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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.221/222


 OECD Observer 日本語版

有害な租税競争に関するOECD報告:
先進国には前進,カリブ海地域には苦痛

CARIBBEAN COMMUNITY SECRETARIAT

 「有害な」国際的租税競争に対するOECDの攻撃は,47カ国(内,いくつかはカリブ地域)の金融サービス部門に悪影響を及ぼす可能性がある。「有害な租税競争:グローバルな問題の出現」と題する1998年のこのOECD報告は,これら諸国の多くをタックスヘイブンであるとみなし,先進国の歳入基盤を侵食しているとした。提案されている措置は,関係国の金融サービス部門のみならず,経済の他の分野にも脅威となる。これは,産業の多様化が途上にある小国にとって重大な問題である。

 過去約40年間,経済構造の多様化が小国の重要な課題となっている。これは,増加する人口(特に都市の住民)に対して経済的な機会を与える必要性,及び伝統的市場における競争に起因する主要輸出農作物の成長力の低下から生じた問題である。カリブ地域の二大輸出農作物である砂糖とバナナは困難に直面している。多様化への努力は,まず労働集約的な軽工業に向けて行われ,次いで,観光,金融,船舶登録などのサービス業に向けて行われた。軽工業はうまくいかず,バハマ,バルバドス,ケイマン諸島,アンティグア・バーブーダなどは,基本的にサービス業に基づく経済を発達させた。

 それでも,これら諸国の経済は極めて脆弱なままで,多様性ある構造にはなっていない。ごく最近,2000年3月,小国家に関するイギリス連邦事務局・世界銀行共同の作業委員会は報告書を発表した。その中で,これらの小国家は,以下のような特徴を有すとされた。総生産に対する輸出入の比率が高いこと,多様化が進んでいないこと,民間・公共部門における制度・金融・人材の面で制約があること,また,高い取引コスト・高い所得変動性・リスクが高いとの一般的認識が原因となってグローバルな資本市場ヘのアクセスが限定されていること,である。

 先進国や開発途上国中の大国が,高度化する技術の助けを借りて農業・工業生産を拡大するのに伴い,世界各地やカリブ地域の小国は,サービス輸出にシフトするよう多数国間金融機関や先進国に促された。世界銀行は,1990年の「カリブ地域経済の現況に関する報告:地域の問題及び資本の流れ」において,「1980年代において外国為替稼得及び経済活動の重要な源泉であったカリブ地域の商品輸出に対する特恵市場ならびに市場に関する取決め及び見込みは,変化をこうむるかもしれない」と述べた。状況は確かに変化した。1996年には,サービス部門は,CARICOM加盟の独立国13カ国中7カ国においてGDPの60%以上を占め,4カ国において70%以上を占めた。

 サービス輸出は,大規模で高度な先進国経済との競争の中で発展している。先進国は,二重課税協定の締結を例外として,自国の投資家が小国や他の開発途上国で事業を行うのを奨励する措置を余りとっていない。小国は,外国投資家を引き付けるために,自国のマクロ経済環境を改革・強化するよう勧められた。また,法人税率が高いことは投資家にとって大きな阻害要因になると警告された。ごく最近,1996年に,世界銀行は,「英語圏カリブ諸国からのサービス輸出の将来性」と題する報告の中で,「各国は,企業が競争できるように,オフショア部門からほとんどすべての税金をなくさなければならないだろう」と論じた。カリブ諸国の大半は,オフショア部門の税率を引き下げたり,無税にしたりした。カリブ地域の企業が競争するための必要条件について世銀が行った評価にかんがみると,このような税制は,ロンドンやニューヨークなどインセンティブや便益措置が完備した先進地域に対して不公正競争を強いるものとは到底言えないだろう。

 カリブ諸国は,自国のマクロ経済の枠組みを強化し,インセンティブの仕組みを改善し,監督・規制制度を強化するために努力してきた。これらの施策は,国際的な商品,サービス及び投資の流れを自由化する一般的な動きと時を同じくした。これら諸国の一部では,オフショア金融サービスを含む金融サービス部門の活動が増大した。これは,むしろ,予期されたことである。国境を越える商品,サービス及び投資のグローバルな自由化は,経済成長を促し,その方向を変えるものと予想されていた。

 明らかに,OECD加盟国は,流動的な資本及び投資について競争することに不快感を覚えている。1998年のOECDの「有害な租税競争:グローバルな問題の出現」と題する報告書は,OECD加盟国が,主として自分たちが創出した新しいグローバル環境に適応するのに困難を覚えていることを示す。報告書を引用すれば,

