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賄賂の課税控除は協定により廃止しやすくなった。
最近まで,契約を獲得する方法として外国の公務員に賄賂を贈ることは,多くのOECD諸国においてごく普通のビジネスのやり方であった。外国で契約を獲得しようとする企業は,競争していくために,多くの場合,外国の公務員に賄賂を贈らなければならないものと考えていた。数カ国の政府は,これに反対する理由はないと考え,贈賄について税制上の優遇措置を与え,賄賂を経費として償却できるようにしていた。これらの政府は,外国公務員への贈賄を控除対象から外すことは,課税所得の稼得に伴う全ての経費を課税上考慮にいれるべきであるという原則に反すると主張している。これらの政府が挙げるもう一つの議論は,賄賂を課税控除できなくすることは,賄賂の有効原価を変えることにはなっても,外国の公務員への贈賄を抑止する方法としては効果がないということである。いずれの議論にも欠陥がある。最初の課税原則論では,すでに交際費などの合法的経費のための例外が設けられており,また国内法の下で違法とされる特定の支払いがある。抑止効果については,もし企業が賄賂について課税控除を受けられるのであれば,賄賂を贈らないことについてどのようなインセンティブがあるのだろうか。
OECDは簡潔な議論を展開している。それは,賄賂の課税控除を認めないことは,汚職一掃に対する共通の国際的コミットメントの政治的に目に見える強力なシンボルとなるというものである。課税控除の廃止を贈賄の有罪化と組み合わせれば,有力な影響力となる。従って,1996年4月,OECDは,「外国公務員への賄賂の課税控除に関する勧告」を採択し,外国公務員への賄賂の課税控除を認めている加盟国に対し,この課税控除を廃止する意図でその法律の見直しを行うよう要求した。1997年5月23日に採択された「国際商取引における贈賄の一掃に関する勧告」はこの要求を更に強化した。
当時,すべてのOECD諸国が賄賂を税制上有利に扱っていたわけではない。実際,加盟国の約半数は,外国公務員への賄賂の課税控除を認めていなかったが,その理由は様々であった。1996年,外国公務員への賄賂の課税控除を原則として認めていなかったのはわずか14カ国にすぎなかった。カナダ,イギリス及びアメリカは,国内における賄賂が不正な性質のものであったため,課税控除を認めていなかった。実際,例えばイギリスでは,贈賄の申し出,贈賄の同意,請求,受入れ,及び支払いのいずれであっても,それが犯罪の一部となれば,汚職防止法の対象となり,課税控除を受けられない。ポーランドの法律では,贈収賄は違法であり,贈賄者にとっても収賄者にとっても犯罪となり,両者とも罰せられる。
他の諸国で採択しているアプローチは,それほど明確ではないようである。例えば,チェコ共和国では,全ての賄賂を贈物として分類しており,その大半は課税控除できない。日本では,賄賂は交際費として分類されており,これらは当然のことながら,課税控除できない。フィンランド,ギリシャ,ハンガリー,アイルランド,イタリア,韓国,メキシコ,スペイン,トルコなどの数カ国では,外国公務員への贈賄は,課税控除の利く経費として認められず,従ってたとえこれらの諸国の一部において贈賄を禁止する明確な条項がなくとも,それらの課税控除は認められていない。デンマーク,アイスランド,ノルウェー,スウェーデンでは,外国公務員への贈賄は,それが証拠書類による裏付けのあるビジネス経費であり,収賄者の国においてそれが慣習的に行われている場合に限り,課税控除される。
残りの諸国――オーストラリア,オーストリア,ベルギー,フランス,ドイツ,ルクセンブルク,オランダ,ポルトガル,ニュージーランド,スイス――では,外国公務員への賄賂は,少なくとも原則的には,未だに他のビジネス経費と同じように課税控除される。実際には,賄賂の課税控除は認められない場合が多い。というのも,その経費が問題の取引の必要な一部であったという事実を裏付ける証拠書類が不充分だからである。また外国公務員への賄賂の課税控除は,一般に,収賄者の身元を税務当局に公開することを条件としており,納税者は,当然のことながら,これを渋る。
次なる措置
