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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.221/222


 OECD Observer 日本語版

グローバルな経済における責任あるビジネス行為

MARIA LIVANOS CATTAUI,
SECRETARY-GENERAL OF THE INTERNATIONAL CHAMBER OF COMMERCE

 今や企業は国民の厳しい監視にさらされている。これにどう応えるべきか?

 今日の企業は,儲かる商売をし,株主に利益を与え,消費者のニーズをかなえ,公正な賃金と良好な労働条件を従業員に提供するという伝統的な目的を越えて,いくつもの挑戦課題に直面している。

 ビジネスに対する要求はますます声高になっている。グローバリゼーションのプロセスそのものが,環境と社会の進歩のために企業がなしえ,そしてなすべき貢献について,社会の期待を強めているからである。

 こうした課題に,企業は明確なビジネス原則によって応えようとしている。それは,ビジネスの遂行にあたって社会の責任ある構成員として行動することを約束する。

 公式に表明されるか,明文化されない企業文化の一部を構成するかはともかくとして,こうした諸原則の設定にあたって企業は,なににもまして,顧客や従業員そして株主に対する経済的な責任と,グローバルな市民そして事業を展開する地元地域の構成員としての責任の間でバランスを維持しなければならない。

 ここで問題となっているのは,企業が社会のなかで占めるべき位置である。それは,環境や労働条件,人権などの様々な領域における進歩に,企業がみずからの影響力の範囲内でいかに貢献できるか,あるいは貢献すべきかに関する一連の問題を提起する。こうした問題の多くは,グローバルな経済のなかでのビジネスの役割に関連し,グローバリゼーションに対応する場合のビジネスと政府のそれぞれの役割に関係する。

 企業は,適正な企業行動を通じて模範となることによって,またフィランソロフィー活動の分野で行動することによって,多くのことをなしうる。企業は,本来は政府の領域に入るような責任を引き受けることを期待されてはならない。それゆえにビジネス界は,法の支配を尊重し,その実現に努める安定した効率的な政府に明確な関心を抱く。

 企業がそれ自身の経済的領域の外にある問題の解決をますます強く期待される理由の一つは,グローバリゼーションの肯定的側面に対する貢献者と見られているからである。これは正しい。様々な国際機関による調査は,多国籍企業が事業を展開する国の生活水準の向上に貢献していることを明らかにしている。

 企業に多くのことが要求されるのは,それがグローバリゼーションの実現の主たる推進者だからである。実際,ビジネス企業の刺激がなければ,グローバル経済の実現は想像することさえ困難である。

 唯一の効果的な対応は,企業が責任と説明義務を負うことを身をもって示すことである。これは,ビジネス界が対話と論争に参加し,恐れずにみずからを正当化し,社会におけるその建設的で不可欠の役割を説明しなければならないことを意味する。

 ビジネス界は,何よりも以下のことを示さなければならない。

  • グローバルな経済発展が,各国内と各国間の繁栄を増進し,特に開発途上世界の何百万の人々に彼ら自身とその子孫の人間らしい生活を確保するための機会を作り出す最善の道であること。

  • 企業は,自身の企業行動の諸原則を適用することによって,善良な企業市民であるという信用を最も確実に確立できる。こうした諸原則は,正式の規範や明文化されない価値観,あるいは企業活動を導く手順の内部的な監視・評価・報告などの形をとる。

  ビジネスの諸原則が効果的であるためには,企業自身によって作成され,制定されなければならない。それは,公式のものであれ非公式のものであれ,企業間の文化的な多様性に架橋し,社会的な価値と関心に対する認識を強化するうえで,重要な役割を果たすことができる。

 環境管理や職場の安全と健康,倫理性や高潔性などの具体的な問題に関する内部的なガイドラインや手続きは,しばしばビジネス諸原則を補完する。

 企業の諸原則は,企業活動を行う各国の状況に適したものでなければならない。「共通サイズ」方式が機能しない理由はここにある。企業が直面しなければならないまったく異なる外的条件を別としても,企業自身が相互にまったく異なっている。それぞれの歴史,企業文化,事業の性格とその目的,地理的な位置,規模,こうした要因のすべてが考慮されなければならない。

