English Chinese Korean
OECD東京センター
BUILDING PARTNERSHIPS FOR PROGRESS

OECD案内
OECD概要
テーマ別情報
主な行事予定
過去のニュース
メール配信サービス

OECD東京センター
概要
アクセス
イベント・セミナー
閲覧室
広報誌
日本語出版補助
プログラム






BUILDING PARTNERSHIPS FOR PROGRESS

Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.216


 OECD Observer 日本語版

バイオテクノロジーと工業:前途有望な連合

SALOMON WALD
SCIENCE, TECHNOLOGYAND INDUSTRY DIRECTORATE

 多くの人々にとってバイオテクノロジーとは遺伝子組換え食品やクローンを意味する。しかし,バイオテクノロジーは工業の生産プロセスにとって価値があることを証明しつつあり,環境面でも経済的にも従来の方法を上回る明らかな利益をもたらしている。

 工業においての「クリーン」は,相対的な用語である。原料やエネルギーの消費を減らす改善または廃棄物を減らす改善(リサイクルを含む)は,「よりクリーン」であり,またはより環境にやさしいということになる。生産工程および製品の耐用期間全体にわたり技術とその代替方法を相対的クリーン性の点で評価する方法がいろいろある。より一般的にいえば,工業分野におけるバイオテクノロジーの焦点は,環境悪化の改善から予防に移ってきている。


よりクリーンな代替方法

 バイオテクノロジーに基づく製造は,実際,従来の方法よりも遙かに「クリーン」となりうる。生物体の化学作用は化学プロセスの化学作用よりも効率的であり,その結果生じる廃棄物は再生可能であり,生物分解性がある。例えば,亜鉛メッキ産業においてアルカリ工程をバイオテクノロジー工程に替えれば,廃棄物として生じる水酸化物のヘドロの量が半減し,水の必要量が10分の1に減少する。精製化学製品産業では,化学プロセスの代わりにバイオテクノロジーを使用してセファロスポリン(抗生物質)を生産すれば,環境保護対策の費用が大幅に削減される。

 様々なバイオテクノロジー工程の利用により,廃棄物や資源消費量が削減されつつある。またコストも削減されている。例えば,木材パルプを加工熱処理する代わりに菌類で処理(バイオパルピング)すれば,全体で30%のエネルギー節減となり,木材の繊維素の分解に酵素(バイオ触媒)を使用すれば,処理時間が短縮され,水やエネルギーも相当節減される。科学者は,目下,例えば石油化学産業においてより高温で作用するより確実なバイオ触媒の研究を行っているが,それらのバイオ触媒は今のところ従来の触媒よりも低温でしか作用しない。


工業におけるバイオテクノロジーの導入

 バイオテクノロジー・プロセスは改善されており,今では他の技術と競争することができる。それらは化学産業(特に精製化学製品および医薬品),パルプ・製紙,繊維・皮革,食品加工(家畜飼料を含む),金属・鉱物,およびエネルギー部門において広く利用されている。先進国では,これらの部門は,全製造業の30%から50%を占める。バイオテクノロジー・プロセスは,環境面でのこれらの部門のあまりよくないイメージの改善に役立っており,多くの場合,その効率を高めている。

 一つのエキサイティングな見通しは,農業廃棄物から生産される液体輸送燃料のバイオエタノールがいつの日か,世界の石油需要の相当部分を満たすようになるかもしれないということである。バイオエタノールは従来の燃料と違い,ネットで温室効果ガスを増加させない。バイオエタノールはまだコスト面で競争力がないが,これもいずれ変化するはずである。アメリカの国立再生エネルギー研究所では,2000年までに石油と競争できるコストでバイオマスからエタノールを生産できるものと期待している。

 バイオテクノロジーには多くの用途がある。一方では,バイオテクノロジーは,エタノールのように生体に基づく大規模な発酵作用を改善するのに役立ち,もう一方では,例えば,ウィルス検出のために,分析装置において生物分子の微小部分がセンサーとして使用されている。また工業用手段としてのバイオテクノロジーのパワーも急速に拡大している。新酵素,バイオ触媒,遺伝子組換え生物体,極限微生物――深海穴や間欠泉など極端な圧力・温度環境で生息する生物体――は,工業をよりクリーンにし,効率的にする可能性を秘めている。

 バイオテクノロジーは,生産工程に貢献するばかりでなく,生物分解できるプラスチック,バイオポリマー,バイオ農薬,新繊維,材木等様々な素材を生み出した。それらの一部は,洗濯物の柔軟仕上剤,防腐剤,インクキャリアー,溶剤,ヘアコンディショナー,香水などに使用されている。これらの生産品から出る廃棄物は,より自然に分解することができる。

