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地球の住民のほとんどは,2025年には「劣悪」ないし「極めて劣悪」な水の供給条件のもとで暮らすことになるかもしれない。
予見可能な将来,その原因が除去される可能性はない。
水はなくなろうとしているのだろうか。これは,おそらくあまりにも誇張された質問であるが,水の供給に対するプレッシャーは高まりつつあり,それとともに地政学的な緊張が強まろうとしている。プレッシャーの源泉の一つは人口増加である。世界の人口は現在の60億人から25年間で80億人に増加すると予測されている。この人口増加の大部分は,現在すでに水に関連して諸困難に直面している諸国で生じる。例えばエチオピアである。この国の人口は現在の6,200万人から,2025年には1億3,600万人へと2倍以上になると予測されている。これは現在のアメリカの人口のほぼ半分である。
この急速な人口増加に伴う急激な都市化の進行――開発途上諸国の都市人口は今後25年間に実に25億人も増える――は,水の供給に関して独特の深刻な問題を提起する。多くの都市は,これ以上の人口を受け入れるだけの資源に欠いている。インフラストラクチャーはすでに限界を越えており,サービスを拡大するための財政負担は巨大である。貧しい諸国の都市住民に適切な衛生施設を提供するためには,おそらく1兆ドルもの新規投資が必要である。しかもこの投資は,豊かな諸国の既存のシステムの改善,更新と競い合うことになる。先進工業諸国では,環境だけでなく,衛生問題に対する国民の意識の高まりによって,投資を求める圧力が強まろうとしている。例えば,1997年のマカベア大会でテルアビブの川に落ちて死んだ選手の死因が,溺死ではなく有毒な水による中毒だったことは,多くの人にとって非常にショックだった。
水不足を深刻化させる可能性が非常に大きいもう一つの要因として,地球温暖化がある。気候変動政府間パネル(IPCC)の推計によれば,地球の気温は次の1世紀間に1.5度から3度,上昇する可能性がある。そうなれば,当然,灌漑と飲用に水の消費が増えるだけでなく,対処の困難な間接的な影響が多数生じかねない。蒸発量が増え,地下水の補給が減る可能性がある。暴風雨(これは水処理システムの能力超過の原因となりかねない)のような極端な気象現象がしばしば現れるかもしれない。水の供給に重大な影響を及ぼす気候地帯や季節の遷移が生じるかもしれない。年間降雨量が大きくは変化しない地域でも,降雨が冬季に集中し,あるいは農業ゾーンから外れるようなことがあれば,様々な問題が生じうる。
グローバルな問題
気候変動は,破滅的な干ばつや洪水の起こりやすい地域を越えてその影響を及ぼしかねない。イギリスのような国でさえ,水の管理の問題を含めて,様々な部門に対する考えられるかぎりの影響の研究が開始されている。明らかになったことの一つは,気温の上昇に関するIPCCの控えめな想定に基づいてさえ,将来の土地利用にとって水資源が主要な決定要因となる,ということである。水の経済的な供給ができないために,あるいは洪水の恐れがあるために,新しい住宅プロジェクトを断念しなければならなくなるかもしれない。
そうとすれば,何をなしうるのか。大規模な技術的解決方法もある。例えばエジプトのような国々を助けているそれである。エジプトは,水の供給を同じ水系に頼っているにもかかわらず,1980年代にサハラ以南アフリカを襲った悲劇的な飢餓を免れることができた。昨年中国で数千の死者を出し,数百万の家を奪った洪水のようなおそるべき自然災害の場合は,気候変動に対処すると同時に水力発電にも使える巨大なダムを建設することが一つの戦略となる。
しかし,自然に対する介入は予期せぬ結果をもたらしかねない。大規模な技術的解決方法に対する批判者たちは,ソ連が大規模な潅漑によって綿花生産を拡大したあとのアラル海の干上がりをよく指摘する。少なくとも現在のところは,大規模な技術的解決方法は支持されていない。
もっと小規模な技術的解決方法も提案されている。例えばヨルダンは,紅海のアカバ湾で取水した海水を運河を通して死海に流し,標高差を利用して水力発電プラントを動かす計画を検討している。このプラントで海水は脱塩化され,脱塩プラントから排出される塩水は,水面の低下をくい止めるために死海に放流される。このプロジェクトは,いかによく工夫されているにせよ,水の供給のための大規模な新しい水源を提供する可能性はほとんどない。
水に価格をつける
市場ベースの価格メカニズムを利用して水の持続的な使用を促進する需要サイドの解決方法に関心が集まっている。OECD諸国では水の枯渇は生じていないが,供給問題はますます深刻になっている。過度に安い価格とインフラストラクチャーの欠陥,最新技術の導入の遅れなどのために,地球全体で真水資源はこの先も浪費と管理の不適切に直面しつづける可能性がある。持続的な消費に向けて進むための一つの方法が,資源と生態系に経済的な価値を付与し,公害などから生じる外部コストが市場価格に反映されるようにすることである。
価格改革は,経済的な観点から特に魅力的である。地球全体の水の消費量のおよそ70%を占める農業(工業は20%,住宅・商業部門は10%)の場合,特殊なケースを除いて,希少な水資源をめぐる部門間のある程度の競争を考慮することができる。このためには,補助金と潅漑を拡大する公共主導プログラムが廃止されなければならない。
取引権もまた水資源管理のための一つの可能な手段である。それは,水の価格に代替的用途の価値を反映させて,水を生産的に,費用効果的に使用するインセンティブを作り出すと考えることができる。例えば,交渉で自由に決めることのできる価格で販売する農民は,剰余を価格の高い都市で販売するために,自分自身の水の効率的使用を促進するインセンティブを与えられよう。しかし,このようなシステムの設立と運用には多大の費用がかかる。法律の変更が必要となり,権利を行使する手段が制定されなければならず,そしておそらくは,水を潜在的顧客のところへ運ぶためのインフラストラクチャーを建設しなければならない。いずれにせよ,品質基準や洪水防止などの分野では政府の介入が依然として必要である。
OECD諸国の住民の大多数は,たまに生じる庭の散水や洗車の制限を除けば,水の使用について,更にはその実際のコストやそれがどこからくるかについて,深く考えることはほとんどない。将来の供給を確保するためにいま行動することが,こうした状態が将来も続くことを保証する。地球上のどこでも,状況は悪化しつつある。経験が示すところでは,すべての人に安全な水の適切な供給を公平に確保するために,必要な政治行動と投資と開発の形態を結合することは極めて困難である。
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