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ギリシャは2001年にユーロ圏に参加する候補国の一つである。加盟後の経済通貨同盟内部でうまくやってゆくためには,その公共セクター企業の改革努力を強化しなければならない。そのために,一層の競争を導入し,経営を改善することが必要である。
ギリシャ経済は1990年代の初め以降,目ざましい前進を遂げてきた。インフレ率は急激に低下し,財政赤字も激減した。最近になって成長率は加速を始め,1997年には実質で3%を超えた。こうした強力な前進の上に立って,ギリシャは2001年にユーロ圏に加盟することを目標に据えた。
それにもかかわらず,前途に大きな課題が待ちかまえている。構造改革に関し,ギリシャはほかの殆どのOECD諸国より遅れている。公企業の場合がその最も顕著な例である。
ほかのOECD諸国の経験は,公的独占の再編成と競争導入が財とサービスの質を向上させ,多くの場合価格をも引き下げることを示している。OECDの計算によれば,ギリシャの公企業の思いきった改革は実質GDPを一挙に10%も増大させる。これは雇用の拡大を促進する。それはまた財政と公的債務の負担軽減の助けとなる。公企業が毎年GDPの3.5%にも相当する国家予算を要求し,一般政府の債務が対GDP比100%を超えるギリシャのような国にとっては,このことは極めて重要である。
ギリシャ政府は1996年に公企業の再編成プログラムを開始した。競争の強化が絶対的に必要とされていたが,再編成の重点は経営の改善に置かれた。この分野での政府の努力は成果を上げているが,ギリシャが共通通貨圏に入ったあとも好調を維持するためには,まだ多くのことがなされなければならない。
パフォーマンスの悪さ
ギリシャの公企業のパフォーマンスが悪いのは多くの要因による。こういった要因は,1990年代初めまで雇用創出のために増幅されてきた――普通は選挙の時期に。その財務的パフォーマンスは,価格抑制策とコスト上昇に悩まされてきた。今日,公企業は過剰人員を抱え,その生産性はほかのOECD諸国よりも低い。実質賃金は大幅に上昇しており,生産性や民間セクターの賃金成長率を超えている。1997年までに,公企業従業員の平均賃金は民間製造業のそれを30%も上回っていた。
価格政策もまた,高コストやテクノロジーの遅れ,社会的義務などを反映して,事業経営の基準から外れていることが多い。いくつかの公共サービスの価格は,全住民による利用を保証するために,あるいはインフレを封じ込めるために,しばしば凍結された。それにもかかわらず,ある種のサービスの価格,特に電話や電気の料金はほかのOECD諸国よりも高い。これは,競争が制限されており,技術的水準が低いためである。
テクノロジー・ギャップを埋める
ギリシャとEUの隣国とのあいだには深いテクノロジー・ギャップが存在する。非効率的なテクノロジーと装置が公企業のパフォーマンスに影響している。例えば,国立電気通信会社OTEの運営するサービスはOECD地域で最もデジタル化が遅れている。電力公社の発電能力は,ピーク時の負荷需要を安全に満たすにはほど遠い。
1990年代初め以降,主としてEUの基金から資金を調達して多額の投資が進められてきた。1994年から99年までのあいだに主要な公企業は60億Ecu,ギリシャのGDPの6%相当を受け取ることになっている。
ギリシャの公企業は,収入に見合わない過剰なサービスを提供している。ほとんどの企業が個々の事業について独立の勘定を保有していないために,サービスのコストを正確に評価することは困難である。一般的に言って,透明な会計慣行の不在は,改革の前進,特にコスト削減における前進の重要な障害となる。
第一歩:経営改善を最優先に
経営改善が政府の改革政策における優先目標である。特定の戦略を念頭に,新しい経営者が雇い入れられている。それぞれの公企業は営業計画を作成しなければならない。その目的の一つは自発的退職を通じた減員によって労働コストを削減することである。これは積極的な施策である。これを全面的に成功させるためには,新しい経営チームは政策的問題,特に雇用,賃金,契約締結の分野で,かつての硬直的な介入主義的なアプローチに代わって十分な独立性を与えられなければならない。
ギリシャにとって有利な条件の一つは,その改革の実行にあたってすでに同じ道を進んでいるほかの諸国の経験を活用できることである。そこから得られる一つの教訓は,巧みに構想された規制枠組みが不可欠ということである。それは市場への新規参入を促進し,品質を高め,価格を引き下げる助けとなる。1992年の航空事業と移動電話市場の部分的な自由化がすでにこのことを実証している。民間企業2社が移動電話免許を交付され,それ以前よりも広範囲のサービスが実現された。国内航空市場では,自由化の結果,いくつかの国内民間航空会社による激しい価格競争が始まった。
