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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.219


 OECD Observer 日本語版

研究・開発のグローバル化と政府

DSTI.CONTACT@OECD.ORG

 科学技術の研究・開発はグローバル化しつつあり,プラスの影響をもたらしているが,各国政府は依然として不安を抱いている。

 OECD諸国における産業研究・開発の組織は変化しつつある。その証拠は,研究関連の対内・対外直接投資の相対的重要性が高まっていること,国際的な戦略的提携が急増していること,及び技術集約的製品の貿易が増加していることに現れている。外資系企業は,OECD諸国における製造業の研究・開発に対する総投資の12%を占めており,これらの諸国の大半では,この比率が増加するものと予想される。しかし外資系企業の比率は,日本の5%からアイルランドの60%以上まで国によって大きな開きがある。

 外資系企業が現地生産に大きく貢献している諸国,あるいは研究・開発が集中的に行われる製薬会社等の産業に外資系企業が集中している諸国では,産業研究・開発投資に占める外資系企業の比率が大きい。日本を除き,研究・開発が最も盛んに行われている上位7カ国では,1981年以降,研究・開発費のうち外国の資金源からまかなわれる比率が著しく上昇している。

 外国の研究所の数も,研究がどの程度グローバル化しているかを示す指標である。32社の国際的な製薬会社ならびにエレクトロニクス関連企業について行われた調査では,1985〜95年には,新しい外資系研究所の数がその前の10年間のほぼ3倍に増加していることが明らかとなった。しかし,製薬産業の経験は全産業に典型的に見られるものではない。というのも,規制が厳しい場合,参入戦略としては貿易よりも直接投資の方が有利となるからである。また,外国に新しい研究・開発拠点を確立することは,1980年代以降加速してきたとはいえ,一部の企業は,すでに第二次世界大戦前から外国に研究所を設置していた。しかしアメリカでは,外資系の独立した開発研究所が少なくとも635カ所あるが,そのうちの半分以上は1986年以降に設立されたものである。ヨーロッパでは,1995年に300以上の日本の研究・開発施設が存在しており,これは1989年の2倍である。
 

1980年代に研究・開発における国際的な戦略的提携が爆発的に増えたことは,科学技術系企業にとって有利なことであった。そのおかげで企業は外国の技術や市場にアクセスできるようになり,リスクを最小限に抑え,技術開発の高いコストを速やかに回収できるようになった。1980年から1994年までの期間に,科学技術提携の総数は年間10.8%増加し,これらの提携の約65%は異なる国の2社による提携であった。技術ベースの提携は,情報技術,バイオテクノロジー,先端素材産業において特に広く行われている。これらの提携はすべて,重要なノウハウがますます国際的に――ヨーロッパ,日本,アメリカといういわゆる三極に圧倒的に集中しているものの――広まりつつあるという意見の一致を証明している。


政府の不安

 これらの傾向すべては,全体としてはプラスのように思われるが,多くの諸国の政府は,対外投資の純受入国であれ,純供給国であれ,研究・開発のグローバル化について依然として不安を抱いている。供給国は,国内企業が研究・開発のより多くの部分を外国で行うようになれば,研究基盤の空洞化が生じることになると懸念を抱いている。これらの諸国は,技術革新が生産と同じように移動するようになれば,工業力や自立性が損なわれると不安を抱いている。一方,受入国は,外資系企業研究所は単なる情報収集源ではなく,国内の研究基盤により大きく貢献できるということに時折疑念を抱いている。実際,外資系企業の研究の集約度は,一般に国内企業よりも低く(アイルランド,オーストラリア,イギリス等の例外はあるが),従って受入国政府が研究・開発対外投資の国内経済に及ぼす波及効果を最大限に得たいと考えたとしても無理からぬことである。

 すべての諸国に共通に見られるもう一つの懸念は,国際的な合併・買収が研究・開発に及ぼす影響である。製薬会社や電気通信企業において見られた国際的な合併・買収の特徴の一つは,全世界において重複する活動の合理化である。どの研究所を残し,どの研究所を縮小するかと言う問題は,必ず不安の原因となる。


成長への貢献

 研究・開発のグローバル化に対する政策の反応はまちまちである。各国の政策は,研究・開発の対外直接投資を積極的に支援するものから,国内の研究基盤に外国が参加することについて厳しい規定を設けるものまで,実に様々である。政策がどのようなものであれ,各国及び地域の政府は,たとえ不安はあっても,ハイテク産業の少なくともサブセクションにおける外国の大きな存在は重要であるという点で意見が一致しているようである。これは,それ自体が目的として重要であるというわけではなく,それらの産業が経済に貢献するという理由で重要だということである。

 先進国では,科学技術を基盤とする産業は,他の部門よりも成長率が高い場合が多い。これは一つには,科学技術の進歩が生産性の伸びに影響を及ぼす主要要素の一つだからである。しかし,研究・開発への投資は経済にとって重要であるが,生産性向上の原因は,社外で開発された技術を利用したことにある場合が多い。また知識の蓄積はますます国境を超えたものになりつつあるため,国の成長は,技術革新がどこで生まれたものであれ,その技術を導入できるか否かにかかってくる。

 では雇用はどうなるのか。証拠は有望な見通しを示している。OECDの製造業の雇用は1980年から1995年の間に10%低下したものの,ハイテク製造業の雇用はそれほど低下していない。ヨーロッパでは,1980年代に,科学技術部門の雇用は,製造業及びサービス業の他の全職種よりも急速に増加した。同期間に,OECD諸国では,製造業の雇用において低技術の職種から中・高度技術の職種へのシフトが見られた。また科学技術系の新しい企業は優良な雇用創出源となっているように思われる。これらの企業は,技能労働を必要とする高賃金の仕事を創出する。従って,たとえ政府に不安があっても,また新しい科学技術産業の振興の成果がまちまちであっても,政府が関心を持ちつづけるのは意外なことではない。

 この記事は“Globalisation of Industrial R&D: Policy Issues”を基にしている。全文と詳細な文献は http://www.oecd.org/dsti/sti/s_t/index.htm より入手できる。


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