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フランスのシステムが優れていることは明白である。しかし医療費はOECD諸国の平均を遙かに上回っている。
第1級の治療
フランス人は以前から自分の国の医療システムのことを,おそらく高価についているとはいえ,世界最高の一つだと信じてきた。しかし,6月に世界保健機構(WHO)が公式ランキングを発表して,彼らは自分たちがいかに特権的であるかを知った。
WHOは,フランスの医療システムを調査対象の加盟国191カ国中のトップに位置づけて,「全体として最高の医療」を行っている,と指摘した。判定には次の5つの規準が使われた。国民の全体としての健康水準,国民各層の間の医療の不公平度(経済的地位がどの程度まで健全性に影響しているか),医療システムの対応度(患者の満足度),国民への対応度(様々に異なる経済層の人間がいかによく医療を受けられるか),そして費用の負担(だれが費用を支払っているか),である。
特記されるべきことの一つは,豊かさが必ずしも成功をもたらしているわけではないことである。例えば,アメリカの医療システムは,その費用が国内総生産に占める比率はほかのどの国よりも大きいが,順位は191カ国中37位にすぎない。GDPの6%少しを医療サービスに支払うイギリスは18位である。いくつかの小国――サンマリノ,アンドラ,マルタ,シンガポール――は2位のイタリアにすぐ続く位置にある。
報告書の編集責任者Philip Musgorve博士は,「大きいことがよいとは限らない」と強調して,次のように述べた。「問題は,総額をどれだけ投じるかや、施設を地理的にどう配置するかではない。重要なのはインプットのバランスである――例えば,医師1人につき適切な数の看護婦を配置しなければならない」。
実際にどれだけ健全か
フランスのシステムはこの微妙なバランスを実現しているだろうか? この比較的複雑なシステムの重要な特徴は,居住者の事実上すべてに健康保険が適用されていることである。OECDは最近の『フランスの経済調査』で,フランスでは医療費用のおよそ75%が公費で賄われており,10%が補完的な保険(ほとんどが相互保険)で支払われ,残りが患者本人の直接負担となっていると報告している。自己負担分を軽減するために,この数十年の間に補完的保険が大幅に拡充され,現在では国民の約80%がこれに加入している。
費用負担のギャップを更に埋めるために,国は2000年1月に国民皆保険制度を導入した。これによって,雇用状態のいかんにかかわらず,すべての合法的住民に基礎的保険が適用される。更に,1人当たり所得が月額3,500フラン未満の人は無料で補完的保険の適用を受けることができる。このようにして,雇用状態が不安定な人や正式な居住証明を待つ外国人など,これまで対象外ないし限定的だった人々にも,この制度によって医療保険が適用されるようになった。
システムのパフォーマンスは,国民の健康状態に基づいて判断された。フランスは,全体的な健康度と死亡率で高い評価を与えられている。1997年生まれの女性の平均寿命(82.3歳)は日本に次いで2位である。高齢者の疾病は,アメリカと日本の傾向と一致して,特に男性の場合,顕著な低下傾向にある。乳幼児死亡率についても同じことが言えて,フランスのそれはスカンディナビア諸国の非常に低い水準を少し上回るだけである。
フランスのシステムが優れていることは明白である。しかしそれは同時に高価でもある。対GDP比で見たフランスの医療費はOECD諸国の平均を遙かに上回っている。人口の高齢化と医療需要の増大,そして財政支出の削減圧力に直面して,フランスのシステムはすでにみずからの改革方法の探求を開始している。しかし,そこには人々が支持する制度の改悪につながりかねない危険性が存在する。Health
Economics誌によれば,フランス国民のおよそ66%がこのシステムに基本的に満足している。この比率は,イギリスでは40%,イタリアでは20%である。問題は,コストを削減しなければならないとして,フランスのシステムをこれほど人気あるものとしている諸側面――医療の質,選択の自由,アクセスの平等性――を犠牲としないで済ませるか,である。
点検の時
支出と財源の間のギャップの拡大が,1990年代の初めから半ばにかけて政府に一連の改革計画を発表させるきっかけになった。当初の改革は概して短期的で,収入を増やす一方で患者の自己負担比率を引き上げることによって健康保険基金の赤字を埋めることが試みられた。こうした措置はあまり大きな効果を上げなかった。診療ごとの支払いをベースにして報酬を得ている医療関係者は価格統制に対して量の拡大で応え,一方患者は,いずれにせよ補完的な保険で賄われるために,料金に敏感に反応すべき圧力をほとんど感じなかった。
医療費支出の伸びは1990年代末には鈍化したが,これは一時的な現象にすぎないと考えられている。人口の高齢化が重大な懸念材料である。平均寿命の延長によって,75歳以上の人――社会保障制度による医療サービスの大消費者となる可能性のある人々――の数は1990年の420万人が2020年には600万人に達すると予測されている。支出を押し上げるもう一つの要因は,高度の医療装置が利用可能になることである。これは,追加的な,更に高度の診療に対する需要を生み出す。それはコスト上昇をももたらす。例えば,画像装置に対する支出は,この数年間,上昇傾向にある。こうした要因から,フランスのシステムの寛大さとあいまって,医療改革は重要な優先課題となっている。
3つの分野で改革が必要である。病院,個人医療行為,公衆衛生である。病院のコストを削減するための一つの方法は,診断に対応した支払制度へと移行することである。これは,特定の疾患や病気ごとに平均費用を定めておいて,診断結果に基づいてその費用を支払うシステムである。しかし,この新しい支払方式は,地域加療機関(regional
hospitalisation agency, ARH)がいっそうの自律性を与えられないかぎり機能しない。更に,事実上の市民サービス機関である公立病院を独立公共法人に指定することが一部から提案されている。これは,例えば郵便事業のようなほかの一部公共サービス機関にも似た仕組みで,商業的アプローチを拡大することによって財政状態の改善や職員の満足度の向上といった好結果がもたらされている。
個人的な医療行為と診療に対する需要を削減するために,いくつかの改革が必要である。第1に,基礎的および補完的な保険の引受機関は,過剰利用を促進しない保険制度を作る必要がある。例えば,特定の専門病院へのアクセスを事前に選別し,また目に余る過剰利用を監視することによって,需要を減らすことができる。第2に,現行の指定医制度を更に拡充して,患者のモニタリングを改善し,医療の継続性を保証することが必要である。患者は引き続き自分の指定医を選定できる(ほかの国のように少数の家庭医のリストを割り当てられるのではなく)べきだが,頻繁な変更を抑止するシステムが導入されるべきである。
最後に,治療よりも予防にいっそうの力点を置いた公衆衛生政策が必要である。例えば,喫煙や飲酒の危険性を伝えたり,癌の事前検診や頻繁な健康診断を促進するキャンペーンのような分野には十分な予算が割り当てられていない。これは,治療よりも予防に対する払い戻し比率を高めることによって実現されよう。このことは,喫煙をやめ,適切な食事をとり,運動を行い,定期的な検診や検査を受けるためのインセンティブを患者に提供することを意味する。
世界最高の医療システムにもなすべきことは多くある。まったく崩壊しそうにないシステムになぜ手直しが必要なのか,疑問に思われるかもしれない。つまるところ,国民はこのシステムを望んでおり,そのために支払う用意がある。たしかにこれは民主的な選択である。しかし,公共医療政策の担当者はそのような単純な見解に従うことはできない。財政負担の増大と人口の高齢化という現実が目前に迫っており,医療システムの将来に関する決定においてはこのことが考慮されなければならない。卓越は維持されるべきだが,過剰は排除されなければならない。■
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