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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.221/222


 OECD Observer 日本語版

我等人民! NGOの視点

MARTIN KHOR
DIRECTOR OF THE THIRD WORLD NETWORK
TWNET@PO.JARING.MY

 現在の形でのグローバリゼーションでは,期待される利益は得られない。市民社会,なかんずく開発途上国の市民社会は,このような利益が得られるようにしなければならない。

 数年前,すべての国と人民が自由市場および自由民主主義という共通の目標を受け入れるのに伴い,ある人は「歴史の終り」あるいは(物理的なものであれ思想的なものであれ)衝突の終わりを予言した。

 しかし,冷戦終結は,普遍的な繁栄や連帯をもたらすものではなかった。逆に,我々は,新しいミレニアムの始まりに当たって,前のミレニアムから引き継がれた重大な危機に直面している。貧困は以前にもまして頑強に根付き,国家間,社会階級間,男女間,土着の人々と彼らの資源を搾取しようとする人々との間の不平等が拡大している。平和と安全の代わりに,衝突と不安定が存在する。その一部は,グローバルな圧力,不平等や貧困に起因する。環境の危機が地球や人間の生存に疑問を投げかけている。原子力,毒性化学物質,遺伝子工学などのように,技術が好ましくない方向に向かうというリスクもある。医療の分野においては,過度に使用される抗生物質が病原菌やウィルスに打ち負かされるようになって,科学者は抗生物質の時代の終わりを予測しており,新しい伝染病の脅威が出てきている。

 我々の時代のもう一つの特徴はグローバリゼーションである。この事態に対して様々な態度が見受けられる。ある者は,これは不可避的な現象で基本的にはよいことであり,我々はこれに適応しその利益を享受しなければならないと言う。またある者は,コストについて心配し,敗者のために安全ネットを設けることを主張する。実際のところ,グローバリゼーションの本質は,大会社および大金融機関が他企業の買収によってその力を強化し,事業を拡大し,利益を増大するための努力である。彼らは,富裕国である自国の政府に対し,世界中の市場なかんずく開発途上国の市場への,完全に自由なアクセスを妨げている各国の障壁を取り除くよう,ロビー活動を行った。

 開発途上国は植民地時代に苦難を経験しており,独立の初期段階で,多くの政府は,弱体な国内企業,銀行および農場を強化するための措置を導入した。国内経済のために積極的差別是正措置をとり,略奪的な外国の大企業から守ったのである。現在,外国大企業は,障壁を取り除くことにより,開発途上国の国内企業・農場を乗っ取り,自分たちの独占を強化しようとしている。そこに貿易,金融および投資の自由化が持ち出される。他方,大企業やその政府が自由化により損をするような場合には,保護主義に訴えるのである。例えば,知的所有権に高いハードルが設けられているが,これは技術移転を妨害するためである。

 現在行われているグローバリゼーションは,一種のアパルトヘイトと言える。グローバリゼーションというのは誤解を招く言葉である。「グローバリゼーションの利益をより適切に分かち合い」「疎外された者」を助ける,という言葉が語られはするが,実行は回避される。これはグローバリゼーションは利益だけを生むということを前提とするものである。しかし実際は,一部の者が他の者より多くの利益を得るのだ。現実には,グローバリゼーションは,一部の者に利益を生むが,他の者に損失を生じさせる。そればかりではない。勝者の利益の一部は,敗者の損失になる。

 グローバリゼーションは,植民地主義の新たな形態である。人民が奴隷制度,アパルトヘイト,植民地主義と闘った際は,奴隷制度,アパルトヘイト,植民地主義の利益をより適切に分け合うなどは言わなかった。人民は,システム自体と闘った。従って,我々も,グローバリゼーションの利益をより適切に分け合うなどと語るわけにはいかない。我々は,グローバリゼーションのシステム自体と闘わなければならない。


力の問題

 問題の核心は,世界で力と富とが不平等に配分されているということである。我々はこのことを認識するべきであり,問題を回避してはならない。力と富を持つ者は,これを確保し,守ろうとする。そこから,口にすることと実際に行うこととの間に二重標準が生まれる。

