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食品安全性
世界中(特に,北米および中国)で,多くの人々が遺伝子組み換え(GM)食品を摂取しているが,人の健康に悪影響があったということは,ピア・レビューを受けた科学研究に報告例がない。
理論的には,人の健康に対する未発見の長期的効果が生じる可能性はある。なぜなら,GM食品が出現してからわずか10年しか経っていないからである。
意思決定,評価および選択
将来においては,GM食品にかかる政策決定および安全性の評価は,これまでのケースよりも包括的かつ開放的に行われなければならない。人々は,どのようにして決定に達したのか知りたいし,また,協議を受けたいとも考えている。このようなプロセスは疑惑を取り除くのに寄与するであろう。
協議の結果,明らかになる態度や考え方をGM食品の安全性の評価および伝達に組み入れる方法については,明確な結論が出なかった。多くの人々にとって,安全性評価は,基本的に技術的かつ科学的プロセスであることに変わりはない。
消費者には選択権が与えられるべきである。GM食品のラベリングは重要であるが,これをどの範囲まで及ぼすか(例えば,GM派生物までもか,GMを餌にしている動物までもか)については合意がなかった。また,有機体が生成されるプロセスにもラベリングが適用されること,他方,多くの場合,従来からあるカウンタパート食品と同様の食品には適用されないことに留意することも重要である。
GM食品の安全性評価
GM食品を含む新しい食品の安全性評価には,様々な種類のデータが必要である。一般に使われるツールの一つは,「実質的等価」の概念である。この概念の本質は,新しい食品とすでに摂取されている食品との間の比較が新しい食品の安全性を質す根拠になるということである。実質的等価は,量的な規準でも,越えなければならないハードルでもなく,考えるための枠組みである。これは絶えず修正され,アップデートされているが,このツールを使い始めてから6年になる現在,更に詳細な見直しを行う時期が来ている。
更に2つの技術的問題がある。(a)GM食品を含む新しい食品の安全性を評価する上で,動物給餌実験(毒性実験を除く)の重要性について明確な合意がないこと。(b)GM食品の毒性およびアレルギーゲン性を検査する方法を再吟味する必要があること。
既存の国際機関は,食品の安全性評価のための一貫性がある基準およびクライテリアを設けるために努力しており,これは賞賛に値する。現在,食品の安全性に関連して,予防的原則について国際的な討議が始まっているが,まだ,合意された運用方式を整えるには至っていない。
開発途上国および先進国におけるGM技術
開発途上国からの発言者の大半は,将来自国民に食糧を確保するための準備の一環としてのGM技術の決定的な重要性を強調した。世界人口の20%,土地面積の7%を占める中国においては,GMは食糧生産においてすでに大きな役割を果たしており,その重要性についてはアフリカや中南米からの発言者も強調した。他方,開発途上国におけるGM技術の今後の応用は,多国籍企業のニーズでなく,明確に現地の人々のニーズに対応したものにするべきであるとの見解も表明された。
この最後のコメントに照らして,開発途上世界のためのGM技術は,公的資金および民間資金の混合形態により推進するべきであろう。
安全性評価の基準は,全世界において,一貫性があり高い水準のものであることが不可欠であるが,開発途上国においてGM技術に対する需要が強く表明されたことは,一部の参加者が行った世界的モラトリアム提案に大きな疑問を投げかける。
先進国においてGM作物および食品の第一世代は,消費者に直接的な利益をほとんどもたらさなかったものと見られているが,品質,健康または価格の面で直接的な利益を持つ新製品が現われたら,このような見方も変わってこよう。
食品安全面以外のGMに関する懸念
GMの反対者の主な懸念は,食品の安全性の側面よりは,そもそもなぜGM食品を生産するのかという幅広い疑問にかかわるものだった。開発途上国の発言者のほとんどは,GM技術は自国の将来の食糧生産の不可欠の一環であると強く主張したが,ヨーロッパや北米のNGO参加者の一部がこれに反論した。後者は,再配分,貯蔵段階での損失防止強化等により世界食糧不足を解決するべきことを主張した。更に,開発途上国の参加者の一部と同様,開発途上国における政策決定および討議への市民の関与を強めるべきであると指摘した。
