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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.216


 OECD Observer 日本語版

岐路に立つスロバキア

MAITLAND MACFARLAN and JOAQUIM OLIVEIRA MARTINS
ECONOMICS DEPARTMENT

 強力な成長期を経てスロバキア経済は転換点にさしかかっている。マクロ経済的不均衡はもはや維持不可能で,いまやもっと安定的な開発戦略が必要である。このような戦略を策定し,実行することが新政権の直面する課題となる。

 改革とマクロ経済的安定の統一的なアプローチ,これが最近のOECD Economic Survey of the Slovak Republicの中心的な勧告である(1)。1998年9月の議会選挙で生まれた新政権は,これに合意し,この線に沿って行動する決意を示している。特に,1999年1月に承認されたその調整パッケージの核心的要素は大幅な財政的引き締めである。1999年の目標は一般政府財政赤字をGDPの2%の水準に引き下げることである。1998年度の赤字は5%以上だった。政府は,公共インフラストラクチャー投資の削減と,政府職員の賃金凍結,そして物品税の引き上げによってこれを達成しようとしている。

 新政府のプログラム,国家が所有している様々な銀行や企業の再編成を加速しようとしている。これは歓迎すべきことである。銀行資産合計のおよそ40%を保有する2大国営銀行は,多額の不良債権を抱え,資本再編成さらには民営化が絶対的に必要とされている。資産合計の約6%を保有するもう一つの銀行である。投資開発銀行(IRB)は,1997年に倒産して国立中央銀行の直接管理下に置かれた。1998年において,全銀行の債権額の5分の1以上は,基準に満たないものか,疑問があるものないし貸倒れと分類されるものだった。大部分が3番目に属している。銀行は不良債権に対する相当額の準備金を積み立てているが,担保の質については不安がある。

 銀行セクターの再編成は,どのようなアプローチでなされるにせよ,その公共財政に対する影響が最初から明らかにされなければならない。そして,いずれにせよ行動が遅れることがあってはならない。経済の健康は健全な銀行システムにかかっているからである。資本構成の変更と民営化の組み合わせが進むべき道であることが明らかであり,外国の戦略的投資家の参加を促進することは,スロバキアには欠けている資本と経験の流入をもたらす。銀行の民営化プロセスへ外国の投資家が参加することの重要性を,新政権の経済プログラムが認めていることは歓迎すべき事実である。実際,過去には銀行を企業が民営化するという提案があった。企業自身が銀行の主要債務者である以上,これは金融的規律の一層の弛緩の危険性をもたらしかねない措置であった。

 厳密にどの程度の企業再編が必要とされるか述べるのは難しい。1990年代初め以降,一定の前進があったことは確かである。当時は,周囲の経済活動との繋がりをほとんどもたず,軍需品と基礎的中間財の生産に専門化していた巨大工業コングロマリットが産業界を支配していた。その後,多数の企業が,生産性や製品そして市場の面で大規模な調整過程を経てきた。再編成が大きく進行している企業の例もいくつか存在する。

 しかし,全体としてみれば,企業の財政的困難はいまも明らかである。ほとんどの指標が,利益の低迷,流動性の低下,負債の増加を示している。負債の増加は銀行ローン(これは一般に返済不能に陥っている)だけではない。ほかの企業に対する債務や税金の延滞納も増えている。中核的企業もまた現実に困難に陥っている。これらの企業は,再編成に向けてこれから最初の第一歩を踏み出さなければならない。その代表的な例が,地域の中心的な雇用者となっている企業である。その再編成は社会的な問題のために遅れている。特に代わりとなる雇用先の少ない地域では,労働力を削減することは困難である。このような問題を抱えた大企業は,戦略企業法やいわゆる活性化法といった措置による特別の保護が認められている。この後者は融資に対する非現実的な期待を生み出して,債務状態を更に悪化させかねなかった。従って新政権がこれを廃止したのは賢明だった。

