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OECDエコノミック・アウトルック中間評価
OECDチーフエコノミスト代行 ヨルゲン・エルメスコフ
2008/3/20
1.このプレスブリーフィングは金融市場の動揺が続いている中で行われている。圧力は新たな市場や金融機関へと広がり、震源地である米国のサブプライム住宅ローンとその派生商品の枠を越えるとともに、リスクに対する慎重な姿勢とリプライシングの一般化につながっている。実体経済に関しては、目先のグローバルな成長見通しは2007年12月の「OECDエコノミック・アウトルック」での予測より弱くなっている。三つの要因が―米国を中心に他の多くのOECD諸国でも―働いており、その影響がすぐに薄れる可能性はない。
実体経済が金融混乱の影響を受けている。金融市場の様々なセグメントで新規発行が途絶え、一部で再間接金融化が生じているほか、スプレッドが拡大し、銀行の貸出基準が厳格化されている。需要は大きな影響を受ける可能性が高いが、その程度を予測することは難しい。さらに、米国を中心とする株価と住宅価格の下落も、ある程度のタイムラグを伴って、需要を押し下げている。
グローバルな住宅サイクルが反転している。米国では過去2年間、住宅投資低迷の直接的影響が年間の実質GDP成長率を約1ポイント押し下げているが、今年も同じであろう。
ユーロ圏と、程度はそれほどでもないものの日本でも、通貨高により多少は相殺されているとはいえ、家計の実質所得がエネルギー価格と食料価格の高騰により締め上げられている。
2.以上を背景に、2008年1月と2月の雇用者数の減少など直近のデータフローをすべて取り込んだ短期の予測モデルは、今では米経済が、完全に縮小しているとは言わないまでも、基本的に横ばいで推移していることを示唆している。景気後退(リセッション)を宣言するのはまだ早いかもしれないが、成長ペースは潜在成長率を大幅に下回っており、GDPギャップが急速に拡大している。ユーロ圏は米国ほど急速に失速しているわけではない。しかし、輸出はこれまでのところユーロ高によく持ちこたえているように思えるものの、成長率が当面、潜在成長率の低位にとどまるのは必至の情勢である。日本も、四半期の国民経済計算はブレやすく、しばしば大幅に修正されるが、なお好況を保っている近隣アジア諸国からの下支えにもかかわらず、総じて足元の成長ペースは鈍化している模様である。
3.インフレに関しては、多くの国で総合指数、コア指数とも安心できる水準を大幅に上回っており、一部の指標についてはインフレ期待がじりじりと上昇している。先月の米国の総合CPI(消費者物価指数)上昇率は4%であったが、最新のコアPCE(個人消費支出)価格指数が2.2%の上昇となったことはエネルギー価格と食品価格の上昇が他の物価へと波及していることを示唆している。ユーロ圏では、2008年2月の総合HICP(消費者物価指数)上昇率が3.3%に達する一方、コアインフレ上昇率もじわじわと上昇し続けており、2.5%に迫っている。この点で日本は際立っており、総合インフレ上昇率こそ0.8%をつけているものの、コア指数―食品価格とエネルギー価格を除く―は依然としてマイナスである。
4.マクロ経済政策がどのように対応すべきかについては、短期より長いスパンの景気とインフレの見通しやいくつかのリスクのバランスによる。第一に、原油その他の一次産品価格は当面、景気減速にもかかわらず、すでに高くなっている水準からさらに上昇し続ける可能性が高い。第二に、金融市場の動揺がどの程度大きくなるかということや、銀行と投資家が慎重な姿勢に転じたことや資本基盤を強化する必要に迫れていることがどの程度、どのくらいの期間にわたり景気の足を引っ張るか、はっきりしない。第三に、インフレとGDPの短期的なトレードオフ関係は近年変化している可能性があり、成長の鈍化がインフレ圧力をどの程度緩和するかについて幾分疑問を投げかけている。
5.このような観点から、刺激策をとる必要性は欧州や日本より米国のほうが強く、米国の金融政策当局、財政政策当局ともすでに強力な行動に出ている。これに対し、ユーロ圏では、景気とインフレの目先の見通しは刺激策をとる必要性を示しておらず、財政のビルトインスタビライザーが他の地域より強力な下支えを提供するだろう。日本では一段の鈍化に対応する余地が限られている。
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