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2003/04/24
OECDは4月24日、エコノミックアウトルックNo.73速報版を発表しました。以下はその論説仮訳です。
論説:前進しているものの、力強さに欠ける景気回復
六ヶ月前の「OECDエコノミックアウトルックNo.72」発表以降、OECD諸国の景気は期待外れに終わっている。米国の景気回復は依然として弱く、やや予想を下回っている一方、ユーロ圏の景気も元々低調だった見通しを大幅に割り込んでいる。日本については不安定な輸出と投資の動きが本物の景気回復にまで拡大していない。
景気がここに来て再び軟化しているのは多くの理由によるものであり、それぞれの理由がどれほど重要なのかを評価するのは決して容易なことではない。
原油価格に対する懸念、戦争への不安、テロと伝染病への恐怖、国際統治への信頼感喪失など、いわゆる地政学的・心理的要因はいくらでも挙げることができる。実際、そうした要因が最近の企業景況感と消費者信頼感の低下に一定の役割を果していることは極めて明白である。
しかし、一般の経済論議ではこれらの撹乱要素が大きく取り上げられているにもかかわらず、そうした要素に目を奪われて世界経済の回復を形作ることになるいくつかの重要な経済問題を見逃してはならない。イラクの再建が順調に進み、より安全な世界へと大きく前進すれば明らかにプラス材料となるが、基本的な経済の推進力が回復されない限り、堅調な景気回復はおぼつかない。こうした勢いを取り戻せるかどうかは、OECD諸国がどの程度過去の不均衡(過剰投資、株価高騰、バランスシート・エクスポージャーなど)を払拭しているか、経済政策によってどの程度の後押しが行われているかにかかっている。
先行き不透明感が至るところに漂い、景気が現在低迷しているにもかかわらず、今回の「アウトルック」は、最も可能性の高いシナリオとして、世界経済は、力強さに欠けるものの、徐々に回復していくとの見方を変えていない。再度景気後退に落ち込む可能性も完全には否定できないが、その可能性は依然として低い。
この、緩慢ではあるものの、決して破滅的ではないシナリオは、現在のリスクバランスへの注意深い評価に基づいたものである。最近の地政学的な動きを見ると、最も重大なリスクの源は今や後退しているように思われる。戦争が終結し、イラク油田の安全が確保されたことで、石油危機によって世界経済が完全な景気後退に陥るという脅威は薄れている。ただし、依然として不安定な経済環境が続くという広範な見方が当面は支配的となり、投資と主要耐久消費財への支出の分野では様子見の姿勢が今後も続く可能性がある。
経済面では、これまで景気回復を妨げてきた障害の一部が徐々に取り除かれてきている。特に民間設備投資についてはそうである。米国では、当初の過剰設備がほぼ解消され、投資は落ち着きを取り戻してきているので、成長への大きなマイナス材料は取り除かれている。民間設備投資は今や個人消費からバトンを引き継ぐ準備が整っているのである。欧州では、在庫はおおむね低い水準にあると見られており、景気の仕切り直しに一役買う可能性がある。より一般的に言えば、OECD諸国全体の財政と金融は初期段階の景気回復を後押しする緩めの状態を保っている。
さほど明るくない材料に目を転ずれば、給与所得者が依然として雇用市場悪化への不安を抱えている上、住宅所有者が特に英国と米国では住宅市況悪化に直面する可能性があるだけに、家計需要が加速するにはもうしばらく時間がかかるだろう。
これまでの過剰投資のツケによる弱体化したバランスシートの立て直しも景気回復の足を引っ張る可能性がある。これは、米国と英国ばかりでなく、企業業績が伸び悩み、債務が過去最高水準に達している欧州企業についてもいえることである。過剰レバレッジの際立った例は電気通信セクターに見られる(電気通信セクターについては「アウトルック」の完全版で特に一章を割いて詳細に分析している)。現在の財政難がどれほど深刻なものでも、それを口実にして経済改革や電気通信市場の一層の開放を先送りすべきではない。
電気通信セクターの例に加え、政策当局が直面している難題の一つは、本格的な景気回復の到来を待たずに断固として経済改革を推進していくことである。当局にとっては、景気が再びぐらついた場合には短期的観点から景気後押し策を実施すると同時に、経済主体に長期的な方向感と信頼回復へのガバナンスを示す「両面」作戦が必要とされる。
まずマクロ政策を見ると、財政政策についてはビルト・イン・スタビライザーの利用以外に操作の余地はほとんど残されていないように思われる。OECD全体の公的債務の対GDP比は2003年に3.5%に達する。これほど著しく悪化するのは景気循環による税収の落ち込みによるものであるが、基調的な財政事情の深刻な悪化(立て直しには時間と労力を要する)も反映している。多くの国では人口高齢化に伴う赤字の見込み額が年金・医療保険制度改革の遅れで膨大な規模に達しているだけに、これほど大幅な赤字への転落はなおさら懸念される。実際、幾つかの国は早急に財政再建に着手せざるを得なくなっている。慎重な財政政策運営は安定化政策を行う上でも重要である。長期金利の時期尚早の上昇を回避することにつながるからである。
こうした状況の中、景気回復の舵取り役として最もふさわしいのは金融政策である。現在、米国では金融情勢は現状に見合うものとなっているように思われる一方、目先の成長率が潜在成長率を下回る可能性が強いとともに、コア・インフレも失速しているユーロ圏では大幅に緩和できる状況になっている。日本については、金融セクターの決然たる再構築を進めつつ資金供給をさらに積極化していくことが望ましい。
景気が勢いを取り戻すには、多くの国が経済改革への決意を新たにすることが重要となる。80年代に1人当たりGDPの米国との格差縮小傾向にブレーキがかかり、90年代には第2次大戦後初めてその差が大きくなった欧州の大国と日本は、経済改革を進めていく必要が依然として極めて強い。重点的に改革に取り組むべき分野については「アウトルック」完全版に要約されている。
中期的に潜在成長率を押し上げる改革は、短期的にも、危機的なショックに直面した際の景気の持久力強化につながる可能性が強い。このレポートで述べたように、ここ10年間最も急成長してきた国々が最も容易にショックに耐えている一方、長期的に経済パフォーマンスが最も冴えない国々がここ3年間トレンドから最も急激に逸脱しているというのは単なる偶然ではないかもしれないのである。
長期的な方向感を与えるというのは、多くの国の場合、大胆な成長アジェンダを設定し、実施することを意味する。その目的は、米国のコーポレートガバナンス改善から欧州と日本の雇用・生産性の改善まで様々であろう。構造的な弱点が堅調な景気回復を妨げているドイツでは、労働市場と社会保障制度を中心とする大胆な改革プランについて現在論議されており、このプランが全面的に実施されれば経済の潜在成長率引き上げに資するだろう。
外交的摩擦が生じ、集団的ガバナンスへの信頼感が失われている現在、通商交渉の進展も重要となる。より一般的に言えば、国際経済統合を維持・強化する取り組みは世界の繁栄にとって依然として極めて重要である。「アウトルック」完全版でその骨子が紹介されている最近のOECDの実証研究によれば、規制枠組みを改善すれば外国直接投資を大いに促進できる。安全保障の強化による世界経済システムの保護は確かに重要であるが、資金フローを促進する積極的な措置や関連の知識、ノウハウも極めて重要である。
2003年4月16日
ジャン・フィリップ・コティス
チーフ・エコノミスト
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