|
遺伝子組換え食品とそれらが環境に及ぼす影響の問題は,年頭から欧州のメディアで大きく取り上げられている。『OECD
Observer』は,JULIE HILLに対し,このような関心の高まりの理由について説明を求めた。
問:遺伝子組換え作物には問題があるのか。
答:その質問に答えるのは非常に難しく,それが問題の一部なのだ。実際我々が扱っているのは全く新しいこと, つまり時には「伝統的」植物育種技術では不可能な方法で,種から種へ遺伝子を移動させることができるということだ。ということは,食品の消費者として,また環境において,我々はこれまでに遭遇したことのない遺伝子の組み合わせに直面していることを意味する。もちろん我々はこれらの新商品を様々な方法でテストすることができる。人間にとっての毒性やアレルギー性を分析し,管理された状況でその生育と習性をモニターした上で,それらをより広い環境に放つようにする。しかし遺伝子操作で可能になる程度まで自然を変えることの長期的結果を予測する確実な方法はない。Green
Allianceは,ある特定の商品から問題が生じる可能性は少ないことを認めているが,わずかな影響でも蓄積すれば,環境や健康に影響が生じるかもしれず,これに対処することは難しいかもしれないという点に懸念を抱いている。
問:環境にどのような問題が生じると思うか。
答:導入された遺伝子が作物からその作物の野生種に「飛び移り」,その結果生じた雑種が新しい遺伝子によってその親よりもたくましく雑草のように繁茂するのではないかという懸念を表すために,しばしば「スーパーウイード」という表現が用いられている。その可能性はあるが,欧州で栽培されているすべての作物に雑種繁殖できる野生種があるわけではないという点に留意することが重要である。例えば,セイヨウアブラナには野生種があるが,小麦やトウモロコシには野生種がない。また望ましくない影響が現れるには長い時間――おそらく何十年もの時間――がかかるだろう。それよりも可能性が高く直ちに環境に影響を及ぼすのは,遺伝子操作により可能となる作物/化学薬品の組み合わせである。例えば,除草剤に耐性をもつ作物は,特定の除草剤をより広く使用することを可能にするだろう。もしその結果,より分解しにくい有毒な化学薬品の使用が不要になるならば,これは環境にとってプラスとなる。しかしもしその結果,畑に雑草が少なくなり,昆虫,小哺乳動物,鳥類にとってえさが少なくなるのであれば,それは環境にとってマイナスとなる。このためGreen
Allianceは,現在欧州の規則に基づいて行われている遺伝子組換え作物の範囲の狭いリスク評価を行うよりも,広範な「環境調査」を行うべきであると常に主張してきた。
問:遺伝子組換え作物が環境にとって利益になるかもしれないということを認めるか。
答:認める。しかしデータを見る必要がある。遺伝子組換え技術を開発している企業がその主張を真剣に認めてもらいたいと考えるならば,リスクについて規制当局に要求されている分析と同じように,利益についても厳密な分析を行わなければならない。またリスクと利益に関するデータを外部の機関に評価してもらうことも役立つだろう。
問:欧州の市民はなぜアメリカの市民よりも遺伝子組換え食品について不安をいだいているのだろうか。
答:確答するのは難しいが,いくつかの要素を示唆することができる。アメリカの規制当局の方がオープンで信頼されているように思われる。欧州では,狂牛病危機により,科学アドバイザーとその雇用主である政治家の能力とモチベーションに対する国民の信頼が損なわれた。環境面についていえば,アメリカでは農地と自然保護区域がはっきりと分離されており,しかもその両方が広大である。欧州の過密諸国では,環境と野生生物に残された地域が農地と切り離せない状態にあるため,農業における趨勢が重大な問題となる。イギリスのある政府諮問機関が表明しているように,我々は,すでに集約農業の圧力を受けている野生生物が遺伝子組換え作物によってそれ以上の打撃を受けないようにしたいと考えている。もう一つの小さな相違点は,大半の欧州諸国では生物の多様性に関する条約を批准しているが,アメリカはこれを批准していないということである。
問:OECDなどの組織は今後何をすべきなのか。
答:OECD諸国は,遺伝子組換え作物が健康や環境に及ぼす影響について国民が不安を抱いているのはもっともなことであるという事実を認めるべきである。OECD諸国は,できれば自国の専門家を投入することにより,遺伝子組換え作物について包括的環境調査を行うという原則を支持すべきである。OECD諸国は,異なる規制方法の調整にあまり重点をおくのではなく,環境保護を確実にするために特定の措置を講ずるためのフレキシビリティを望んでいる国があるかもしれないという事実を受け入れるべきであろう。
(1) Julie Hillは,European
Federation of BiotechnologyのTask Group on Public Perceptions of Biotechnologyのメンバーである。また彼女は,Green
Allianceのプログラム・アドバイザーでもある。Green Allianceは,イギリスに本拠を置く非政府機関であり,その任務は環境を政策決定の中心に据えることである。Ms
Hillは,過去9年間,遺伝子組換え作物の解禁に関する政府諮問委員会(ACRE)の委員を務めている。Green Allianceは遺伝子組換え技術に反対しているわけではないが,環境にとってのリスクを正しく評価し,規制システムにおける透明性を高め,国民が意思決定に参加できるようにしたいと考えている。
目次
|