開発ラウンドのための覚書
JEAN-MARIE METZGER
HEAD OF TRADE DIRECTORATE, OECD
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貿易の自由化は,開発の段階いかんに関らずすべての国に大きな見返りをもたらす。今回の交渉のラウンドの成功のために,非OECD諸国の利害が特に重視されなければならない。その意味でこれを,一部の人々は開発ラウンドと呼んでいる。
貿易ラウンドの進行にあわせて非常にタイムリーにOECD報告書“Multilateral Trade Liberalisation
and non-OECD Countries”が刊行された。これによれば,対GDP比でも福利の増進という点でも,貿易自由化の恩恵は非常に大きい。この研究が行ったシミュレーションの結果は,関税の全世界的な完全自由化だけでも,2010年の世界の純福利の総額は,現在の関税保護の水準が変わらなかった場合に比べて1兆2,000億ドル(1995年価格)も多くなることを示している。これは世界のGDPが3%増えることを意味する。
福利の増大の対GDP比はインドが最大(9.6%)で,中国の利益も大きい(5.5%)。サハラ以南アフリカ諸国も全体としてGDPを3.7%増大させる。これら諸国を慢性的な低成長から抜け出させるに足る数字である。またこれは,年間増加額が110億ドルに達することを意味する――アフリカに対するOECD諸国の1997年の政府開発援助総額(113億7,000万ドル)にほぼ等しい額である。加えて,OECD研究によれば,国の経済の規模にかかわりなく,多国間(二国間ではなく)で合意された強力なルールと規律の枠組みの内部で行われる世界市場での貿易は,更にいっそうの利益を約束する。これは,多国間ルールが大きな国も小さな国も平等に競争できるように「競技場を平らにする」からである。開発途上諸国市場の相対的な小ささ,それゆえに輸出の拡大に対するその依存度の相対的な大きさは,これら各国が相対的な優位性に立つ分野が比較的種類の少ない財貨とサービスに限定されるという事実につながる。このことは,先進工業諸国に比べて,これら諸国が世界経済の健全な成長にそれだけ大きな利害を有することを意味する。
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日開放は利益をもたらす
アメリカが1993年に残存輸入制限をすべて廃止していたならば,アメリカ経済の純福利はおよそ190億ドル増大していたはずである。これは世帯当たり74ドルの増大に相当する。また,貿易の自由化が1993年のレベルで終わっていたとすれば,そうでなかった場合に比べてアメリカの熟練労働者の賃金水準は2013年までに推計2〜3%低下したはずである。賃金格差は小さくなるだろうが,それはすべてが貧しくなるからにすぎない(Open
Markets Matter, OECD, Paris, 1998)。
一方,保護貿易はEUにGDPの6%から7%のコストを課している。これはスペインの年間算出高に等しい。EUの貿易障壁の全体的水準はアメリカと変わらないが,経済パフォーマンスに対するその悪影響はアメリカよりも大きい。欧州単一市場では競争がそれほど激しくないからである(Patrick
Messerlin, Measuring the Costs of Protection in Europe, Institute for International
Economics, 2000年近刊予定。http://www.iie.com/)。
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