 地雷を禁止するキャンペーンが成果を上げたが,これは,人民の運動の勝利である。他方,核大国は,依然として核兵器の禁止に反対する。国レベルで,透明性および民主主義について多くの論議と制約がある。我々NGOは,それぞれの国でこのキャンペーンに加わった。他方,大国は,国際的なレベルで民主化に反対している。グローバルな決定は,主としてG8やOECD,ブレトンウッズ体制,WTOで行われるのである。しかも,この決定は,市民社会は言うに及ばず,小国の適切な参加なしに行われる。

 国連はどうしたのだろうか。国連は,非効率的だから非力になったのではない。あまりにも透明性が高く,民主的で,すべての国の参加を得て決定を行うから非力になったのである。安全保障理事会はこれの例外である。国連の決定は,1国1票の投票で行われる。これは少数派である大国にとって不利であり,大国は,1990年代初期に国連を改革・再編成し,経済・社会問題に関する権限をIMF,世界銀行およびWTOに移転した。IMFや世界銀行の投票権は,出資額に応じて与えられる。WTOは特殊な意思決定システム(悪評高い「舞台裏の取引」を含む)を持っており,重大な時に開発途上国の大半が疎外された。

 このような事態を続けてはならないことは明らかである。グローバルな制度を民主化し,そこに民衆の権利を導入しなければならない。そのためには,大国は,国際機関および国際関係に対する支配をゆるめることに同意しなければならない。彼らにそれを行わせるためには,民衆や市民社会がこれを要求することが必要である。

 金融市場や多国籍企業のような民間部門でも,民主化と透明性が必要である。これらの買収および合併を通じた富の集中や,金融投機を通じて小国の富を収奪する能力に対する懸念について声を大にする必要がある。要するに,金融制度・機関の変革が必要である。

 多国間貿易システムについても変革が必要である。WTOの運営原則が混乱を招いている。その多くの合意に欠陥があり,改める必要がある。例えば,開発途上国の輸入自由化につながる農業に関する取決めは,何百万人もの農民の生計や食糧安全保障を脅かす。地元での消費のための開発途上国の食糧製品は,輸入自由化および国内補助に関する協定による義務の対象から除外されるべきである。知的所有権に関するTRIPS協定は,医薬品の価格を引き上げ,技術移転を阻害し,生物資源の盗用を助長することだろう。保護主義でなく自由化の促進を目的とする貿易機関としては,何と皮肉なことだろう。

 他方,国連は強化するべきである。もちろん,改革も必要である。特に,意思決定の仕組みおよび安全保障理事会の改革が必要である。富める国は,国連に対する支払いを停止するべきではない。国連の将来は,経済・社会に関する政策決定において以前の役割を取り戻せるかどうかにかかっている。世銀,IMFおよびWTOは果たすべき重要な役割があるが,適切な政策を推進し,より妥当な規模での役割を果たすのでなければならない。

 そこで,我等人民は,外交官や官僚の繊細な言葉,用心深く礼儀正しい言葉使いを超越する必要がある。貧困,紛争,富の不平等の根源を認識してこれを取り除かなければならない。その際,まず始めに,奴隷制度,封建制度および植民地制度という巨悪を打破するために闘った人たちに敬意を表さなければならない。普通のそして貧しい人々,小農および小作人,工場労働者,失業者ならびにホームレスに権利を与えるために闘った人たちである。望ましい環境を享受する権利のために闘う人たちである。有害な廃棄物の投棄と闘った地域コミュニティである。森や川の破壊と闘う地元の人々およびその支援者である。土地改革,所有権,まともな賃金や労働条件,スラムやプランテーションの貧しい人々のために命をかけて闘っている人たちである。

 歴史は終わるわけではない。我々は,このような変革の担い手の精神と教訓を取り入れ,新しい時代に闘いを受け継いでいくことを誓う。我等人民は,社会的正義が守られ,生態学的に持続可能で,平和で安全な世界を求めて運動を進める努力をすることができる。我々は,世界各国の政府およびOECDのような機関に対し,我々と力を合わせるよう求める。しかしながら,彼らの協力があろうとなかろうと,我等人民は,前進を続け,よりよい世界をもたらす使命を達成するほかに道がない。

*本稿は,2000年5月22日,ニューヨークの国連総会議場におけるミレニアム・フォーラム開会式でのスピーチに基づく。


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