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経済

OECDエコノミック・アウトルックNo.72速報版 発表

2002/11/21


OECDは11月21日、エコノミックアウトルックNo.72速報版を発表しました。以下はその論説仮訳です。

論説:おぼつかない景気回復

本「アウトルック」発表時点での世界経済は、回復の足取りが予想より重く、その広がりも限られているように思われる。景気は2002年初頭に盛り返したものの、その後、消費者信頼感と企業景況感が悪化する中で、失速した。こうした景気の浮き沈みは回復の初期段階では珍しくないが、株式・金融市場の一段の悪化と関連しているということで、これまでの景気循環とは明らかに一線を画している。

しかし、すでに長期化している金融調整局面がさらに続いているということはさほど驚くべきことではない。これは、当初の時点で多額の過剰資本と金融不均衡を抱えていたという、現在の循環局面の特異な性格を物語っているのである。

実際、後から考えると、2002年の景気動向には通常の循環的特徴と独特の循環的特徴の両方があったように思われる。

  • 年初の持ち直しは、通常の意味における非常にテクニカルな回復で、急激な在庫減らし期間の終了を示していた。
  • その後の景気減速は、経済と金融の健全な「ファンダメンタルズ」がまだ完全に回復していないということを確認するものだった。資本のだぶつきはまだ十分に解消されておらず、株価もおそらくまだ割高だった。

最近の動向も北米、大陸欧州、日本の間で景気の状態に大きな差があることを浮き彫りにしており、一部のOECD地域では安定政策が適切なグローバル需要の微調整につながっていないという懸念が生まれている。

しかし、入手可能なデータを綿密に調べると、OECD諸国の間に著しい「景気循環の乖離」が見られるわけではない。それどころか、近年の景気循環は非常に足並みを揃えているように思われる。いま我々が目撃しているのは、むしろ、北米の潜在成長率が他のOECD地域のそれをはるかに上回るという、「構造的乖離」の現象かもしれない。

先行きを展望すると、世界経済の見通しは次の3つの基本的な問いへの回答にかかっている。

  • OECD諸国が健全な金融ファンダメンタルズを回復するまでにどのくらい時間がかかるのか。
  • 安定政策は経済活動が二番底という形で目先底割れするのを防止する適切なクッションとなるのか。
  • 北米へのキャッチアッププロセスを再開するための構造改革が、北米以外のOECD地域で実施されているか。

最近の一連の企業不祥事とそれが投資家の間に引き起こした不安に目を奪われて、既に起きている健全な株価への動きを見逃すべきではない。例えば株価収益率(PER)は、以前の「信頼域」へと戻りつつある。米国では、家計純資産の対所得比が今や過去の平均値に近づいており、通常の状態への復帰を示している。

しかし、企業にしろ家計にしろ、経済主体がこうした変化しつつあるパラメーターに沿うように消費行動を調整する際にはタイムラグが発生する可能性が高い。このため、本「アウトルック」では、大半のOECD地域で2003年半ばまで消費は低迷し、その後2004年にかけて消費は徐々に上向いていくと予想している。

このシナリオにダウンサイドリスクがないわけではない。短期的には、景気は中期的な道筋から簡単に下振れしてしまう。特に信頼感・景況感が弱い場合にはそうである。米国のように、強い個人消費が息切れする可能性のある国では、投資の回復が遅れて、主な需要の原動力としてのポジションをうまく引き継ぐことができないかもしれない。ドイツや日本など、個人消費が依然として低迷している他の国では、現在抱えている問題には重大な構造的、従って長期的な側面があるので、信頼感および景況感と期待される回復の強さに悪影響が出るかもしれない。

こうした状況だけに、最も重要なのは、もちろん、マクロ経済政策によって適切なクッションを提供することである。この点で、本「アウトルック」で示されたシナリオでは、米国連邦準備制度理事会(FRB)の必要ならば再び動くという姿勢とともに最近の金融緩和に留意されている。また、インフレ圧力が低下し、景気が低迷する中で、欧州中央銀行(ECB)による50bpの早期利下げについても考慮されている。従って、目先、金融情勢は米国では極めて景気下支え型に、欧州では大雑把にいって緩和型にとどまるのは必至といえる。

