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OECD閣僚理事会
「イノベーション:成長と公平へのOECDアジェンダの推進」議長総括 仮訳
2007/5/16
スペインは「イノベーション:成長と公平へのOECDアジェンダの推進」とのテーマを掲げた2007年閣僚理事会の議長国を務めた。
拡大と関与強化
OECDのグローバルな広がり、政策の影響力、関連性をさらに拡大する必要性を認識し、閣僚は「拡大と関与強化」に関する報告書を歓迎した。閣僚は世界経済におけるブラジル、インド、インドネシア、中国、南アフリカの重要性を強調し、これらの国々の政策と活動がいかに世界的影響力を持ち、OECDが処理している問題に影響を及ぼすかに留意した。閣僚は、良好な政策慣行に関するOECDの経験はこれらの国々の関心を引くだろうとも考えた。閣僚は事務総長に対し、関与拡大プロセスを通じてあるいは正式加盟国として、OECDがこれらの主要経済国との協力を強化するよう求めた。
閣僚はチリ、エストニア、イスラエル、ロシア、スロベニアと加盟論議を開始することを決定した。ロシアはそのOECDとの歴史的関係から特例とみなされた。閣僚は、加盟プロセスはこれらの国々の改革アジェンダの助長とその実行や持続可能性の確保に資すると考えた。チリ、エストニア、イスラエル、スロベニアは以前からOECDの活動に積極的に参加しており、OECDの良好な慣行から恩恵を受けている。これらの国々は加盟への意欲を確認している。
閣僚は、OECDにとって戦略的利益を有するその他の一部の国・地域へのOECDの関与強化を支持した。東南アジア諸国は非常にダイナミックで影響力の大きい経済を有しているため、加盟候補国を特定するためにさらに注目していくに値するとみなされた。
閣僚は、OECD拡大の含意を考慮し、財政改革の重要性を強調した。理事会は2008年閣僚理事会までに財政改革に関して合意に達し、OECDの強力かつ持続可能な財政基盤を確保しなければならない。
閣僚は、OECDのアジェンダは、健全な経済政策と良好な統治を通じて平和、安定、繁栄、民主的価値を促進するというOECDの基本的使命を推進するチャンスに満ちているとの認識を示した。閣僚はOECDに対し、―真のパートナーシップが真の成功を達成すると確信し―今後も世界中でOECD創設のビジョンと高い基準を遵守するよう求めた。
加盟国の拡大、したがって機構の強化について討議する中で、G8との関係強化やサービスの提供に関する開発途上国への支援により、OECDの関連性を強化する追加策について示唆された。特に規模の大きな新興経済国との関係に関して、OECDがG8の議長国を支援することにも言及された。
閣僚は、2006年の閣僚理事会の最初のマンデートを実施した際に事務総長が発揮した指導力を賞賛した。
事務総長開会挨拶
事務総長は、2006年閣僚理事会のマンデートの進捗状況について報告した。事務総長は、グローバルな経済問題に関する対話のハブとしての役割を果たすことができる、より包括的な機構への戦略ビジョンの概要を示した。
グローバル化のプロセスは変えられるものではない。そのメリットを最大化し、グローバル化の利益を公平に共有するため、良好な政策を実施しなければならない。OECDには果たすべき重要な役割がある。OECDの分析と政策に関するアドバイスは、ベンチマークの開発における比類のない強みの構築や良好な慣行の提示、ピアレビューを通じた結果の監視などにより、世界経済の形成に寄与している。OECDは良好な慣行の推進や実施の助長へとさらに踏み込む必要がある。OECDは、政治経済学の問題を推進し、成功裏に改革を実施するオプションを提供しようと努力する中で、実施しなかった場合や実施が遅れた場合にはどのような影響が出るかということについて説明する準備をしなければならない。
グローバルな課題に対する協調した対応策の策定能力を強化するため、OECDは積極性、開放性、代表性を強めなければならない。OECDはこれまで以上に多様性への感応度を高め、成長と開発につながる様々な道筋に対する理解の幅を広げなければならない。OECDは、グローバル化のプロセスでますます大きな役割を果たしている新興経済国への関与を深めなければならない。また、OECDは幅広い主体や機関に働きかけ、コネクションを強化しなければならない。