 このような便益があるにもかかわらず,工業用バイオテクノロジーがあまり広く利用されていないのは意外に思われる。製造業者は,長い間,バイオテクノロジー・プロセスはあまり有効でなく,コストとリスクが高すぎ,事業規模が限られているのではないかという懸念を抱いていた。このような懸念はもはや無用であるが,ネックや難題はまだ残っている。

 第1に,まだ科学的・技術的障害がある。新しいプロセスは資本支出を必要とし,開発費が高くつく可能性がある。しかしその一方,バイオテクノロジー・プロセスは,大掛かりな設計変更やオーバーホールを行わずに既存の設備に簡単に組み込むことができる。また多くの技術的問題は,バイオリアクターの新たな設計により克服されつつある。

 組換えDNA技術,バイオプロセス・エンジニアリング,新しいバイオリアクターの開発,極端な条件下で生息する新しい生物体の発見等について調査が続けられている。貴重なバイオ触媒の基になるかもしれない未知の未利用の微生物が非常に多くある。例えば,特定の用途に合わせて酵素を加工するという方向に向けた進化により,既知の自然の酵素やタンパク質を改善し,新しい作用や特性をもつ酵素やタンパク質を得ることができる。

 バイオテクノロジーがあまり急速に産業に浸透していない第2の理由は,エンジニアや工業デザイナーの訓練において関連性のある生物学的プロセスが網羅されない傾向があることである。素材の性質,容器,およびバイオテクノロジーの操作条件は非常に異なるため,エンジニアや工場経営者は再訓練を受けなければならず,本能的に慣れた方法に固執することになる。



協調的努力

 世論は環境問題に対する有力な力であり,世論を動かすことは難題である。無鉛ガソリンやリサイクルが広く導入されたのは,主として世論の圧力に促されたためである。ライフスタイルも変化し,よりクリーンな商品に対する需要が高まってきた。政策決定はこの傾向に追随しており,また企業の行動も同様である。今では,テレビコマーシャルであれ,意思決定に消費者団体を参加させる方法であれ,企業が環境関連広報を企業戦略の重要な部分とみなすのが一般的である。

 しかし情報キャンペーンだけで国民の信頼を得ることはできない。バイオテクノロジー,特にその規制面について説明することも,混乱を避け,根拠のない不安を鎮めるために重要である。従って教育が不可欠である。国民は技術的詳細を知りたいとは思わないかもしれない。その場合には,工業用バイオテクノロジーの利用に対する国民の信頼を補強し,バイオテクノロジーが厳しく管理された分野であり,責任ある公的機関によりバックアップされていることを立証することを目的とすべきである。これは透明性と自由な討論を意味する。

 政府も工業用バイオテクノロジーの利用を奨励すべきである。法律制定,規制の質,政府のガイドラインの明確さ,基準,調達政策,政府の援助する研究開発――これらはすべて,進歩を促進する場合もあれば,妨げる場合もあり,また進歩を早める場合もあれば,遅らせる場合もある。

 政府は単独で努力してもだめであり,また政府自身もイノベーションのスピードに追いついていかなければならない。このため,例えば研究開発を改善するために,企業との共同活動が非常に重要になる。科学者も彼らのプロジェクトの重要性を説明するために,政府,産業界,および国民に情報を伝達しなければならない。

 クリーンな技術を推進するための政策の国際的な側面は,国際協定や条約から力を得ることができる。1992年の環境に関するリオ会議とそのアジェンダ21は,画期的な出来事であった。というのも各国政府は,グローバル化と持続的開発をバランスさせなければならないという事実を認めたからである。

 よりクリーンな産業とは相対的概念であるかもしれないが,一つだけ明らかなことがある。それは,排出削減という緊急を要する仕事は,経済的損失を意味するわけではないということである。実際,バイオテクノロジーを利用すれば,環境と経済は相互に補強しあうことができる。このメッセージを広めることが極めて重要である。それは産業の持続可能性を高めるばかりでなく,産業と汚染との結びつきをきっぱりと断ち切ることに役立つだろう。


目次

Top


OECD文書
出版物
 
- 今月の新刊
- テーマ別出版物
- Standing Orders
- 定期刊行物
- CD-ROMリスト
- 日本語版リスト
- 出版物購入方法
- 書籍の正誤表
SourceOECD
主要統計
公開文書

Online Book Shop Source OECD OECD政策フォーカス OECDオブザーバー

パリ本部サイトお問合せ検索採用情報

Copyright OECD Tokyo Centre. All rights reserved.