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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.221/222


 OECD Observer 日本語版

バイオテクノロジーは一部の諸国のぜいたくではない

JENNIFER A. THOMSON
HEAD OF THE DEPARTMENT OF MICROBIOLOGY, UNIVERSITY OF CAPE TOWN
ZHANG-LIANG CHEN
DIRECTOR OF THE MATIONAL LABORATORY OF PROTEIN ENGINEERING AND PLANT GENETIC ENGINEERING, CHINA

 最近の農業のバイオテクノロジーに関する世界会議では,もし政府がこの技術の発達を挫折させれば,人類は,多くの諸国,特に開発途上国を悩ませている多くの問題の解決策を失うことになることを紛れもなく明白にした。

 ヨーロッパにおけるバイオテクノロジーの議論は,専ら,文化的・倫理的問題,食品及び環境面での安全性の問題,多国籍企業及び「工業化した」農業の果たす役割についての根元的懐疑論が中心である。開発途上国におけるバイオテクノロジー擁護論はもっと簡単である。それはニーズに基づいている。

 豊かな国は,実際のあるいは想像上のリスクについて延々と議論を重ねることができる。これは実にぜいたくな議論であると言える。一方,それ以外の国は,リスクと利益の厳密な分析に専念する必要がある。多くの開発途上国及び新興工業国の観点から見れば,農業バイオテクノロジーの利益は非常に現実的であり,現在緊急に必要であり,今後不可欠のものである。

 開発途上国は,ヨーロッパの自家製の問題が我々の国の今後の成長にマイナスの影響を及ぼすことを許すだけのゆとりはない。

 南アフリカでは,今でも小規模農業は例外ではなく標準である。遺伝子組み換え作物の圃場試験は1990年代半ばから行われており,1998年には,害虫と除草剤に強い特性をもつ作物の商業栽培が始まった。結果は極めて有望である。その利益は非常に大きく,特に小規模農業ではそうである。1998年にKwazulu-Natal州のMakatini平地で行われた調査では,害虫に強い遺伝子組み換え綿花種子の使用により,綿花の収量が20%増加したことが明らかにされた。1999年の作期の予備調査結果では,この地域の収量が倍増するものと期待される。

 一部の商業農家の場合,経営者は農薬散布を完全に無しで済ませることができた。また“Bt”綿花を作付けした畑とその周辺では益虫の増加が見られた。このような実際の結果は,そのような作物が例えばアメリカのオオカバマダラチョウのような「ターゲットでない」昆虫を絶滅させるのではないかという一部の先進国の懸念と著しい対照を成している。

 バイオテクノロジーが南アフリカの農家と消費者にもたらしたのは,収量の増加と無農薬作物にとどまらない。この国の地形と気象は,本来相当の農作物を生産できるはずの広大な地域に定期的に旱魃をもたらしている。南アフリカの研究所では,旱魃に強い種子の研究が大いに進んでおり,増産と経済的機会を約束している。

 地球の反対側にある中国は,世界の人口の20%以上を占めているが,世界の耕地に占める比率は7%にすぎない。人口は依然として急速に増加しており,食習慣の変化や可耕地の消失により,食糧安全保障は差し迫った問題である。

 中国は,1980年代半ばから,この問題に真正面から取り組むためにバイオテクノロジーに目を向けた。全国の100以上の研究所がこの研究に従事している。1997年,中国は遺伝子組み換え作物の商業化をスタートさせた。その大部分は害虫やウィルスに強いといった特性を有するものである。約100万エーカーの土地に遺伝子組み換え作物が栽培されており,中国は,遺伝子組み換え作物の栽培では世界3大国の一つとなっている。

 ヨーロッパが躊躇している間に,中国の研究は早いペースで進んでいる。科学者は,目下,バクテリア,かび,及びウィルスに対する抵抗性,塩及び旱魃に対する耐性,栄養価を高めること,及び品質向上に焦点を合わせており,又は今後そうする予定である。更に,摂取できる経口ワクチンや組み換え医薬品のための「バイオ製薬」のような,より先端的適用も視野に入れている。

 南アフリカや中国などの諸国の社会経済的現実とニーズを考えれば,すでに国民に利益をもたらすことが分かっている技術を利用すべきか否か議論することは,ほとんど意味がない。これらの諸国は,先進国のリスク評価の狭い解釈にみずからを制限する余裕はない。またこれらの諸国は,欧米の議論のために,開発途上国がバイオテクノロジーの既存の利益や将来の利益にアクセスすることが遅れることを許すゆとりはない。


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