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失業率が依然として高いドイツでは,積極的労働市場対策が再び注目されている。統一後,旧東独地域では,資格を身につけ,仕事を得やすくするための就労準備計画が実施された。これらの計画はうまくいっているのだろうか。
ドイツ統一は確かに感動的な偉業であったが,政策決定者は突然いやなことに気づくはめになった。最初に気づいたことの一つは,新生州では持続可能な雇用件数が大方の予想よりもかなり少ないということであった。この点はたちまち経済学により証明されることとなった。新生州では,総雇用件数が統一前年の1989年の990万から1992年初頭には650万に減少している。失業が急増し,中央計画経済であった旧東独の多くの人々にとって雇用の見通しは実際非常に厳しいものであった。多くの人々が西側に向かった。新生ドイツに対する幻滅が生じる危険が高まっていた。コール政権は実に難しい問題に直面していた。直ちに雇用の安定化を図らなければならなかった。その結果,失業者の雇用の見通しは改善された。当面頼みとする手段は,いわゆる積極的労働市場対策の利用を促進することであった。これらの政策は,失業者を失業手当から離脱させ,就業機会を改善することを主目的としており,その方法として,民間又は公共部門における雇用もしくは非営利職業紹介所に補助金を交付すること,または政府主催の職業訓練計画を提供することが考えられた。
政府が失業手当などの「消極的な」所得補助から失業者を再び就業させるための積極的施策に支出のバランスをシフトさせるというアイディアは魅力がある。また,このアイディアは,この対策がなければ何もすることがない人々に何かすることを与えるという価値があるが,これについては議論が分かれるかもしれない。確かに,積極的対策はコストがかかり,対象範囲を十分に絞らなければ,非効率となる。しかしOECDのジョン・マーティンがその報告書において指摘しているように,積極的労働市場対策の良さを過度に強調すべきではないが,持続的な高い失業率に取り組む上でこれらの対策が果たす潜在的役割は評価されるべきである。
ドイツが積極的労働市場対策に引かれるのは,ヨーロッパではめずらしいことではない。北欧諸国でもそのような対策を利用しており,また程度の差や企画の差異はあるものの,他の多くの政府でも導入している。しかし,多くの積極的施策の実績はまちまちであり,ドイツの経験はそれらの計画の限界を示している。東側では1992年に約388,000人が雇用創出計画に参加し,更に489,000人が職業訓練計画に参加した。しかし,積極的労働市場対策の有効性を疑問視する人々が増え,解雇の勢いが衰えるにつれて,これらの対策は予算を理由に徐々に縮小されていった。1998年1月には,新生州における就業準備計画及び職業訓練計画への参加者は,それぞれ177,000人と125,000人に減少した。しかし,失業率は労働力の約21%とまだ非常に高い水準にあった。このため積極的労働市場対策が再び導入され,その価値が再評価された。1998年11月には旧東独における参加者は,雇用創出計画が442,000人の最高記録,職業訓練計画が181,000人に達した。
長期的問題
多くのOECD諸国と同様,シュレーダー政権の主な優先政策は,失業,特に長期失業を減らすことである。というのもドイツでは,1年以上の失業者が全体の30%以上を占めているからである。従って,新政権は積極的労働市場対策のいくつかの基準を緩和し,1999年にはドイツ全体において1998年よりも多くの人々を積極的施策に参加させることになった。積極的労働市場対策のための総支出予算は1999年に16.1%引き上げ,GDPの1.2%に増額された。この数値には,建設労働者の需要低迷期に既存の雇用を守るための所得補助も含められている。これは失業保険給付及び失業扶助に配分される金額の半分強を占めている。
それでも旧東独地域における経験はあまりうまくいっていないという事実が残る。新しいサクソニー・アンハルト州を例にとってみよう。同州で行われた調査によれば,1990〜1997年までの8年間に実際に雇用されたのは,職業訓練計画参加者のわずか3分の1,雇用創出計画参加者の4分の1にすぎない。雇用された人々にとってはこれらの計画は効果があったが,残りの大半は再び失業状態にもどってしまった。
方法論の問題もあり,サクソニー・アンハルトの調査から,積極的労働市場対策が他の失業者援助計画と比べてどの程度有効であるかについて正確な結論を引き出すことは実際には不可能である。しかし,旧東独地域に関してより厳密なアプローチを取っている計量経済研究から得られた証拠の大部分が明らかにしているように,雇用創出計画は,失業給付に比べて,人々を再び定職に就かせることに関してあまり効果を発揮していない。しかし,訓練及び再訓練計画は,就業に関してはよりよい実績を上げているようである。もっとも旧東独地域に関する計量経済調査から得られた結果はまちまちである。
このような全体的に失望する結果となった理由はいくつか考えられる。雇用促進計画の参加者は失業給付の受給者に比べて職探しの時間が少ないのかもしれない。また,雇用促進計画の参加者は,失業に伴う所得補助の受給資格期間が長いことから利益を得ており,これが職探しに悪影響を及ぼしているのかもしれない。雇用促進計画が就業に結びつかないと思われるもう一つの理由は,これらの計画の多くは失業者の市場性のある技能をほとんど高めていないということである。実際,一部のケースでは技能の低下が見られるケースさえある。より一般的にいえば,旧東独地域であまり効果があがっていないのは,要するに移行期経済の未経験の状況に十分に焦点を合わせていないことが一因であるのかもしれない。
最善は善の敵
他の諸国における調査が示唆しているように,雇用創出計画は高い死重コストを伴うことになりうる。つまり,一人の雇用を確保するために通常必要なコストを上回る支出が必要になるということである。また労働者の配置替えが非常に多く行われ,全体の雇用が増えずに,人々の間で仕事の再配分が行われることもある。実際,ドイツ連邦労働省が西側と東側の企業について行った調査(文献参照)によれば,西側企業の14%と東側企業の22%は,彼らの受け取る賃金補助が補助金付きで雇用した労働者のより低い生産性に対する報酬としては高すぎると考えている。また,調査した西側企業の28%と東側企業の30%は,財政援助がなくとも同じ労働者を雇用したであろうと答えている。更に西側企業の17%と東側企業の22%は,雇用した者に対する補助がなかったならば,別の人を雇用したであろうと答えている。
積極的労働市場対策は維持していく価値があるのだろうか。その限界を考慮に入れるならば,確かに維持していく価値がある。積極的労働市場対策は効果を発揮しうるが,ドイツの新生州から得られた証拠は,それらの対策を問題グループに的を絞り,現在よりもうまく管理しなければならないという見解を裏付けている。積極的労働市場対策の職業訓練の内容を市場に適したものにすることは,施策の成功率を高めるための重要な要素であると思われる。また,これは死重コストの削減にも役立つだろう。積極的労働市場対策は明らかにドイツの失業問題を解決する特効薬ではない。というのも,OECDが最近の「雇用戦略」の詳細な勧告などにおいて強調してきたように,ドイツの失業を減らすためのカギは,賃金交渉をより柔軟にするなどの方法により,労働市場に構造改革をもたらすことにあるからである。とはいえ,失業率がOECDの平均を遙かに上回る新生州においては,積極的労働市場対策が貴重な補完的役割を果たすことになるだろう。
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