GM農業についての第2の懸念は,潜在的な環境に対する影響であった。これまで多くの現場実験が行われており,また,世界の一部地域では大規模なGM作物の植付けが行われているが,環境に対する影響を十分に評価するための作業は不十分である。特に,生物多様性が豊かな熱帯地方で不十分である。
前進のための道
エジンバラ会議で最も重要なことは,この会議でGM食品に関する討議のすべての側面を取り扱った一方,一部の分野について合意に達したことである。また,意見の不一致がある問題または情報の欠如により不確実性がある問題を特定することならびに科学的分析を要する問題と政治的な要因,信念および価値にかかわる問題とを分離することができた。詳細は,報告者レポートに記述されている。
この会議は,GM食品および農業に関する世界的な討議の新しい出発点である。包括的なアプローチが取られ,参加者間でいくつかの主要な問題について討議が行われた。他の問題も討議するためにこのプロセスを継続するべきであるとの声も上がった。
そこで,私は,エジンバラで始まったプロセスを継続するために,国際フォーラムを設けることを勧告する。このようなフォーラムの目的は,GM技術に関する科学的知識の最新の手法による評価を各国政府に提供し,この評価を社会の幅広い関心に裏付けられた検討の対象とすることである。
世界的評価のモデルとして,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がある。各国政府は,このパネルから,気候科学の分野における世界の専門知識を引き出すことができる。このパネルは情報を与えるが政策決定は行わず,また,現在の多数派の見解とともに,少数派の科学的見解も提示する。また,定期的に報告をアップデートする。
私が提案するフォーラムは,IPCCと類似点があるが,科学者のみならず,他の関係当事者も参加させる。
フォーラムの整備について以下のような示唆を行いたい。
(a) フォーラムは,コーデックス・アリメンタリウスのような既存の国際団体の作業を基盤にし,これと相互関係を持つが,これと重複ならびに代替することはしない。
(b) フォーラムは,範囲を全世界的なものとし,G8諸国やその下位集団に限定しない。なかんずく,エジンバラ会議の重要な教訓の一つは,GM技術の応用が迅速に進んでいる開発途上国の役割である。
(c) フォーラムは,世界の最もすぐれた専門家に先導されるべきであるが,他方,科学者に限らず幅広い専門知識および意見を包含するべきである。
(d) フォーラムの最初の2つのテーマは,GM農業および食糧生産の食品安全性および環境安全性とする。
(e) 2つの種類のアウトプットを行うものとする。(a)政策に情報を提供する報告書の形態での科学的評価。(b)GM技術と社会との間の相関関係に関する包括的でグローバルな討議。各国政府がフォーラムに参加し,その報告書を取得することが肝要である。
(f) 報告書はタイミングよく提出され,急速に出現する諸技術の評価を促進するようなものでなければならない。
要約
提案されたこのフォーラムは,食品および農業におけるGM技術のグローバルな討議と評価とを可能にすることにより,2つの重要な機能を果たす。
第1に,フォーラムは,進展するに伴い,世界中の政府に適切な専門的助言を提供するために新しいGM技術のリスクおよび利益について最もすぐれた分析を行うことを可能にする。このような助言においては,様々な科学的意見および不確実な事項を示すとともに,現在の多数意見を示す。
第2に,フォーラムは,技術の発展,政策,市民の懸念・願望の間の関係についてより深い理解を得ることを可能にしよう。これは,純粋に科学的な分析を超えてフォーラムの幅を広げ,私がエジンバラ会議に関連して言及した幅広い問題を含めることにより,達成されよう。
この2つの目的を達成する方法は複数存在する。アプローチの一つは,科学者が主導するが他の関係当事者を含む専門家パネルを設け,科学的評価を行うことである。この専門家パネルの報告書案は,エジンバラ会議のラインに沿ったより大きなフォーラムによる討議の基礎として用いることができよう。そのフォーラムでは,科学以外の問題が討議に持ち出される。専門家パネルは,この幅広い討議に照らして報告書を修正することもできよう。
私は,実施の詳細事項を意図的に他の者に任せた。というのも,私としては,詳細なメカニズムよりもビジョンの概要を描きたかったからである。
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