 結局のところ,問題となるのは企業の行動であって,公式化されたビジネス諸原則の存否ではない。

 政府その他が定める外的な規範は,外的な基準としては意味があるとしても,企業自身が制定する任意の原則の効果的な代替物とはなりえない。規範を強制し,企業の適合状況を検査する権利があると主張する無責任な外部集団の要求は,どうしても非生産的となる。

 ビジネスの諸原則を制定するという企業の決定は,外からの圧力に応えてというよりも,従業員のためにみずからの価値観を表明するという自身の欲求に根ざすべきである。それを外に向けて広げるかどうかは,企業自身の決定でなければならない。

 環境や社会的進歩に対する企業の貢献を確実に拡大させるためには,明らかに,外から課せられるあらかじめ定められた規範や規則を通じるよりも,説得と内からの圧力によるほうがよい。ビジネスは,個々の企業の行動を判定するために部外者が「ソフト・ロー」のような規範やガイドラインを用いることに反対する。

 多国籍企業に対して普遍的な行動規範を課そうとする試みの不毛さは,国連の多国間企業委員会で13年間続けられた交渉の失敗によって十分に実証されている。この努力は,結局,規範の諸規定に照らして個々の企業の行動を判定する施行手続きを導入しようとして,頓挫してしまった。

 ビジネスによる任意のイニシアティブや諸原則の多様さは,無益であるどころか,責任あるビジネス行動を考案する創意工夫の源泉である。まさにこうした考えから,国際商業会議所(ICC)は,世界のビジネス界を代表して,人権を推進し,労働条件を改善し,環境を保護するためにアナン国連事務総長の提案するビジネス界と国連の間のグロ−バル協定を支持しているのである。

 アナン国連事務総長は,世界人権宣言と,国際労働機構(ILO)の「職場の基本原則と権利に関する宣言」,そして持続的発展に関するリオ「地球サミット」宣言などに表明されている普遍的に合意された諸価値に言及した。

 この3つの宣言は,主として各国政府に向けられたものであるが,ビジネス界にも関係し,個々の企業がそれぞれのビジネス原則を制定するに際して利用可能な諸価値の包括的な枠組みを提供している。

 更に多くの企業が,ビジネス界その他の組織が作った一般的なビジネス規範を支持しており,しばしばそれらの文言の一部を自身の内部的な行動規範に組み込んでいる。

 そのあるものは,例えばOECDの多国籍企業ガイドラインのように,広範な勧告を行っており,別のものは,もっと具体的な,あるいはセクター別のガイドラインを定めている。例えば,ICCの「国際ビジネス取引における逸脱と賄賂に関する行動規則」や「持続的発展のためのICCビジネス憲章」,マーケッティングと宣伝に関するICCの各種規範などである。

 企業の行動規範は,外から押しつけられたものではないという意味において任意であるが,ただそれだけの理由で,それには実効性がないと考えられてはならない。事実,企業規律によって,その実行を確実にすることができる。

 今日の企業は,企業市民としての高度の水準を維持していると認められることを必要としている。企業は,その行動に対する外部の反応に敏感でなければならない。透明性と効果的なコミュニケーションが不可欠のファクターとなっている。

 おそらく企業は,対話と論争に参加して,オピニオンリーダーやもっと広い世論に対して,みずからを効果的に規制できる世界の肯定的な勢力であることを身をもって示すよう,かつてなく強く要求されている。

 つまるところ企業は,貧困の絶滅と生活の質の向上に大きく貢献している。企業はこれを,富と職を作り出し,科学・技術の進歩を促進し,競争の刺激のもとで製品とサービスを不断に改善してゆくことによって実行している。

 ICCは,世界のビジネス組織として,このことを伝えるのに最も適した位置にいる。そのための一つの方法が,グローバル協約に対するビジネス界の貢献を伝えるウェブサイト(www.iccwbo.org)の専門セクションである。本書の読者にぜひ勧めたい。


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