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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.221/222


 OECD Observer 日本語版

ニューエコノミーにおける労働者

JOHN EVANS
GENERAL SECRETARY OF THE TRADE UNION ADVISORY COMMITTEE TO THE OECD

 労働組合は,新しいグローバル経済においてどのような役割を果たすべきか?

 世界中の経済・社会に影響を及ぼす急速な技術の変化によって,企業間の業務が変化し,生産と取引に新しい形態が生じ,新しい形態の労働が創出されたかもしれないが,ニューエコノミーが旧来の経済のもたらす社会的問題を取り除いているとは到底言えない。

 現在の変化は,極めて不平等な世界の基盤の上に生じている。「amazon. com」とアマゾン川との間のギャップは拡大しつつある。過去数十年間のグローバリゼーションは,世界経済における不平等を縮小するどころか拡大した。世界で最富裕の5分の1に入る国の1人当たり所得は,1960年には最貧の5分の1に入る国の30倍であったが,1990年には60倍,1995年には74倍に急増した。移動電話やコンピューターの利用が増加したとしても,貧困国の住民が清潔な飲料水や基礎教育を得られるのでなければ,開発には結び付かないであろう。

 OECDの先進国の内部でも不平等が拡大し続けている。多くの国で,貧困線を下回る労働者数が懸念を生じさせる水準に達している。アメリカでは,フォーチュン500社の最高経営責任者の平均給与の生産労働者の平均給与に対する比率は,1980年に42対1であったのが,1998年には419対1に上昇した。OECD諸国の若年失業者は,働き手が1人もいない家計で集中的に増加している。若年失業者は,労働市場から切り離され,社会から疎外されている。新しい技術にアクセスできる者とそうでない者との間の「情報格差」によりこのような社会的格差の拡大が加速するのを防ぐことが今日の課題である。

 一部のOECD諸国においては,臨時雇用や渡り労働の増加により,多くの労働者が満足感よりも不安感を高めている。しかし,在職期間に大きな変化が見られなかった諸国においても,過去のOECDの調査で不安感の高まりが記録されている。変化の加速や労働のプレッシャーの増大から,更に不安感が高まっている。それ自体でも好ましいことではないが,経済的にも非効率的である。不安感や恐れの増大は,高度パフォーマンス経済を構築するのに貢献しない。

 このような課題に対処するためには,効果的な公共政策をとることが必要である。まず第1に,政府は,自らの経済政策により潜在的な生産性向上を現実の社会的・経済的利益に転換できるようにして,完全雇用達成の目標を復活させるべきである。租税・消費者政策から競争・反トラスト政策の執行にわたる分野における規制メカニズムを時代に合ったものにすることも必要である。

 労働市場規制の面では,労働者が社会的保護やまともな賃金,雇用保障を放棄することを期待する「弾力性」といったような単純な考え方から一歩踏み出す必要がある。知識ベースの経済において競争優位は,教育・訓練に対する投資の基盤の上に築かれた強固な社会的結合力があり,かつ,変化をもたらすための効果的な発言権および手段を労働者に与えるような堅固な労使関係を持つ諸国にある。言い換えれば,新しい時代で最も繁栄する国は,適応および活力という市場のプレッシャーと雇用保障および尊厳という社会的考慮とをバランスさせることができる制度を持つ国であろう。

 政府にとっての重要な優先事項は,教育・訓練に投資するとともに,教育・訓練を,変化する(そして流動的な)経済・社会のニーズならびに雇用の水準および質を高めるという目標に適応させることでなければならない。そのためには,教育に対するアクセスを拡大するとともに,ちょうど過去における退職年金の権利のように生涯学習に対する権利を一般に与えることが必要である。労働組合は,グローバリゼーションと技術の変化から生じた遠心力を相殺する制度である。組合は,変化のプロセスで生じる力の不均衡を是正するとともに生産性の改善が公正なやり方で生活水準の向上に活用されるようにする上で,極めて重要な役割を果たし得る。

 不確実性はあるが今日のすばらしい新世界において,新しいグループの労働者が自分たちを代表してくれるのを組合に期待するのはいささかも不思議なことではない。1999年,北米およびイギリスにおけるOECD労働組合諮問委員会傘下の組合数は,過去20年間で初めて増加した。このことは,雇用の増加を反映するのみならず,新しいカテゴリーの労働者を組合に組織することに重点が置かれるようになったことをも反映している。1999年11月,重要なイニシアティブがとられた。「ニューエコノミー」の従業員のための新しい国際事務局であるユニオン・ネットワーク・インターナショナル(UNI)が,国際電話センターの労働者の条件の悪化に注意を喚起するために,全世界的な行動の日を打ち上げたことである。UNIは,これに引き続き,「オンライン労働者のオンラインの権利」のためのキャンペーンを実施した。

 コンピュータと低コストのインターネットアクセスの提供は,「情報格差」をなくすための一つの方法である。また,組合員間のコミュニケーションを促進する手段の一つにもなる。北欧諸国の組合のいくつかは,ここ数年,コンピュータを組合員に提供しており,また,アメリカでは,AFL-CIOが「working families. com」を実施している。これは,低コストのコンピュータとインターネットアクセスを提供するものである。組合は,インターネット・ゲートウェイ・サイトを設け,一般的なニュースや特別の組合情報への様々なアクセスを提供している。

 また,組合は,会社組織における変化の管理に貢献するために,経営者との交渉を強化した。このような交渉の重要な側面は,労働者を訓練・再訓練することにより,「生涯学習」に実質を与えることである。OECD等による調査により,組合は,企業が実施する訓練の量を増大し,この訓練の範囲を広げる役割を果たすことが確認されている。重要なことであるが,OECDの調査では,更に,「組合または職場委員会を持つ企業は,生産性を向上させる革新的な形態の労働組織になっている場合が多い」ことが分かった。

 しかし,組合は,「生涯学習」のための交渉者および運動者としての役割を超えて,提供者としての役割も持つ。イギリスにおいては,公共部門の組合であるUNISONは,教育担当役員40名を擁し,組合員に対し,教育を受け直して大学院生レベルまで勉強する機会を与える。組合は,学校教育で中途退学し,訓練所や経営者に対して警戒心を抱いているような労働者に対し,学習の場に戻るための自信と支援を与える。このようなアプローチは目新しいものではない。組合は,1世紀前の多くのOECD諸国における成人教育運動の確立にも重要な役割を果たした。時代の変化により教育や訓練の再実施へのアクセスの拡大が重要性を増すのに伴い,組合は生涯学習へのアプローチにおける柱となっている。

 知識ベースの経済および成長プロセスに関するOECDの調査は,興味深いことに,いくつかのOECD諸国における生産性向上における現在の変化が「業務平常どおり」のベースでは説明できないことを示している。また,投資に対する効果を通じて経済政策が今日の世界における成長の鍵となっており,また,コーポレート・ガバナンスおよび労働市場についての政策決定が生産性の成り行きを左右することを示している。成長と社会進歩とを再び結び付ける上で組合が極めて重要なことは明らかである。組合があってこそ,旧来の経済における社会問題も解決の道が開ける。


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