 「OECDは,国際貿易及び投資の段階的自由化が,経済成長及び生活水準向上の最も強力な推進力となったと考える。OECDは,開放的で多角的な貿易体制を保障・促進し,かつ,貿易,投資及び課税の間のかかわりを含む国際貿易の性格の変化に配慮するために,この体制に調整を加えることを奨励する所存である」。

 ここでいう体制の調整が,体制がOECDの利益になるのを確保するためのものであることは明らかである。すべて世界貿易機関(WTO)の加盟国である29カ国からなるOECDグループは,自分たちの好みに合わせて体制を調整するために,WTOのマンデートを我が物とした。これら諸国は,WTOのメカニズムを用いないで,一方的に体制を調整する道を選んだ。

 OECD報告書は,一つの特定の分野,すなわち金融サービスの分野における有害な租税競争の問題に対処しようとするものである。これは,世界経済に対する差別的で歪曲された観点を導入することになる。OECD自身の当初のマンデートは,より幅広い検討を行おうとするものだった。一貫性を保つためには,OECDは,社会的分野において,「有害な麻薬使用」,「有害な暴力映画」,「有害な銃器規制方法」,「有害な犯罪人強制送還慣行」といった問題がカリブ諸国やその他の開発途上国に及ぼす影響を検討する必要があろう。これらは,すべて,OECD諸国に起因する問題である。

 カリブ諸国は,今後とも,より健全な国際金融構造を構築し,国際的な最良慣行を確立するためのいかなる努力にも協力していく。ただし,そのプロセスは公明正大なものでなければならない。公平な活動の場を設けるに当たっては,小国や恵まれない国の特別の事情を考慮に入れなければならない。租税競争の問題は,全体論的な見地から検討する必要があり,すべての部門及び活動を検討の対象とし,すべてのインセンティブ及び補助を吟味するべきである。連邦=中央政府及び州政府というシステムにおける租税の意味合いも検討されるべきである。

 カリブ諸国は,国際ビジネスのダイナミックな性格を認識し,共同作業を通じて,カリブ各国の立法及び行政の枠組みを見直すための政策諮問委員会を1999年に設立した。これは,各国個別の措置に対する追加ないし補足である。また,カリブ諸国は,すべての国のための多国間システム及び規則を検討するための国際的な対話プロセスに参加する用意がある旨をOECDに伝えた。すなわち,「租税回避」という受け入れられている法的ステータスを脱税と同等に扱うこととするとしたら,これは,一つの特定のグループの権限によってではなく,多数国間協定により決定されるべきである。

 カリブ諸国は,真の国際協力につながる対話及び交渉のプロセスが最善の道であると考えている。このような交渉は,周知の規則及び慣行に基づいた,威嚇や恣意的なデッドラインがなく,最後通告もない適切な国際的な場で行われるべきである。この点で,カリブ諸国は,自国の政策を実現するために国際金融機関に影響を及ぼしこれを利用しようとする一部のOECD加盟国の動きに懸念を有する。

 OECDの有害な租税競争報告書は,オフショア金融センターを標的とする3方向下での行動の一部である。この行動は,金融行動タスクフォースと金融安定フォーラム(FSF)の産物である。しかし,この行動は,サービス部門を標的とする更に幅広い戦略の一部にすぎない。船舶登録サービスに対する攻撃がその例である。サービスをWTOの管轄の下に置こうとしたウルグアイ・ラウンドでの動きは,まさに,一部のOECD加盟国がサービス部門で自国に比較優位があると考えたことによるものであった。

 一方的行動は,すべて,「名を呼んで辱める(name and shame)」の戦略及び共同報復措置(例えば,任意に締結した二重課税条約の廃棄,コルレス銀行便益の拒絶など)による威嚇の戦略を伴う。開発が遅れていること及びサイズが小さいことは,本来的に,国際規則制定について強大なOECD諸国と同等の立場に立つ能力及び資格がないことを意味するという見方があるように見受けられる。2000年5月26日に事前の協議なしにFSFが発出した新聞発表は,カリブやその他の地域のオフショア金融センターに監督の質が低いと「認識された」との烙印を押すものである。なかんずく,報告書自体,オフショア金融センターがこれまで体系的な金融問題を創出する主要な原因となっているとは思われないとしていることにかんがみ,この日は国際関係の歴史における暗黒の日である。

 カリブ諸国は,国際開発のための政策及び戦略は真の協議プロセスから出てくるものでなければならず,包括的で,開発途上国に余地を与えるものでなければならないというのがシアトルで得た明確な教訓であると確信する。■


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