閣僚は、OECDの創設につながったマーシャルプラン60周年に留意し、グローバルレベルでの成功をもたらすパートナーシップを構築するという伝統を、今後も継続していくというOECDの意欲を表明した。閣僚はOECDに対し、グローバル化のメリットのより広範な共有に資する政策の特定や、そのようなメリットの周知においてさらに大きな役割を果たすよう求めた。
グローバル化、成長、公平
閣僚は、グローバル化は経済成長の主要な原動力であるとの点で意見が一致した。OECD諸国は、開放度の高い国の方が開放度の低い国より往々にして高い成長を達成している。人口の多い非OECD諸国の国際経済への統合強化は、繁栄の促進と貧困の削減に寄与している。
閣僚は、グローバル化から難しい調整の問題が生じる可能性を認めた。開放経済は、新しいチャンスが生まれるセクターでは雇用の創出を伴うが、衰退しているセクターや職種では雇用の喪失を伴う。雇用不安―特に失業率の高い国の―その他の恐怖心がグローバルな統合の強化から生じているのはこのためかもしれない。閣僚は、多くの国がグローバル化のプロセスや、グローバル化がもたらすメリットを引き続き傍観しているとの認識も示した。
万人へのグローバル化のメリットを最大化し、貿易と投資の自由化への社会的支持を維持するとともに、全ての経済主体がグローバル化によってもたらされるチャンスの恩恵を受けられる環境を創出するには、これらの懸念への効果的な対策を提供することが極めて重要である。訓練や生涯学習など、人的資本やスキルへの投資は、様々な国や市民がイノベーションにより牽引される環境で、調整することや努力することをサポートする上で極めて重要である。
閣僚は、健全なデータと分析を踏まえて問題の真の性質について国民に情報提供することが急務であるとの点で意見が一致した。閣僚は、グローバル化のメリットを評価し、周知していくことが重要であると強調した。閣僚は、OECDは学際的観点から構造的な経済社会政策上の問題に取り組み、最良の慣行を特定・共有する上での比較優位を活用し、この任務で閣僚を支援できる万全の態勢を整えているとの点で意見が一致した。
閣僚は、グローバル化の課題とチャンスに取り組んできた国家的な経験のいくつかを共有した。閣僚は、国家的な政策や機関の質がグローバル化の現実的インパクトに影響を及ぼすことに留意した。閣僚は、「OECD雇用戦略改訂版」はグローバル化から得られるネットのメリットを高めるための製品市場改革と労働市場改革を包含する重要なベンチマークを提供するとともに、労働者に雇用と所得に関する適切な保障も提供するとの認識を示した。閣僚は、この面における良好なパフォーマンスを達成・持続する単一の処方箋はないことも強調した。
OECDフォーラムの参加者ならびに閣僚理事会事務局の諮問機関であるBIAC(経済産業諮問委員会)およびTUAC(労働組合諮問委員会)はこれらの懸念の多くに同感した。フォーラムの討議では、保健医療、エネルギー、水、公共サービスなどの分野におけるイノベーションの重要性が強調された。恐るべき脅威と変革やチャンスへの原動力というグローバル化に関する2つの対照的な見方も浮き彫りにされた。BIACおよびTUACもグローバル化のプロセスが持つこの2つの側面を強調し、生活水準を引き上げる可能性としばしばグローバル化に伴う調整コストの両者を力説した。イノベーションを奨励し、人的資本の開発を助長する必要性についても意見は一致した。
現在の経済情勢
閣僚はマクロ経済の見通しについて討議した。閣僚は、大陸欧州のダイナミックな景気回復と失業率の低下、アジアにおける景気拡大のモメンタム持続を歓迎した。閣僚は、米国の景気減速は主に住宅市場の調整を反映したものであり、それが経済の他部門に波及しているとは思われないということに留意した。エネルギー価格、ヘッジファンドの役割、ある種の資産のバリュエーションが高まっていること、米国の対外赤字はここに来て減少しているにもかかわらず経常収支不均衡が進展していることなどを懸念する声が出た。
