|
2002/3/18
OECDは3月18日、レポート「世界経済における中国:国内政策の課題」を発表しました。レポートは、WTO加盟以降、中国が経済発展を続けるためには、生産効率の向上、投資家の保護、金融システムの整備、税制の改革、環境問題への取組み等を含む包括的な国内政策の諸課題の解決が必要としている点で注目されます。
以下は、中国経済に関するOECDメディア・セミナーにおいて、OECD広報情報局ブレイ課長が行ったプレゼンテーションの要旨です。
- 本レポートは、1995年に遡るOECDと中国との広範な協力プログラムから中国経済が直面する課題を分析している。
- これは、OECDのエコノミストの調査に基づくOECD独自のレポートである。
- 本レポートは中国政府が参加した議論の中から作成され、同国政府高官はその政策提言に関心を示した。OECDと中国政府高官は、3月26日、北京で開催される会合で本レポートの結論と提言を検討する。
- 本レポートが記す通り、中国は、経済成長、近代化、貿易・投資への経済開放に大きく踏み出した。現在、工業生産の70パーセント以上は非国有企業が占めている。
- しかし、中国は今も、深刻な失業、不完全就業、不適切な資源配分等の問題を抱えている。近年の驚異的成長にもかかわらず、中国経済はその能力を十分活用しているとはいえない。
- 中国における富の分配は大きな地域格差があり、西部は特に開発需要が高い。沿岸地方は内陸部に比べて国際経済とより密接な関係を有している。
- WTO加盟は、新たな環境を創造し、新たな機会を開く。しかし、中国国民がその恩恵を十分に享受するには、大胆な政策変更が求められる。
- 中国は、OECD加盟国から経済課題克服の経験を学ぶことができる。2002年3月、中国は、OECD科学技術政策委員会に初めてオブザーバーとして参加した。大半の技術を輸入に頼る中国にとって、技術は経済成長にとって特に重要な分野である。
- 中国は、金融システムの整備を最優先しなければならない。中国の銀行は返済不能となった国有企業への不良債権で苦しんでいる。欧米の会計基準を適用すれば、4つの国有銀行全部を含めた多くの銀行が破産していることになる。
- WTO加盟は、多額の外国直接投資を中国に呼び込む道を開く。特にサービス部門の大幅な成長が期待される。しかし、中国が欧米から「質の高い」外国直接投資を望むなら、国内の規制問題を解決しなければならない。
- 中国には合併、買収に関する明確な規則はない。公正な競争秩序を確保する法律には重大な欠陥があり、実施されないことも多い。今でも、特定の分野で圧倒的に利益を守られた企業は、競争の脅威をもたらす新規参入を容易に排除できる。
- 中国企業の多くが、低い生産効率、時代遅れの設備、不備な技術に苦慮している。効率的な経営規模・範囲を実現するには企業数が多すぎる。例えば、独立自動車メーカーは123社もあるが、総生産量はOECD諸国の小規模自動車メーカー1社の生産量にも及ばない。また、セメント会社は、米国の110社、インドの106社、ブラジルの546社に比べ、中国には8,000社ある。
- 中国の農業システムは、小麦や多くの穀物の国際競争力がなく、競争力のある野菜等の作物への転換が必要であろう。農業従事者数は、現在の生産量の維持に必要な数をはるかに上回っている。今後10年間に、7,000万人近くが農業を離職し、他の仕事に移行すると予想される。
- 都市では、闇経済が雇用全体の4分の1を占めている。約1億人の「浮遊労働者」が都市の闇経済を求めて農村から上京し、例えば、建設現場のトレーラーで生活している。今後、このような闇の雇用を奨励し、特に労働力流動や社会保険制度を規制している官僚的な側面を改革しなければならない。
- 中国の株式市場はめざましい発展をとげ、それを扱う技術の高度化も進んでいる。しかし、投資家保護と金融市場システムの安定化を実現する効果的な市場監視体制が必要である。
- 金融機関監督制度もさらなる改革が必要である。民間小企業は銀行融資や資本市場の恩恵を受けることが難しく、その成長機会が阻まれている。
- WTO加盟によって大規模な産業構造改革が求められるが、これを金融システムが支えるためには、こうした問題すべてに取り組まなければならない。
- 税制の合理化も求められる。現在、中国の税収は国内総生産(GDP)の約13%で、これは中進国をはるかに下回る。中国は税制・行政改革に着手したが、外国投資家に対する税制を中心とした改革を一層進めなければならない。また、国内外企業への無差別待遇と透明な財政システムを確立しなければならない。
- また、深刻な環境問題の解決にも取り組まなければならない。中国では、産業の大半が環境を汚染し、経済発展は、淡水資源や森林をはじめとする天然資源に深刻な影響を及ぼしている。
- 中国がWTO加盟に伴う恩恵を得るカギは、これらの問題を解決する改革の実施能力にある。中国には、特定部門を支えることを目的とした政策から、経済全体に関わる包括的政策への転換が求められる。政策では、3つの重要目標、すなわち「資源活用の改善」、「競争力、コーポレート・ガバナンス、その他市場機能に不可欠な枠組みの強化」、「経済発展を支える政府の能力の改革と強化」の重視が求められる。
- 中国の政策改革は、個別ではなく、有機的連関をもって行うことが不可欠である。ある政策決定が効果を発揮するかどうかは、他の政策全体の効果によって決まる。幅広い改革を進めるには、速やかな行動が必要である。例えば、銀行の健全性の回復、地方保護主義やその他産業部門の効率的リストラを妨げる障害の排除、歳入増と支出効率の改善による国家財政の持続可能性の確保が含まれる。
- OECDと中国が協力できる分野として、外国直接投資を誘致するための政策作りが挙げられる。OECDと中国の対外貿易経済合作部は、昨年、中国の外国投資政策について大規模研究を実施することで合意した。作業は4月に着手され、来年半ばに研究結果の公表を予定している。
- 中国経済は大いなる可能性を持つとOECDは確信している。経済運営が正しく進めば、中国は、アジアのみならず世界の繁栄をもたらす原動力にもなる。本レポートの冒頭に述べているように、経済改革が始まった1978年以降の中国の経済成長は、過去半世紀最高の成功例のひとつに挙げられる。中国は、現在、世界第7位の経済大国、第2位の外国投資受け入れ国になっている。
- この道を踏み外すことなく順調に進むには、経済運営方法を改善しなければならず、これもOECDが中国に大いに協力できる分野である。ガバナンスは、国有企業、公営企業、民有企業の経営方法と、政府自体の運営を含む政府の経済への介入方法に影響を及ぼす。1997年から1998年のアジア通貨危機を引き起こした最大要因のひとつは、ガバナンスの不備である。この点について中国は諸外国の経験から学ぶことができるし、OECDはそれを支援することができる。
*レポート全文は4月中旬に出版予定です。
|