財政政策は、欧州では大型のビルト・イン・スタビライザーに、米国では裁量的刺激策により強く依存しているという違いはあるものの、大西洋の両側とも非常に景気下支え型になっている。先行きを展望すると、一般に、ビルト・イン・スタビライザーは自動的に働くが、裁量的政策については、欧州の大国の場合、90年代末の好況期に誤って緩和した期間があるだけに、財政の長期的な持続可能性を保持するため慎重になり過ぎてしまうと考えられる。実際、OECDの多くの大国では、政策当局は現在、ジレンマに直面している。これまで原則に基づいて財政政策を行ってきたとはいえない状況から、現在では景気安定の必要性と長期的な持続可能性追求との間で意見の対立が生じているのである。この結果、景気安定策は金融政策に片寄ってしまう恐れがある。

こうした不安な成り行きによって、多くの国がよりよい財政ルールを設計するか、少なくともルールの実施を改善し、解釈を明確化するという課題を抱えている。課題となっているのは、よく設計され、透明性があり、施行可能で、景気の上昇局面でも下降局面でもよく機能するような財政ルールを作ることである。完璧なルールはおそらく存在しない。しかし、どのようなルールを選択するとしても、財政収支への景気循環による影響について考慮し、ビルト・イン・スタビライザーが機能するようにし、人口の高齢化を視野に入れた長期的な持続可能性の実現に焦点を絞り込むべきである。今回の「アウトルック」では財政ルールのこの非常に重要な問題に特に注意を払っている。

OECDの多くの大国が現時点で直面している困難のはっきりとした特徴は、マクロ政策と構造政策が現在どのように絡んでいるかということである。日本の場合、金融政策に少なくともある程度の有効性を取り戻させるために、銀行セクターの断固たる構造改革が急務となっている。経済改革を行わなければデフレは終息しないが、景気下支え型のマクロ政策が伴わなければ、経済改革は短期的にデフレを悪化させる可能性がある。一挙に実施しなければ、日本当局が現在考えている銀行セクターの健全性回復策はうまく行かないだろうし、潜在成長率は極めて低い水準にとどまるだろう。ドイツの場合には、他の欧州諸国における最近の成功例やハルツ委員会の報告書を踏まえて労働市場の機能を改善していくことが、中期的に潜在成長率を押し上げていく上で極めて重要である。労働市場の機能改善は、企業景況感・消費者信頼感を押し上げるとともに、今後景気が落ち込んだ場合の回復力を高めることにより、決定的な景気回復の起爆剤になる可能性もある。

もっと全般的な視点から見て、構造政策が極めて短期的な意味でも政策ミックスの不可欠の一部となる可能性は益々高まっているように思われる。成功した国の経験が十二分に物語っているように、適切な構造政策は短期的な景気の安定化に決定的に寄与し、ひいては金融・財政政策がより効果的に短期的な取り組みと長期的な取り組みのバランスをとる余地を広げることができる。

短期にとどまらず、長期的な成長にとっても経済改革は依然として不可欠な要素である。例えば、欧州の多くの国では、高齢者の労働参加率を高めていくことが強く叫ばれている。これは、高齢化の財政への影響に対処するためばかりでなく、長期的な成長率を押し上げ、リスボン首脳会議の目標に近づけるためにも重要なことである。この分野については、高齢労働者に労働継続の意欲をそがないような財政的シグナルを送ることが大事であり、そのために成すべきことはたくさんあると考える。具体的には「アウトルック」印刷版で論じる予定である。

「アウトルック」印刷版では、OECD内外の最近の実証研究を幅広く利用して、製品市場の競争激化がOECD全体の成長と雇用にどのような影響を及ぼすかについてもある程度詳しく取り上げる予定である。この点でも適切な構造政策の重要性を過少評価すべきでないように思われる。

2002年11月18日
ジャン・フィリップ・コティス
チーフ・エコノミスト

 

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