閣僚は、グローバル化のデフレ効果にもかかわらず、一部のOECD諸国では、エネルギー価格の上昇や需給ギャップ縮小の結果として、インフレが警戒水準に近づいているか、いくぶん警戒水準に入っていることに留意した。主な例外は日本で、持続的な景気拡大にもかかわらずデフレ脱却のペースは緩慢である。財政面に関して、閣僚は、特に人口の高齢化に伴い支出圧力が強まっていることを考えると、歳入が増えているこの機を捉えて財政緊縮に取り組む必要があると強調した。
閣僚はIEA(国際エネルギー機関)閣僚理事会の結果に留意した。
イノベーションと成長
閣僚は、イノベーションのパフォーマンスは競争力、生産性、国の進歩の極めて重要な決定要因であり、気候変動や持続可能な開発などのグローバルな課題に取り組む上で重要な鍵になるという点で意見が一致した。
一部のOECD地域で生産性が伸びていない、あるいはモメンタムを失っている状況から、閣僚は、製品市場と労働市場の一層の開放と統合を通じてイノベーションへの枠組み条件を改善する必要があるという点で意見が一致した。閣僚はイノベーションの分野横断的性格を強調し、特にスキルや研究者の供給を確保する上での教育制度の重要性や、公共投資とともに民間のイノベーション投資の拡大を促進する必要性に留意した。閣僚はイノベーションが環境とリンクしていることも強調し、エコイノベーションは各国による環境問題への取り組みに資し得ることに留意した。閣僚は、イノベーションのコンセプトは技術の次元と技術以外の次元の両者を包含する幅広いものであることに留意した。また、知的財産権の侵害、特に模造品や海賊版との闘いを継続しなければならないこと、同時に、知的財産政策が今後もイノベーションを奨励し、知識の普及を助長するようにするためには知識や革新的な製品・プロセスへのオープンアクセスを促進するツールやネットワークが必要であることに留意した。
閣僚は「バリューチェーンの強化―グローバル経済における競争力の維持と企業向けサービスセクターにおけるグローバル化とイノベーション」と題する調査研究を歓迎した。閣僚はグローバル経済インフラの基本的要素としての情報通信技術(ICT)の役割に留意し、「インターネット経済の未来に関する閣僚会合」を2008年6月にソウル(韓国)で開く計画を歓迎した。
OECDイノベーション戦略
閣僚は、イノベーションのパフォーマンスとその成長への貢献を強化するためには戦略的で包括的な政府横断的政策アプローチが必要であると結論した。閣僚はイノベーションの分野におけるOECDの質の高い貢献を認め、OECDがこの分野の活動を深化させるよう要求した。閣僚は、OECD諸国と非OECD諸国の政策立案に重要な貢献をなし得る、「OECD雇用戦略」に沿った「OECDイノベーション戦略」の作成計画を歓迎した。この戦略は、エビデンスベースの分析とベンチマーキング、対話とレビューのための枠組み、イノベーションと経済パフォーマンスの繋がりに関する新指標、イノベーションに優しい事業環境へのイニシアティブ、最良の慣行と政策勧告の策定などをめぐって作成される。
この戦略はイノベーション、起業家精神、より幅広い事業環境に関するOECDの関連の活動を利用することができる。閣僚は特に、環境や健康の分野、イノベーションのグローバル化、イノベーション政策の評価、国別分析など、グローバルな課題に取り組むためにイノベーションに関する分野横断的活動を取り入れることを歓迎した。閣僚はOECDに対し、イノベーションのサービスセクターへの影響について調査するよう要請した。OECDは、新しいさらに開かれたイノベーションへの事業環境の文脈における現行の知的財産権制度の働きについて調査し、イノベーションへの刺激と知識へのアクセス提供の間で適切なバランスをとるための方法を提示することもできる。ソフトウエアセクターの、イノベーションに関するプロジェクトに着手する提案は、この取り組みに対する有益な貢献として歓迎された。
気候変動
