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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.221/222


 OECD Observer 日本語版

山小屋のひげ男たち

DOUGLAS C. WORTH
SECRETARY-GENERAL OF THE BUSINESS AND INDUSTRY ADVISORY COMMITTEE TO THE OECD (BIAC)

 政府は企業のニーズに敏感でなければならないという要件は,新しい経済の時代になおさら重要性が高い。

 政府が姿を消すのを望んでいるのは,山小屋のひげ男たちだけである。他の者たちは,一定の個人的「主権」の委譲は,人間の弱点に対する若干の抑制の対価として妥当であると考えている。

 また,幸いなことに,残りの者たちは,市場を基礎とする経済は,これまで試された他の経済形態よりもすぐれていると考えている。商業は,人間の自然の本能に近いものがある。市場は,共通の表現方法ないしは言葉の基礎を我々に与えてくれた。正直な所,我々は,この極めて拘束力のある概念の利益をやっと享受し始めたばかりである。

 グローバリゼーションは,この共通点の認識の普及に際してのスローガンである。グローバリゼーションは,人間の他のすべての営みと同様に,厳しい側面がある。私は,政府,更には業界団体から,「人間の顔を持ったグローバリゼーション」という趣旨の言説や行動が次第に頻繁に出てきていることに当惑を覚えている。このような防御的な姿勢をとる政治的な根拠ははっきりしているが,私としては,これは,人々がグローバルな市場の出現に取り組む際の論理の大きな誤りであると考えている。実際のところは,グローバリゼーションはすでに人間の顔を持っている。つまり,グローバリゼーションに関与しているのは人間だけだからである。

 市場経済における世界の不平等を責めるのは的外れである。非市場システムは,大多数の民衆に貧困を味わわせ,不満を抱かせたというのが真相である。市場はまさに解決方法なのであって,問題なのではないという共通認識は比較的新しいものである。

 このグローバルな現象の中心にあるのは,個人ないしはグループで企業を営む起業家,すなわち富の報酬を創出する冒険家である。起業家または企業は,人間の弱点を抑制することを目的とする諸制度のただなかにある。

 それはそれとして,このようにすべての側面について手当てすることは,悲惨な結果を招くという健全な認識が強まりつつある。制度上の措置によりイノベーションが押し出されると,完全な破綻が生じる可能性は小さくなるかもしれないが,変化に対する抵抗という代償には計り知れないものがある。というのも,そもそも創造的な精神を育むのは,変化,すなわち,ある措置は他の措置に比較して適切でない,他の措置の方が良いという認識にほかならないからである。市場が機能するためには,過ちを犯す権利がなければならない。

 他方,企業は,肯定的な期待から生まれるというその性質や,市場の需要に対する反応によって動かされるものである。企業の経営者は,一部の者が言うこの新しい経済のパラダイムの要素について,各部門の横断的な共通性を見出す度合いを強めている。

 将来の繁栄のために準備している民間企業の戦略および営業活動には様々なテーマがある。マクドナルドのファーストフードからノキアの電話機に至るまで,また,フォルクスワーゲンの自動車からソニーの家庭用電子機器やタタのソフトウェアに至るまで,企業は,自社のブランドの導入,売り込み,管理に努力を傾注する。人間には様々な相違があるものの,結局のところ,多くの製品やサービスについて共通の好みがある。重要なのは,これらのテーマのそれぞれが,世界中のあらゆる政府レベルの公的政策の立案者にとって密接な関係があるということである。

 農業,小売業,銀行業,鉄鋼業,半導体産業のいずれかを問わず,あらゆる部門において,イノベーションにはプレミアムがつく。企業モデルへの技術の応用は普及し,成功か失敗かの相違をもたらすことがしばしばあろう。企業の潜在的な規模は,大きかれ小さかれ,グローバルとは言えないまでも国際的である。また,消費者の選択肢の幅の拡がりは驚くべきものになろうが,競争も激烈になろう。

 その結果,利益幅は縮小し続け,成長が不可欠になろう。

 製品志向が最も高い企業でも,その人材を有効利用する。その結果,企業の組織は階層性が減じ,雇用はこれまでより流動的になる。貿易と投資は,すべての国際企業戦略に溶け込む。

