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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.219


 OECD Observer 日本語版

ミレニアムの挑戦課題

MIKE MOORE
DIRECTOR-GENERAL OF THE WORLD TRADE ORGANISATION

 シアトル会議は,新しい貿易交渉の開始やWTOの将来のプログラムと優先課題を設定する以上のものとなる。それは,WTOに対する信頼性をテストし,貿易自由化への国際的取り組みを象徴するものと見なされるだろうし,不確実な新しい世紀に入ろうとする今,世界の貿易システムの方向性と信頼性を左右するものとなるだろう。

 この貿易交渉の結果がどうなるかは誰にも言えない。絶対確実に言えることは,会議の成否が,アメリカとヨーロッパの政治的意志だけでなく,究極的には国際的なリーダーシップにかかっていることである。オスカー・ワイルドならばこう言ったであろう――大物たちが決着をつけようと相談する以上に悪いことは,彼らが決着をつけようと相談しないことである。

 世界の首脳がいかに困難な課題に直面しているかは誰もが知っている。問題のリストはすでにウルグアイ・ラウンドのときよりも長く,新しい問題の多くはすでに国境にぶつかっていて,統合された世界のなかで経済をいかにして組織するかという複雑な問題を提起している。

 しかしこうした挑戦課題の複雑さが,もっと根本的な現実をあいまいにするようなことがあってはならない。すなわち,WTOがグローバルな経済の主要な支柱となりつつあることである――すでにそうなっているとは言わないまでも。利害の数と多様性も拡大している。WTOはもはや先進工業諸国のこぢんまりしたクラブではなく,134カ国が参加するグローバルなシステムであり,中国,ロシアその他29カ国が加盟に向けて待機している。シアトル会議の課題の巨大さは,各国がこのシステムに期待する政治的な重要性の反映であり,それはこれら各国が開放的な世界市場と国際貿易にいかに依存しているかを示す。結局のところ我々は,社会問題を解決するために更に多くの仕事と資金をどうやって手に入れるべきかを,経験によって知っている。それはまた,統合された世界のために諸政策を調整し,考案することの差し迫った必要性を反映している。すでにこうした課題が提起されており,それは我々の意思とは無関係にミレニアムのテーブル上に並べられて,解答を要求している。


多数の優先課題

 優先課題を列挙してみよう。まず第1は,貿易の自由化である。ウルグアイ・ラウンドは1990年代初めの貿易問題を取り上げた。WTOが意味をもち,効果的であり続けようとするのであれば,いまは2000年とそれ以降の課題を取り上げなければならない。WTO加盟国は,ウルグアイ・ラウンドの事業の一部として,すでに農業やサービス,知的所有権の分野での交渉を開始している。こうした問題だけでも来るべき交渉のかなりの部分を占める。農業とサービスに関する交渉は,それだけでも世界の経済活動の80%が関係している。

 議題の拡大を求める多数の提案がなされている。世界経済が変化を続けているからである。プンタデルエステでは,だれもインターネットなど知らなかった。電子商取引などは存在しなかった。工業製品を交渉の舞台に乗せ,それまでの約束の実行にあたって各国の直面する困難を解決することが必要である。これにはほとんどの国が同意する。更に困難な課題は,投資や競争政策,政府調達の透明性,貿易の促進などのいくつかの「新しい問題」を交渉に含めるべきか否かである。貿易と環境――それにおそらくは労働基準――をめぐるWTOの将来の作業は,最も議論の紛糾する問題となる可能性がある。

 第2の優先課題は,開発途上諸国を貿易システム内に統合することである。開発途上諸国にとってはグローバリゼーションのプロセスは脅威ではない。これら諸国は,このプロセスから取り残される――周辺部にとどめられ,更に後退を強いられる――ことを恐れている。貿易はこれら各国にとって21世紀への架け橋である。それによって,市場だけでなく,投資や技術,ノウハウへのアクセスが可能になる。これがなければ,開発の夢はついにかなえられない。これら諸国が貿易と開放を拒否し,こうしてドアをぴしゃりと閉ざしてしまうようなことは,絶対に勧められない。次の世紀では,世界中の生活水準を引き上げ,多数の顧客と雇用を作り出すような開発が原動力となるべきである。

 第3は,グローバルな貿易のシステムを真にグローバルにすることである――中国やロシア,その他の加盟候補国をできるかぎり速やかに包摂することによって。中国だけでも,すでに世界第3の経済規模を有し,世界第5の貿易国である。中国は,その膨大な潜在力を実現するために,開放的な貿易システムを必要としている。適切な条件のもとでは,貿易システムの拡大は多国間システムを強化こそすれ,希薄にすることはない。


バインディング・リンク

 第4の優先課題は,グローバルな政策決定のための橋を架けることである。統合は問題を融合させて境界線をあいまいにし,環境や健康基準,人権,その他の諸問題と貿易システムの間を結ぶバ^kインディング・リンクという重要な問題を提起する。絶滅に瀕した生物種をどうやって保護し,持続可能な開発をどのようにして促進するか。ボーダレスな通信の時代に文化的なアイデンティティをどうやって維持するか。貧困の根絶,不平等の解消,労働基準の向上のためにはどうすればよいか。WTOは,こうした問題すべてに解答を与えることはできない。しかし同時に我々は,こうした問題に背を向けて,それはだれか別の人間の問題だとすることもできない。

 解答を見いだすことは容易でない。グロバリゼーションは全世界の人々の生活を変えようとしている――それと同時に,雇用や所得,社会的基準,科学,環境などに関する深刻な不安,更には恐怖を生み出している。この議論の中心には貿易がある。貿易は,経済と人々と諸問題を一つに結びつける,目に見える最も強い力の一つだからである。これ以下のことは期待できないし,期待してもならない。

Mike Mooreが1999年10月29日にベルリンの大西洋横断ビジネスダイアローグで行ったスピーチ「Seattle:What's at Stake?」の要約。全文はwww.wto.org/wto/speeches/から入手可能。


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