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OECDエコノミック・アウトルックNo.76
速報版チーフエコノミスト・コメント


 

2004/11/30


石油価格の乱調にもかかわらず勢いを取り戻す

世界経済は2001年の後退以降散発的な動きを示しており、エコノミストも含め、今や慢性的な地政学的リスクや石油価格・金融市場の突発的な動きに影響されないスムーズで持続的な回復が待望されている。

過去2〜3四半期の経済情勢については、米国は堅調に前進、東アジアはこれまでの急速なペースと比べれば減速、大陸欧州は緩慢な足取りで進むなど、各々が対照的な姿を示しているが、家計部門についてはOECD全域でコンフィデンスを失っているように思われる。この先行き不透明感は広い地域に拡大してきている。この背景には、世界貿易が過去最高の伸びを記録した昨年以降、米国と欧州での企業景況感が歴史的平均をわずかに上回るだけの水準へと低下し、向こう2〜3ヶ月のGDPがトレンド以上のペースで増勢をたどるとの期待感が砕かれてしまったことがある。

これが僅か2ヶ月前であったならば慎重ながらも前向きの評価が可能であったかもしれないが、このような状況の変化によって失望感が生じている。これは主に石油価格の高騰がOECD諸国の実質所得の減少とコンフィデンスの低下につながっているためである。しかし、最近の石油価格の乱調にもかかわらず、世界経済がそう遠くない将来に勢いを取り戻すことは十分に考えられる。財務体質の強化と高収益に下支えされ、北米では企業による設備投資の回復が持続し、欧州でもその本格的な回復が始まる一方、雇用創出が徐々に拡大するとともに金融が引き続き極めて緩和された状態に保たれるという中で、消費者支出も、石油価格がこのところ以前ほどの重圧感を感じない水準へと下落してきている恩恵を受けるであろう。全般的に見て、現時点にあってもOECD諸国の経済が2005〜2006年に再びトレンド以上の伸びを記録することは十分に期待できる。

地域別に見ると、2005〜2006年の世界経済回復の勢いはアジアの継続的な発展の恩恵を受けるだろう。中国経済は、今年前半一旦、望ましい形での減速を見た後第3四半期に加速した。他方、日本は再び輸出の勢いが増して目覚しい復調ぶりを示し、ここ2〜3ヶ月一息ついているものの、回復の裾野は投資、雇用、最終消費へと広がっている。また、2005〜2006年の世界経済の回復は、北米地域の拡大によっても強化されるだろう。しかし、大陸欧州が国内最終需要の顕著な持ち直しを通じて強力な下支え役を果たせるかどうかは依然として明らかではない。

この欧州経済の見通しに関し、今回のOECDアウトルックでは慎重ながらも前向きな評価をしている。2005〜2006年に世界貿易とOECD地域のGDPは加速しないものの、ユーロ圏では国内最終需要が大幅に回復するとOECDでは見ている。したがって、大陸欧州、特にドイツは相対的に高い成長率につながる自律的な勢いを得なければならない。このシナリオが現実のものとなるためには、石油価格と為替レートが若干なりとも安定する必要があり、そうなれば、伝統的に回復力に欠けるユーロ圏が、高い成長率を示している他のOECD諸国に続くことができるようになるだろう。

したがって、対外不均衡が悪化する中でのユーロ高や石油価格の一段の上昇は、他地域にも増して大陸欧州に大きな打撃となる可能性がある。大陸欧州は成長が依然として過度に輸出に依存しているほか、石油高がGDPの高い伸びやエネルギー需要の拡大につながらないからである。

