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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.217/218


 OECD Observer 日本語版

豊かさの次は健康

DONALD J. JOHNSTON
SECRETARY-GENERAL OF THE OECD

人口の高齢化は,ライフスタイルの変化や健康に対する新しい脅威の出現とともに,OECD諸国の国民医療システムに対する圧力を強めている。 Michel Andrieuがその理由を説明する。

 65歳以上層は,1950年にOECD人口の10%を占めていた。この比率が2050年にはその2倍になる。最も高齢で,最も虚弱なのは,この高齢者中の最も急速に増える部分である。フランスでは,75歳以上層の数は,1990年から2010年までの間に40%増大すると予測されている。高齢者は医療サービスの飛び抜けて最大の利用者であるがゆえに,この「二重高齢化」プロセスは,医療コストの上昇と医療支出の高齢者へのいっそうの集中を意味する。

 OECD欧州では,2040年までに65歳以上層の占める医療支出のシェアは,最低でベルギーの30%から最高はスウェーデンの63%までの間になると予測されている。1980年の数字は,それぞれ22%および51%だった。

 豊かさの向上によるライフスタイルの変化は個々人の健康を改善するが,皮肉なことに,医療に対する負担はますます重くなる。生活水準の上昇が高水準の(従って費用のかかる)医療に対する要求を強めるからである。また,単身高齢者所帯の増加や世代間の繋がりの希薄化といった家族構造の変化も,公的医療の提供に対する要求を強める。加えて,ほとんどの国で女性の労働力への参加が拡大すると予測されているが,このこともまた公的に提供される医療への需要を増大させる。

 未来は,健康に対する新しい脅威ももたらす。ある種の伝染病が猛威を振るうかもしれない。公害や環境の悪化による健康上のリスクもある。地球の温暖化とともに一部の熱帯病が欧州や北米に移ってくるかもしれない。皮膚癌や目の疾患,免疫システムの弱体化などに関係するオゾン層の状態が改善される兆候はまだない。


延びつづける健康な平均寿命

 全体として,今後数十年間もこれまで以上に生活の質の向上が続くだろう。OECDのデータによれば,平均寿命が延びつづけるだけでなく,疾病を伴わない平均寿命期間が着実に改善される傾向にある。加齢による慢性的症状はますます多くなっていくとしても,科学・技術の進歩によって医療の質は向上を続け,現在は致死的な疾病の効果的な治療方法や新しい病理学に基づいた治療が可能になる。バイオテクノロジーの前進は,癌を含む多数の遺伝的疾病の予測や防止,治療のための新しい機会を提供する。外科治療もますます効率的になっている。これは,医学画像の開発や大規模な切開手術から内視鏡技術への移行の結果である。最後に,情報科学の応用は,医療サービスの利用方法や管理,有効性を大幅に改善するだろう。遠隔医療や情報管理は,遠隔地でも特殊なサービスや技術の利用を可能にする。人工頭脳やエキスパート・システムは,臨床的診断で日常的に利用され,予防医学において中心的な役割を果たすようになるだろう。

 ある種の新しい進歩は,医療管理のいっそうの高度化を要求するだろう。遺伝子操作や臓器移植のように,複雑な倫理的問題を提起するからである。こうした問題のいくつかは,文化的,政治的な深い意味を有している。

 医療はまた,収入を生みだし,コストを管理しようとする。実際,ほとんどの国の医療システムは,遅かれ早かれ共通の圧力に直面するようになる。人口が高齢化し,健康上の新しい脅威が生じるにつれて,変化する医療上のニーズに適応することが求められる。コストを封じ込め,社会的公正を損なうことなく政治的に受け入れられ,しかも実際的な財政制度を確立することも必要である。

 治療的価値の疑わしい処置を抑制することによって大幅なコスト削減が可能である。「サービスの代価」から「便益の代価」へのアプローチの転換は,医療の質を向上させ,コストを封じ込めるもう一つの方法である。主要な当事者間の財政的責任の配分を改めることは,健康に対する個々人の責任を強化して,もう一つの解答となりうる。ただしそのためには,「二重高齢化」の問題に追加する形で,不公正な二重システムが形成されるようなことがあってはならない。


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