 グローバルに競争力がある企業についてのどの事実にもまして,最も重要であるが最も理解されていない事実に注意を喚起したい。すなわち,スピードである。このこと,つまり景気循環を通じた投資のスピードは,民間企業において新しい現象である。このような急激な変化の源泉は,技術のお陰で自己増殖し,民間企業モデルの管理によりモデルの構成をめざましいスピードで変化させることを可能にする発明である。また,この発明は,これらの新しい商品やサービスの顧客に新たな可能性を提供しつつある。これは,時によって,需要を極めてすみやかに変化させる結果,最もすぐれた予測者でさえついて行けない。技術企業においては,モデル構築者は,「ウェブ年」,すなわち3カ月の単位で物事を考えるようになっている。

 広い意味の経済における持続的成長の本質は,新しい技術の応用の急激な高まりである。技術の応用により,同じ「モデリング」および新しい市場の可能性が事業や産業全体に広まる。

 いずれの政府も民間部門のミクロ経済モデルを形成する一連の政策を策定し,その結果,公共部門の重荷が生じ,民間企業はこれを自ら市場に背負って行くことを余儀なくされる。その最も分かりやすい例が税負担であるが,様々な政策は同様のミクロ経済コストを無数に生み出す。

 他の例としては,過剰な労働者保護規則,うまく機能しない教育制度,規制の要求,市場規制措置,関税などがある。相当程度において,先進国における成長率の相違に関する議論は,国が企業に課する要求の程度にかかっている。


素早い政府

 企業と政府が,協働しないまでもお互いに相手を理解する必要があることは明らかである。その一つの理由は,競争力のグローバルなアルゴリズムや素早い調整を免れることができる民間企業はほとんどないということである。民間企業の営業マージンに比較して公共の負担が極めて大きいので,反応が素早い,効率が高い政府は,その民間部門の比較優位や競争優位を強化する上で大きな影響を及ぼし得る。

 実際,企業が変化に反応するスピードは,政府の政策および規則に直接結び付いている。このスピードは,限界的な生産性しかない活動から大きな成長可能性を持つ活動に資源を転換しなければならない時に決定的に重要な意味を持つ。これこそ,シュンペータ博士言うところの創造的破壊である。問題は,マージンが小さく,製品寿命が短くなる場合,政策を競争力の強化に合わせ,障害なしに調整が行われるようにすることが,政府にとってなおさら緊要になることである。さもなければ,シュンペータの均衡の創造的役割は阻害され,致命的な打撃がもたらされる。

 民間または半官半民の部門において競争力がない場合は,非効率が経済全体に波及し,資源配分を歪曲し,顧客のコスト構造に影響を及ぼす。このようなことが起こらないようにするのが政府および企業の利益になる。

 政府がこのような現実を無視する程度に応じて,政府の政策の欠点が商品やサービスの価格に反映されよう。これは,ミクロ経済的影響である。この価格上昇は,労働力の生産性と国民の生活水準に影響を及ぼそう。これらは,マクロ経済的影響である。要するに,拙劣な政策の影響は取り除かれることもなければ,忘れ去られることもない。いずれ支払い時期が到来するということである。

 このような中で,OECDのフォーラム2000は,他の大部分の政府間「討議」とは大幅に異なったものになる可能性がある。その分析の基盤,すなわち知的厳密性および企業その他の主体を広く包含していることが,特に巷間でグローバリゼーションに対する反対が高まっている現在,重要である。フォーラムは,「公式の」議論の中に反対の声を加えることにより,関係当事者に意見を述べさせ,また,これに対する批判を聞かせることができる。誰もが,喧しさや人数ではなく論理や厳密な吟味に基づいて,自分の立場を主張しなければならない。これはOECDでは何ら目新しいことではない。OECDは,国際政治の政策討議において,常に企業および労働者の代表者の意見を求めてきた。OECDが求めるのは,招請された人々が議論に耳を傾け,明確に自分の意見を述べることである。招請された人々は,その主張に道理がある限り,影響力を持つことが可能であろう。これこそパートナーシップが意味するところである。我々は,それ以上のことは求めない。


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