しかし、石油価格の上昇への対応という点で言えば、欧州が他のOECD諸国より殊更に不利ということはないかもしれない。仮に石油ショックが再来しても、ユーロ圏諸国を含めてOECD諸国はかつてほど脆弱ではなくなっているように思われる。まず、GDPに占める割合で見た石油依存度は1970年代以降半減しているので、家計にとっても企業にとっても所得に対する負担は以前と比べてはるかに軽くなっている。さらにより重要なこととして、今ではインフレ期待が低く、非常に安定しているので、石油価格の上昇はこれまでのところ総合インフレ率に影響があるのみで、名目賃金とコアインフレ率はほとんど動いていない。したがって、OECD諸国が1970年代に経験した、賃金と物価が制御不能なほどスパイラル的に上昇し、中央銀行が厳しい「引き締めスタンス」への政策転換を余儀なくされた悪夢のような状況に再度直面するという事態は極めて考えにくい。

そうは言っても、石油価格上昇の影響については、経済主体の受け止め方とエコノミストの考え方は同じではないように思われる。計量経済モデルから導出した推計では生産とインフレはわずかな影響しか受けないということになるが、社会一般の経済論議においては石油価格の変動は重要なテーマであり、それはコンフィデンスに強い影響を与える。

このような状況に鑑み、今回のアウトルックでは石油の経済的分析に特別に一章を割いた。石油の重要性についてよりよく理解するためには、長期的な分析を行う必要がある。一般に「見通し」が重視される傾向が強くなっているので、石油価格の先行き不透明感は、毎月の実際の変動に比べて現在の景気に対してより強く影響する可能性がある。

この点で、OECDの分析によると、最近の石油価格は明らかに長期的な均衡水準を大幅に超えており、OPECの市場支配力が強まることすら示唆している。供給サイド、とりわけOPEC諸国にはまだ需要の増加に応えられるかなりの資源があるし、既存の生産施設の効率を大幅に向上させることも可能であろう。さらに、代替エネルギー源も現在の価格水準なら既に採算がとれる状況になっていると言えるかもしれない。

とは言っても、石油価格が3〜4年前の低い水準にまですぐに下落することにはならないであろう。まずは、地理的・政治的に先行き不透明感が強いことや価格が乱高下していることから、新たに石油生産施設を建設するための投資は控えられる状況にあるので、石油価格が急ピッチで下落することははいかもしれない。現状を鑑みるに、今後、石油価格はある程度下落はするものの、90年代の水準に比べて高いレベルにとどまる見込みである。

このように石油価格が高い水準で推移する状況では、将来の石油価格形成においてはダイナミックに成長する新興経済諸国からの需要が強い役割を果たすことになるだろう。新興経済諸国が重要なのは、世界経済の成長への寄与度が高まっているためばかりでなく、それ以上に、経済活動拡大のための石油需要の割合がOECD諸国平均よりはるかに高いためでもある。実のところ、将来の石油価格水準の決定にとって、米国のみならず新興経済諸国における省エネルギーの一層の進展も決定的に重要になるだろう。

OECD諸国の長期的な持続可能性にとって重要なのは、再生不可能な天然資源を慎重に管理することだけではない。健全な財政も将来世代の福利厚生にとって極めて重要である。これまでのアウトルックで指摘してきた通り、現在の予算案を前提とすればOECDの大半の主要な加盟国においては、構造的赤字の削減の実質的な進展を全く見ないこととなろう。これは年金・保健医療制度改革について困難な議論がかわされ、遅々として進展していない状況を考えると、残念なことである。

もちろん、冷静な民間部門が公的な浪費を向こうに見て、自ら貯蓄努力を強めることが期待されるし、そのような方向に進んでいるという証拠も確かに存在する。これはまさに本エコノミック・アウトルックが、財政政策の長期的な影響についての特別な章において伝えたかったメッセージである。しかし、一般的にいって、民間の貯蓄は政府部門の支出を完全には相殺しないし、このような慎重な対応がとられるかどうかも各々の国や歴史的な状況によって左右されてしまう可能性がある。例えば米国ではこうした対応はほとんど見られない。

結局、財政政策の役割は人口高齢化から生じる財政的圧力を増すことではない。むしろ、財政的圧力を軽減し、それによって、現在進行中の景気回復を活かして、最終的には段階的にせよ突っ込んだ財政経費削減を実施することにある。

2004年11月25日
ジャン-フィリップ・コティス
チーフ・エコノミスト

 

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