1996年の勧告が採択されて以来,大きな前進が見られた。この3年間に,関係加盟国は,外国公務員への賄賂の課税控除に関する法律の見直しを行った。実際,その大半は法案を可決しており,法案が議会において未決である国はごく少数にすぎない。OECD協定の非加盟調印国に関していえば,アルゼンチン,ブルガリア,ブラジル,及びスロバキア共和国は,外国公務員への賄賂の課税控除を認めないと宣言している。
これらの改革が贈賄を抑止する上でどの程度効果があるかは,納税者に法律を遵守させるためにどのような措置が講じられるかにかかっている。今後定められるOECDの「外国公務員への賄賂を発見するための監査ガイドライン」は,疑わしい支払いを突きとめるための会計検査を行う際に用いるべき最善のテクニックについて租税検査官を訓練することにより賄賂の抑止に役立つだろう。例えば,これらのガイドラインは,企業が政府と相当の取引を行っているか否かを明らかにし,通常の納入業者でない者にたびたび支払いが行われていることを精査するための勧告が盛り込まれる。
フォローアップのメカニズムは,贈賄防止協定及び手段を有効に実施するために極て重要である。OECDは,各国の法律が協定により定められた基準に確実に合致することを非常に重視している。しかし結局は,協定を実施する法律及び租税分野における贈賄防止手段を実行するか否かは各国次第である。もし各国がそれらを実行するならば,贈収賄との闘いが成功する確率は高いだろう。
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アンチ・コラプション・リング
有効な汚職防止キャンペーンの重要な要素は,各国,国際機関及び市民団体により講じられた各種措置に関する情報ならびに経験を共有することである。このことを念頭に置いて,OECDの汚職防止課は,地域ネットワークを含む広範な情報センターをウェブ上に開設した。参加国及び参加国際機関は,国ごとの汚職防止対策に関する関連情報,調査結果,研究報告,その他技術援助計画を含む腐敗防止関連の情報を絶えず地域のウェブに提供している。
これまでに3つの地域ウェブが開設されている。1998年10月に開設された最初のウェブは,「移行期経済のための汚職防止ネットワーク」(Anti-Corruption
Network for Transition Economies)と称し,中東欧諸国及び旧ソ連をターゲットにしている。この地域における公共部門の汚職の改善に関心のある全関係者――政府,企業,市民団体,個人――は,このネットワークを通じて活動志向のデータを共有することができる。第2のウェブは,アジア太平洋地域のものである。これにはアジア開発銀行とOECD共催による汚職防止活動に関する定期フォーラムが含められている。第3のウェブは南東ヨーロッパ地域のものであり,「南東ヨーロッパのための安定化条約汚職防止イニシアティブ」の一部を成し,その監視を助けている。
これら3つの地域ウェブは,汚職及び贈収賄に関する最大の情報センターの一つに組みこまれている。これはアンチ・コラプション・リング・オンライン又はAnCorR
Webと称し,3,000以上の書籍,雑誌,新聞,その他の記事の参照,並びにダウンロードできる,又はオンラインで見る汚職防止関係のドキュメント,例えば,法律,国際条約,汚職防止戦略,その他の汚職防止情報などのドキュメントの宝庫である。汚職防止専門家及び個人は,汚職防止活動を計画し,実行するために,具体的な情報を得る必要があり,AnCorRは,汚職のあらゆる面を評価するために必要な質的・量的知識を提供してくれる。またAnCorRは,援助国が世界各地の現状を把握することに役立ち,その援助計画を調整するためのリアルタイムの作業ツールを与えてくれる。
AnCorR Webは,政策対話のための場を提供し,地域の率先的措置への直接アクセスを提供することにより,専門家及び一般大衆が世界各地における汚職との闘いの情報を常に把握することを可能にする。AnCorRは,多くの提携組織により支えられている。その主なものは,パリのアメリカン大学,バーゼル大学法学部,OECD経済産業諮問委員会(BIAC),マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF),ソルボンヌ大学ラテンアメリカ研究所,国際商工会議所(ICC),OECD労働組合諮問委員会(TUAC),世界銀行,及び安定化条約である。■F.W.
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