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OECD諸国における女性の雇用は,必ずしも,高賃金や昇進の機会を意味しない。女性にとって,労働市場は困難な場でありつづけている。そして,全ての活動分野において,同じ職を得るのに,女性が男性と同じ機会を得るには,長い時を要するであろう。
現代社会では,労働市場における男女の不平等はもはや過去の問題であるという印象を受けるかもしれない。しかし,これはおよそ真実ではない。このことはOECD各国の雇用指標の検討からただちに明らかになる。事実の問題として,女性は労働市場において賃金という点でも昇進という点でも男性と同じ機会を与えられていない。女性の雇用は現在でも狭く限られた範囲の職業に高度に集中したままである。この状況は1970年代以来ほとんど変化しておらず,女性の仕事の特殊な性格を考慮して,その職業を充実させる努力が中央政府の政策的関心の中心に据えられないかぎり,この状態が将来変化する可能性もない。
一般に労働市場を評価する指標としては労働力参加率と雇用率がよく使用される。しかし,参加率には職を探す状況にない人々が除外されているという不具合がある。しかもこうした人々はその多くが女性である。
労働力のうち職についている人々の比率を示す雇用率は,労働市場における女性の状況を明らかにするずっと効果的な指標である。それは,25〜54歳の年齢層に関しては特に適切な指標である。この年齢層においてこそ,子どもや更には高齢の家族に対する女性の責任が最大だからである。1997年において,この年齢層の男性と女性の雇用率の差はOECD29カ国の中で大きな差が出ていた。この男女格差は,ノルディック諸国や北米,中欧諸国では15%未満に縮小していた。フィンランドとスウェーデンでは格差は5%未満で,これが50%以上にもなるメキシコやトルコとは著しい違いを示していた。スペイン,アイルランド,日本,韓国などでは一般に格差は依然として大きく,25%から40%のあいだにあった。
どの国においても,男性雇用率と男女間格差とのあいだには明確な相関関係は認められない。例えば,アイスランドと日本の両国は男性の雇用率が最高で,95%にもなる。しかし男女間格差は,アイスランドでは13%と小さいのに対して,日本では30%と極めて大きい。同様に,男性雇用率が低ければ男女間格差も小さくなるとは限らない。スペインとフィンランドでは男性雇用率は比較的低くて80%であるが,男女間格差に関しては両極端に位置する。こうした例には枚挙に暇はない。
原理的な関係が存在しないという事実は,男性から女性への職の再配分という考えに根拠がないことを意味する。現状では,男女は事実上まったく別個の2つの市場で働いている。しかも,ほとんどの国において教育水準の相違が目に見えて縮小し,反差別法が制定されるようになったにもかかわらず,男女間に賃金格差が依然として存在するという事実は(それはときとして30%にも達している),女性が男性と同一の職業に就けないでいることを証明している。差別は,依然として,労働市場における男女不平等の主要な原因である。
OECD諸国においては,男女ともそれぞれ自分の性が圧倒的多数を占める職業で働いている。調査された職業の半分以上が,男女いずれかによって80%以上「支配」されていた。この現象の規模と機能は圧倒的で,「伝統的に男性の」職業と「伝統的に女性の」職業について語ることが一般的である。
しかしOECD諸国では,男性支配の職業が女性支配のそれの5倍も多い。それゆえに女性の雇用は圧倒的に女性の支配する少数の職業に狭く集中している。それでも女性は,OECD地域の総雇用数の平均して40%あまりを占めている。
全体として,女性が支配的な職業は高度に労働集約的である。女性が支配的な職業の典型的な代表が3つある。秘書,教師,看護士である。ほかの職業も,非常に多数の女性を雇用するところは様々な程度で「女性化」されている。例えば,小売業,ホテル,配膳業などである。最後に,家庭の主婦の役割とほとんど同一と考えられている職業がいくつかある。家事労働者やホームヘルパーで,これらにはほとんど女性が就く。
今日の社会にあっては,主として職業が個々人の社会的,経済的地位を決定する。この観点からすれば,職業の男女分離は女性の支配的な職業が不利益性を引き出してしまう。女性が支配的な職業の存在は,最も社会的地位が高く,最も有力で,最も報酬の多い職業に女性が就くことを更に一層妨げるからである。このような職業は依然としてほとんどが男性用に「確保」されている。女性の支配する職業は,所得,職歴の展望,社会的評価のいずれの点でも低い位置にある。
深まる分断
次の世紀を目前に控えて一般に期待されたところとは反対に,男女差別と女性の過小評価は,改善されるどころかますます深まろうとしている。それゆえに女性の雇用を改善する何らかの措置が必要である。女性を非伝統的な職業に就けるために多くの国でとられている積極的施策は,象徴的な効果は大きいものの,これまでのところ基本的なパターンを変更するような実質的な影響は及ぼしていない。女性は将来も,女性が圧倒的多数を占める職業に流れてゆくだろう。これには利点がないわけではない。多くの国で,男性支配の職業で大量の失業が生じており,その一方で女性の職業が高度に集中する第3次産業部門で新しい雇用が大量に創出されている。
政府や社会的パートナー組織は,女性が圧倒的多数を占める職業の改善の問題に十分な関心を示してこなかった。それでも彼らは,職業上の男女区分が,雇用において女性が不利な立場に立つことの背後にある,主要な要因であることを認識している。これまでにとられてきた措置は,男女区分の根源的な原因を取り除くというよりも,それを軽減することを目的としていた。1980年代の男女機会均等プログラムは非常によく機能してきた。特に労働と家庭生活の両立可能性を改善して,女性が全面的に労働力に参加できるようにすることを目指した諸施策がそうである。しかし,個々の分野ではまだ多くのことがなされなければならない。女性の職の質的改善,新しい職歴展望の向上,技能の向上,労働組織の再編成,賃金の平等――こうした分野すべてにおける行動は,女性の雇用の展望を改善し,男女間の平等を促進する。
Anker, G.(1998), Gender and Jobs. Sex Segregation of Occupations in the World.
Geneva, International Labour Office.
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