 スロバキアではガスや電力会社などの自然独占や主要金融機関を含む「戦略的」企業の国有が続いていることが問題とされなければならない。価格を人為的に低く設定して,あるいは支払い遅延を認めてほかの企業に財政的便宜を図ることによって,これら大企業の一部は債務連鎖の最初の環となっていて,このために財政規律の低下の主要因となっている。新政府の経済プログラムによれば,国有企業に生じているこうした歪みのいくつかは価格規制を廃止することによって除去されるはずである。価格規制の廃止によって,かつては多額の補助金で支えられていた電力料金が大幅に上昇している。


長期的収縮の危険性

 新政府が直面する主要な困難は,構造的改革が不十分で,輸出中心の多面的なセクターの登場を阻害し,ときとして輸入依存度の高い非効率的な企業の存続を許してしまうことである。多額の財政赤字は新規活動への投資を制限し,経済の供給面における弱さを更に露呈させる。

 経済の減速は調整プロセスの一部とみなされるべきである。減速の規模と持続期間は国際的,国内的要因の両方によって決まる。金融的収縮が配慮されなければならない。外部金融の制約も成長の阻害要因となる。世界経済の需要の減退もスロバキアの輸出を妨げる。国内市場では,勢いを欠く賃金成長率や通貨の切り下げ,公共料金の上昇などの結果として実質所得は低下するであろう。明らかに,貿易と投資の流れが強力に回復する兆しはない。

 それゆえに,長期に亘る収縮の危険性が認識されなければならない。この危険は,根本的な構造改革に向けた政府の努力と新しい政策的枠組みの全体的な持続可能性の妨げとなる。それにもかかわらず,改革プログラムの確実な前進は投資家の信頼性の強化に貢献し,外国資本の流入を助けるはずである。これは,外部金融の制約を緩和し,再編成に必要な資金を提供する。そして,政府がその望む透明性の実現と改革に必要な政策の実行に成功すれば,スロバキアが確立された市場経済諸国のグループに加入できる可能性は更に大きくなる。


(1) Slovakia Country Surveyは,OECDの非加盟諸国プログラムの基本的な一部として,非加盟国協力センター(CCNM)の援助を得て作成された。

 

強力な成長は長続きしない

 移行プロセスの当初,スロバキア経済の構造はことのほか硬直的に見えた。従って,近年のマクロ経済的パフォーマンスの好調は意外だった。最初は輸出に促進されて1994年に実質GDPの成長が始まり,年率約6%の好調を維持し,インフレ率は大幅に低下した。1996年には成長の重点は輸出主導から内需主導に移行した。そのおもな原因は,財政緩和と公共および民間の大規模な投資プロジェクトが始動したことにあった。

 こうしたことの直接的な結果が経常収支赤字の爆発的拡大である。かつては黒字だった経常収支は,1996年以降は平均して対GDP比10%の赤字となった。スロバキアはこの赤字を多額の国際資金の借り入れによって埋め合わせることができた。これは経済の勢いを持続させたが,コストを上昇させた。独立的な中央銀行は,こうした不均衡の拡大と1997年の国際的環境の悪化に対して,通貨政策の引き締めと内需拡大の減速化によって対応した。それはまた,ドイツマルクとドルの通貨バスケットに対する固定為替レート体制の防衛をみずからの任務とした。この体制は1998年10月に放棄され,スロバキアの通貨コルナは変動相場制に移行した。

 制約的な通貨政策の結果である実質金利の上昇の負担は,企業と財政の再編成の遅れによって更に重くなった。企業セクターの財務状況は大幅に悪化した。それは支払い遅延と不良債権に表現されていた。税金の延滞納も増大して,国庫の歳入不足が生じ,財政赤字を増大させた。財政赤字は,1995年にはゼロだったが,ピーク時の1998年には対GDP比5%以上に達した。

 この2年間のスロバキア経済の主要な問題は,成長の鈍化というよりも過剰な成長にあった。経済は事実上,持続不可能な道に入り込んでいた。中央銀行は適切に行動して,緊縮通貨政策を維持し,通貨は変動相場制になった。中央銀行によるこのような行動と財政的規律の改善の見込みがなければ,急激で遙かに苦痛の大きい是正策がほとんど不可避となったであろう。

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