こうした成功にもかかわらず,中枢産業である航空事業と電気通信では一層の競争が必要とされている。EU市場が更に開放され,テクノロジーが前進するにつれ,これら2つのセクターの改革圧力は急速に高まるだろう。
しかし,国営航空会社オリンピック航空にとっては,問題はまったく単純で,いかにして生き残るかが問題なのである。1998年に承認された再編成計画は十分に野心的であるとはいえず,すでにいくつかの問題が生じている。同社はあらゆる分野でやり方を改めなければならない。主要競争相手の半分近くにすぎない生産性を引き上げるために,1996年から97年にかけて50%以上も急上昇した労働コストを削減することが必要である。同社はまた,ほとんどが赤字となっている長距離路線から撤収して,中核的サービスに集中しなければならない。ほかの航空会社との戦略的提携によって,その中距離路線,特に中東路線の優越を強化することが可能になる。
国立電気通信公社OTEの場合はいくらか事情が異なる。OTEは,その高コスト体質にもかかわらずギリシャで最も収益性の高い企業である。実際には,同社の多大な利益はそのほとんどを電話料金の高さ,特に長距離および移動通信の料金の高さに負っている。それは,市場の急速な拡大によって維持することができた。基礎的な電話市場における競争導入は2001年まで延期された。それでもそのネットワークは,電話市場がすでに開放されているドイツやスペインのような諸国の水準に近いところまで発展している。ギリシャで新しい営業免許が認められれば,価格が低下することは確実である。
電力:公的独占
特に注目されなければならないギリシャのもう一つの公企業は,最も重要な位置を占める電力会社である。この分野では競争は存在しないに等しい。公的独占が圧倒的であり,サービスのあらゆる段階を支配している。電力公社DHEが電力供給と発電能力の98%を占めている。高圧送電網と低圧配電網をその支配下に置いている。同社の市場での優勢は,EUのほかの地域から切り離されているというギリシャの地理的な条件によって更に強化されている。DEHはまた,燃料と公的資金の優先的使用を認められている。電力,天然ガス,石油の各セクター間の財政的利害の共同性が,明らかにこれらセクターの企業間の競争を妨げている。
ギリシャ政府は,ブリュッセルの指令に従ってDEHの会計を「分離」することを計画しているが,その事業を法的に独立した企業体に分割することは予定されていない。この措置の肯定的な側面は公社会計の透明性が高まることである。やはりブリュッセルの指示に従って発電市場が部分的に開放される。DEHは依然として競争上の優位を維持していて,このことが新規参入を妨げているが,民間投資を促進する特別の努力によって,公的資金に依存することなしに,急速に拡大する需要により適切に応えることが可能になろう。
コストのかからない解決策
価格抑制は,最も恵まれない社会層に一部公共サービスを利用可能にすることによって,非常に重要な社会的目標を達成することができる。しかしこのような目標は,もっと対象を限定した,もっとコストのかからない方法でも実現することができる。例えば,鉄道や都市交通サービスでは,料金を経営コストに合わせて調整すると同時に,例えば給付金の形で最貧困層に直接的移転を行うことが可能である。もう一つの方法は,特定の路線について入札を行い,最も安い応札者にその営業を認めることである。
ギリシャ政府が進めている再編成政策は強化され,加速されるべきであるが,導入できる競争のタイプに応じて各セクター間の相違が考慮されなければならない。このことは,公正なやり方を保証するために,独立した規制機関が設立されるべきことを意味する。一方,公企業改革は,中期的には経済の成長能力を強化するとはいえ,過剰人員を前提とすれば,短期的には失業の増大をもたらす可能性がある。変化に伴うこのような社会的コストを最小にするためには,再編成の結果として生じる失業者を保護するメカニズムを強化すると同時に,雇用展望全体を改善するための労働市場改革を強力に前進させることが必要である。
このような改革は極めて重要な課題である。ギリシャがその実現に成功すれば,経済通貨同盟内部で他国に対抗してゆけるだけの経済的な強さを得ることができよう。
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