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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.217/218


 OECD Observer 日本語版

経済成長は人口問題を解決するか?

 急速な人口増加に伴う諸問題の多くは,しばしば,経済発展によって解決できるとされてきた。先進工業諸国では,経済成長は財政による社会サービス需要を軽減し,年金の財源調達のような極めて難しい政策的選択に大きな便宜を提供する。開発途上諸国では,急速な人口増加を前にして貧困を軽減し,物的,社会的インフラストラクチャーの開発に必要な財源を政府に提供するために,経済成長は不可欠であると考えられている。

 実際,専門家の多くは経済成長の将来展望についてどちらかといえば楽観的である。彼らの見解によれば,技術とグローバリゼーションのおかげで,世界経済の規模は1997年から2020年までの間に容易に2倍に達し,生活水準の平均(人口増加分を考慮して)は67%上昇するという。一部の専門家は更に,OECD地域の国民1人当たりGDPは2020年には1997年よりも50%から80%高くなるとさえ予測している。非OECD諸国ではこの間の成長率は100%から270%となり,国民1人当たりのGDPは,購買力パリティ方式で1995年におけるOECD水準の15%から2020年には30%に上昇するという(Long Boomに関する記事を参照)。

 しかし,楽観論者でさえ,こうした成長は正しい政策が実施されないかぎり実現は不可能であると考えている。このことは,先進工業諸国では,人口の高齢化対策を推進し,労働力参加の拡大を促進してよりフレキシブルな経済を作る努力を意味する。開発途上諸国では,政府は近代的な経済の効率的な運営に必要な基礎的な制度を形成しなければならない。例えば,所有者が生活のための収入を得ることのできる十分に発達した土地市場や,高齢化に備えて貯蓄を容易にする資本市場の形成である。また,幼児死亡率を低下させ,伝染病を根絶し,医療や家族計画の平等な利用を促進し,住民全体の,特に女性の識字率を高める,などの措置を導入することも必要である。

 問題を解決する経済成長の力にこれほど確信がもてない人たちもいる。彼らが恐れるのは,情報技術と経済リベラリズムの急激な拡散が,ますます規制の効かないグローバルな資本主義や,社会的分極化の進行する「勝者がすべてを取る社会」,政治の不安定,所得格差の拡大などをもたらしかねないことである。政府にとって特に重要なのは,新しいサイバーワールドである。そのなかで稼ぎを得る者にますます大きな部分の富が取り込まれて,政府の徴税能力が掘り崩され,所得再分配の余地が狭くなることである。そうなれば,先進工業諸国と開発途上諸国の双方における人口構成の変化に対応するための,物理的,社会的なインフラストラクチャー開発に必要とされる政府主導の投資が困難になる。

 懐疑論者はまた,現在の経済的な規範とシナリオを前提とすれば,経済成長が不可避的に環境に打撃を与えることを憂慮する。特に彼らは,経済成長によってもたらされる気候変動の長期的な影響が将来の人類の健康や文化,経済の展望に,一律ではないにせよ,極めて重要な悪影響を及ぼし,世代間の公正というまったく新しい問題を引き起こすと主張する。こうした全体的な文脈のなかで,彼らはグローバリゼーションに反対する。なぜなら,第1に,それは開発途上諸国の農村部に住むほぼ自給自足的な生活を営む人々を資本集約的な財貨とサービスの消費者に変えてしまう。第2にそれは,彼らの観点からすれば,熱帯雨林から切り出される木材のような,環境破壊的な輸出品の生産を促進する。更に,優良な土地が輸出生産に向けられる結果として,地元住民は,浸食に弱い限界的な土地に押し込まれる。加えて,グローバルな経済の輸送需要の高まりによって引き起こされる環境被害がある。最後に彼らは,農地の地質の急激な悪化や水不足の進行,気候変動などに直面して,増大する世界の人口に必要な食糧需要を満たす経済の能力を疑問視する(foodに関する記事を参照)。

 こうした不安は真剣に考慮されるべきであるとはいえ,懐疑論者の主張はいささか誇張されているように思われる。第1に,長期的には,急速な経済成長は開発途上諸国の多くにおける人口的遷移を加速して環境に対する圧力を最終的に軽減し,その一方で豊かさの高まりが環境の質に対する要求を強める。第2に,短期的には,開発途上諸国における新しい技術の急速な普及は環境汚染と戦う,新しくより効果的な手段を与え,エネルギーを含む資源のいっそう効率的な利用を促進する。そして第3に,効果的な環境規制が施行されていれば,最も効果的に使用される場所への資源の再分配を行うことにより,国際貿易は環境全体に対して肯定的な影響を及ぼす。根本的な問題は,「人口の魔神」がビンから解放されたとき,信頼できる選択肢は何なのかが明らかでないことである。全体として,ゼロ成長シナリオはすべてに不利に作用する。特に開発途上諸国では失業と環境の悪化が広範囲に広がるだろう。

 貿易と投資の自由化,そして新しい技術の急速な普及を基礎とした経済成長が,長期に亘る劇的な人口増加によって社会に提起される,社会経済的な諸問題の多くを解決するうえで最善の希望を与えてくれる。しかし経済成長は,全世界的に生産と消費のやり方が変わらないかぎり,持続的なものとはならない。こうした変化のあるもの,例えば,環境に優しい財貨に対する需要の増大は,価格シグナルによって口火が切られ,市場の正常な機能の結果として実現される。別の変化,例えば,地球温暖化防止のための産業からのガス排出の削減は,関係する外部効果のために実施が遙かに困難である。そのためには,国内的,国際的な両レベルで政府の決定的な行動が必要である。加えて,経済と社会と環境の各次元の密接な相互関係は,産業界と家庭,そして政府のすべての関係者が参加する全地球的アプローチを要求する。


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