閣僚は、気候変動はOECD諸国にとっても非OECD諸国にとっても大きな課題であり、重大な気候変動がもたらすかもしれない甚大な人的・経済的コストを回避するためには、緊急の政策行動が必要であるとの認識を示した。これまでのOECDの分析が示しているように、経済開発への最小のコストで気候変動の緩和と気候変動への適応を可能にするには、この分野で適切な政策を実施することが重要である。閣僚はOECDとIEAに対し、気候変動に取り組む環境的にも経済的にも効率的な枠組みの構築に資する更なる情報などの提供を期待している。今後も行動のコストを低く抑えるため、この枠組みには大量の温室効果ガス排出者を含める必要がある。この枠組みは、民間の投資家に、排出量削減への長期的な投資を行うための予測可能な環境を提供するとともに、低炭素経済への移行をサポートする側面支援的措置も提供するよう、広範な政策手段を統合すべきである。
改革の政治経済学
議長は、スペインにおける改革の実施や年金改革と地方財政制度改革という2つの事例を引き、関連の困難に対する自国の取り組みの経験を伝えた。オーストラリア、オーストリア、ポルトガルも改革の政治経済学に関する自国の経験を伝えた。閣僚は、改革が痛みを伴わないことはめったにないが、何もしない場合のコストは大きいということに留意した。したがって、主な課題は改革の必要性を効果的に国民に伝えることである。各国は、成功についても失敗についても、改革に関する互いの経験から大いに学ばなければならない。閣僚は調整への支援の重要性や改革プロセスの間に、経済成長と雇用創出のための条件を維持する必要性を強調した。また、より広範な利害関係者に働きかけ、社会的パートナーを改革への取り組みに関与させる必要性も強調した。
閣僚は、OECDは質の高いエビデンスベースの分析や国際的に比較可能なデータを通じて改革の設計、実施、政治経済学的側面に貢献することが重要であると強調した。OECDは国別審査やテーマ別審査に含まれている豊富な経験に基づいて、良好な慣行を特定できる万全の態勢を整えている。閣僚はOECDに対し、改革の政治経済学に関する活動を強化するとともに、各国政府の改革への取り組みに対する支援を強めるよう求めた。
貿易
OECDの活動が明瞭に示しているように、ドーハ開発アジェンダは、貿易の一層の開放が世界経済の成長に貢献するとともに、特に開発途上国の経済見通しを改善する歓迎すべき機会を提供する。閣僚はこの機会を活用する決意を表明したが、この重大時期に必要とされる成果を挙げることが急務であることを意識している。ドーハ交渉の妥結は、多角的貿易体制を承認し、貿易紛争を回避しつつ、互いに合意したルールと協調的な行動に基づいてグローバル経済のガバナンスと持続可能な成長に貢献する。閣僚は、貿易が成長の原動力として機能できるよう、開発途上国向け貿易を援助することが重要であると強調した。
ドーハ・ラウンドの妥結後も、開かれたグローバルな貿易体制には大きな課題が残される。貿易自由化のメリットとコストや、より開かれた貿易環境への調整を助長する効果的な政策対応に関する理解をこれまで以上に広げる必要がある。急成長しているサービスセクターの効果的な自由化策を設計するためには新たな情報と画期的な分析が必要となる。規制や基準などの分野で貿易への新たな障害を作り出すことなく国内政策目標を達成する方策を見出すことがますます重要となる。二国間/地域的/特恵的取り決めが多角的体制を補完するようにするための最善策に関する情報が必要となる。閣僚は、こうした課題とチャンスへの最善の対応策に関するOECDの分析とアドバイスに期待すると指摘した。
閣僚は、OECDとIEAはバイオ燃料の利用増促進などバイオ燃料の生産と利用に関する問題について活動を拡大すべきだとするスウェーデンとオランダの提案を歓迎した。この調査研究は2008年OECD閣僚理事会までに提出される。アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、香港、インド、ロシア、南アフリカの代表はこのセッションの討議に積極的に参加し、充実した討議内容となった。
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