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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.217/218


 OECD Observer 日本語版

21世紀の技術:約束の将来

DONALD J. JOHNSTON
SECRETARY-GENERAL OF THE OECD

 技術の変化のエキサイティングな時代が来ようとしている。しかし,そのような新しい技術革新は経済と社会の全体にどのような影響をもたらし,政策にとってどのような意味をもつのか? Director of the International Futures ProgrammeのWolfgang Michalskiがいくつかの解答を明らかにする。 

 技術の進化と経済・社会の発展の間の相互作用は,人類の歴史の一つの重要な側面である。このことは鉄器時代や青銅器時代と同様に,現代にも当てはまる。農業社会から工業社会への移行は,新技術の全面的な普及が家族構造や労働関係,居住パターン,経済的・政治的な権力の構成,更には行動パターンと価値システムに及ぼす影響の深遠な意味あいを最もよく明らかにしている。一方における技術と他方における経済・社会とのあいだには,相互的な関係がある。技術進歩は経済・社会の構造の連続的変化を引き起こすだけでなく,態度や価値の変化を含む経済・社会の変化もまた技術発展の方向と速度に大きな影響を及ぼす。大量生産,大量消費,大衆統治によって特徴づけられた今日の工業社会は,多くの面で,20世紀の技術の複雑な体現である。しかし,政治的,経済的,社会的な根本的な変化が,新しいパラダイムへの移行を可能とした条件を提供したこともまた疑いない。


技術革新は変化を促進する

 21世紀への転換点における技術の発展を眺めてみると,今また極めて広範な新しい技術革新が実現されようとしていることに気付く。情報工学や新素材,遺伝子工学,環境保護,エネルギー工学などの分野で更に急速な進歩が期待されている。これはほんの一例にすぎない。様々な技術の可能な新しい組み合わせや相互作用もまた非常に重要である。情報工学と電気通信,エネルギーと環境保全にかかわる技術などがその好例である。しかし,十分に普遍的で,社会に対して大きな影響を及ぼす新しい基本的な能力を人間に与えると考えられるのは,これらの技術のうちのいくつかにすぎない。

 30年先を見通せば,このような可能性を有するのは遺伝子工学,そしてエネルギーおよび環境関連の技術である。しかし今後10年前後のことを考えれば,経済的,社会的変化の主たる推進力は情報工学であろう。四半世紀の漸進的な発展と普及の期間を経て,情報工学は今や新たなテイクオフの時を迎えている。これは,一つには技術そのものの発展の結果である。しかし同時にそれは,経済的,社会的な構造変化の結果でもある。経済と社会の構造は,新しい技術の全面的かつ最も効果的な利用のために必要とされる,組織的,制度的な新しいパターンを作り出している。こうしてそれは,現在,更なる技術進歩の推進力となっている。


ネットワーク化される経済

 明日の強力なデスクトップ・コンピュータは,コンピュータとテレビと電話を一体化することを越えて,インプットとアウトプットの知覚装置の活用や,インテリジェント・エージェント・ソフトウェアの使用,そしてこれが最も重要であるが,あらゆるところに浸透するネットワーク結合などを特徴とするようになる。特にこの最後の要素は,明日の情報技術のもう一つの重要な特徴につながる。すなわち,普遍的な「ハイテク化」である。将来的には人間は,あらゆるものを結合するネットワークをもつことになろう。彼らは,ハイテクの家具やキッチン,オフィスを知り,ハイテクのビルに住んで仕事をし,センサー誘導のハイテク自動車でハイテク・ハイウェイを走る。更にいっそう有望な応用先が,画像処理である。それは,高度に複雑なバーコードやビデオ・マーケティング,バーチャル製品に使用されよう。自動車や超高層ビル,航空機といった複雑な技術製品は,実際に製造される前に,サイバースペースで設計,企画,製造,テスト,評価が行われるのがごく普通のこととなろう。情報工学は,今から10年後には,あらゆる可能性から考えて,人間活動のすべての側面に浸透することが確実である。ここでも,技術進化と社会・経済発展の相互作用が根本的な変化をもたらすだろう――人間がいつ,どこで,どのようにして働き,遊び,休むかについて,またどのようにして,どこで,何を消費し,生産するかに関して,更にいつ,どこで,どのようにして他人や仕事や社会組織や政府と交流するかについて。

 コンピュータによって可能になった電子商取引は,現在の商売のやり方を根本的に変える可能性がある。コンピュータとインターネット・アクセスをもつ者は誰でも,グローバルな市場での選択の拡大と競争的な供給から利益を得ることができる。そのパフォーマンスの測定は困難であるが,ここに興味深い事実がある。有名なインターネット書店Amazon.comの在庫が1,300万冊であるのに対して,ニューヨーク最大の書店のそれは18万冊以下であることである。全世界の電子商取引の収益に関する推計は極端に異なっているが,それが劇的に増大する――伸び率はおそらくは今後4,5年で約1,000%にも達する――ことは疑いない。電子商取引はまた価値連鎖の変化にもつながる。ある者は解体され,ある者は復活する。最も重要なのは媒介の消滅のプロセスである。生産者と消費者の間の多数の仲介組織はその役割を変化させるか,消滅するかのどちらかである。例えば,旅行代理店,保険ブローカー,地方の銀行支店,小売部門の多くである。


創造的な社会をめざして

 社会組織――私生活,ビジネス,行政――にとってもその意味するところは大きい。高度のコンピュータ能力と低コストの電気通信の組み合わせは新しいタイプの社会――現実の,またバーチャルな――をもたらす。在宅勤務やテレショッピング,在宅学習などは,巨大な都市集合体からの離脱を可能にし,新しい居住パターンの発展をもたらす。双方向のグローバルなネットワークへのアクセスは,コンピュータ使用方法のいっそうの簡素化とともに,今日の萌芽的な「サイバー」社会の普及を促進する。ビジネスの分野では,企業構造の二極化の傾向――一方における非常に巨大なグローバル企業体と,他方における高度に専門化された非常に小規模な企業へと分かれる傾向――が強まってゆく。ビジネスと行政の分野では,多くの人が指揮命令の伝統的な階層構造の終焉を予想している。代わりに,構成員それぞれにこれまで以上に多くの意志決定の自由と責任を委譲する水平的ネットワークと協力的チーム構造が拡大するだろう。こうしたことすべてが効率をいっそう向上させ,同時に,多様性の拡大,個々人の選択範囲の拡大,人々の自己決定と自己充足の新しい機会の増大の余地を開く。

 それにもかかわらず,技術の発展は,それが活用される範囲と方法について,それ自体があらかじめ結論を与えるわけではない。21世紀の技術,特に情報技術が与える約束を現実のものとするためには,個々人と産業界と政府が創造性と実験と変化に対する開放的な文化をもたなければならない。国内的,国際的な政策は,利益が社会全体によって共有されることを保証しなければならない。技術と経済と社会のダイナミズムを不当に損なうことなく,新しい技術に随伴する潜在的リスクを可能なかぎり規制し,好ましくない副産物を封じ込めることが追求されなければならない。


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