景気下支えの範囲は限られている。現在の状況は、景気が打撃を受けた際に政策発動の余地を残しておけるよう、急成長期に財政黒字を生み出し、蓄えを確保しておくことの重要性を如実に示している。
労働・製品市場の改革は成長のポテンシャルを高める
持続可能な成長への復帰は、労働市場と製品市場の改革努力によって促進されよう。さらに、特に失業率が高い国では、規制緩和、労働力供給の促進、構造的失業の削減、起業環境の改善などにも取り組む必要がある。また、製品市場は依然として細分化され過ぎており、金融市場は、銀行サービス、保険を含めて、統合化が十分でない。しかし、現在の景気低迷と労働市場の悪化は、特に強力な競争政策の実施といった多くの実績を後戻りさせる圧力を生む可能性が高い。国の補助金を増やすと削減は困難であり、既存事業者向けの優遇策は無駄が多く、新たな規制は長期的な成長に対するリスクとなるので、こうした圧力に抵抗することは重要である。
日本経済の回復には時間がかかり、マクロ経済政策の余地は限られている
日本経済は、9月の米国同時多発テロ以前に新たな景気低迷局面に入っており、短期的には一段と落ち込む見通しである。ハイテク業界の落ち込みは経済の他の部分にも波及しており、日本経済はその悪影響を受けている。モノとサービス、金融資産、土地でデフレがなおも続いている。こうした中で、短期金利はほぼゼロ%になっているため、景気下支えのために従来の金融政策をとる余地は限られている。当局は最近、銀行システムへの潤沢な流動性の供給に取り組んでいるが、にもかかわらず、銀行貸し出しは減少し続けている。日銀による追加的対策には、外国資産を含めて、日銀が購入する資産の範囲を広げることも含まれよう。総需要を直接的に下支えする財政政策の範囲も非常に限られている。グロスの公的債務の対GDP比はすでにOECD諸国の中で最も高くなっている。長期的な財政の持続可能性への懸念が強まっているため、自由裁量的財政政策の効果も家計貯蓄の増加によって相殺されてしまう可能性が高い。このことから、歳出の有効性向上、ひいては財政再建のための明確な戦略を打ち出せば、コンフィデンスを支え、需要を下支えできると言えよう。
短期的にはある程度の痛みが伴うとしても、断固たる構造改革は持続可能な成長を後押しする
伝統的なマクロ経済的政策手段の範囲が限られているからといって、何もしなくていいということにはならない。それどころか、新たな成長の条件を確立するために、厳格で包括的な構造改革戦略が緊急に必要とされている。銀行の不良債権問題は優先的に取り組まれなければならない。不良債権処理は、短期的にはある程度のマクロ経済的コストを伴うかもしれないが、健全な銀行システムを再建し、企業の再構築を促進するには必要である。この問題に手をつけなければ、金融システムはさらに脆弱となり、信用の低下を招くことになろう。金融セクター以外の構造改革も、新たな市場機会をもたらし、一時的には需要拡大につながる可能性がある。この点で、過度の都市計画規制や不動産開発の足かせとなっている税金の撤廃にも優先的に取り組むべきである。また、既存企業が新規参入を阻んでいる公益事業などで、競争政策を強化することも重要である。
開かれた競争的な市場を維持することで9月11日の同時多発テロによる長期的な悪影響を限定的なものにできる
短期見通しを越えて、9月11日の米国同時多発テロの長期的な経済への影響に取り組む必要がある。テロは不安感、国境管理の強化、国際貿易の取引コスト増加につながった。保険会社は保険料を引き上げ、場合によってはリスクが大きいと思われる保険契約をキャンセルしている。企業は、社屋保護、基幹コンピューターシステムのバックアップ、在庫水準の引き上げのためのコスト増を強いられる可能性もあり、そうなれば生産性と成長に悪影響が出るかもしれない。こうした環境下では、コストの増加と開かれた貿易に対するリスクは評価、監視しなければならないだろう。また、開かれたグローバル貿易システム、産業間の自由競争、市場が失敗した場合の国家介入への厳しい制限に対し各国政府がコミットすることも重要であろう。最近、各国政府が貿易政策の改革・自由化プロセスを維持し、交渉事項の拡大に乗り出す決定を下したのは、こうしたコミットメントをタイムリーに示すものである。農産物および繊維貿易の一層の自由化から恩恵を受ける開発途上国を含めて、すべての国がこうした動きから利益を得ることができる。さらに、他の貧困撲滅策の有効性を高めるための努力を続けていくことも極めて重要であろう。
2001年11月15日
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