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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.223


 OECD Observer 日本語版

子どもが生き延びるのを助ける

JAN VANDEMOORTELE
CHIEF OF POLICY ANALYSIS,UNICEF

目標:乳幼児死亡率を2015年までに3分の1に減らす。

 ジョーは見たかぎり普通の子だった。体重はそこそこに見え,笑顔がかわいく,多くの友達と遊んでは大声で笑った。ところが,5歳の誕生日を迎える1週間前に,病気になって死んでしまった。

 今日,開発途上諸国の3,000万人あまりの子どもが普通のワクチン接種を受けていない。毎年,1,100万人の5歳未満の子どもが死んでいる。その原因はほとんどが予防可能だった。社会進歩を測定する単独では最良の指標の一つである5歳未満児死亡率は,1990年代にわずか5%しか低下しなかった。これでは,十分な前進とはとうてい言うことはできない。

 なぜ,子どもはこのようにないがしろにされるのか? 答は,単純でもあり,複雑でもある。単純であるというのは,ほとんどの国が子供の福祉のために十分な投資をしていないからである。開発途上諸国の政府は,平均すれば,基礎的な社会サービスに国家予算の15%未満,およそ1,500億ドル程度しか支出していない。先進工業諸国は,平均して,使途指定援助のおよそ11%――40億ドル前後――をこうしたサービスに向けている。

 これでは不十分である。すべての子どもが全員,健康な人生のスタートを切るためには,世界全体で基礎的な社会サービスに更に年間1,000億ドル以上を支出することが必要である。これは一見して巨額のお金であるように見えるかもしれない。しかしこれは,世界の総所得の1%の3分の1にすぎないのである。か弱い子どもに生きる権利を与えるためだと考えれば,これはたいした額ではあるまい。あからさまに言えば,これはまたとない投資機会なのである。1995年のコペンハーゲン社会サミットで世界の指導者たちは,大まかなガイドラインとして予算支出額の20%,対外援助の20%が基礎的な社会サービスに振り向けられるべきだと提案した。

 しかし,幼児死亡率を引き下げるという目標の達成には比較的わずかなお金しか必要とされないにもかかわらず,この目標が達成されつつあるとは言えない。まさにここで議論は複雑になる。子どものためにより多くを投じることと,この投資を意味あるものとするために必要な公正と効率を実現することは,まったく別の問題である。それは,一つにはマネジメントの問題であるが,更に言えば,様々な重要な障害をどうやって克服するかという問題でもある。例えば,すべてワクチンの開発が必要なHIV/AIDSやマラリア,下痢症状,肺炎などの拡大である。これに加えて,武力紛争を停止させ,債務負担を軽減するといった問題もある。こうして,子どもの死亡率を引き下げることは単なる予算の問題を遙かに超える。

 以上は重要な挑戦課題である。しかしそこには,実行可能な比較的単純な課題もある。例えば,教育,特に女子の教育は,このスポットライトのほかの論文が強調するように,単にそれ自体として重要であるだけではない。5歳未満児の死亡率や子どもの栄養不良は,母親の教育水準と密接に結びついている。母親が文字を読めなければ,その子どもが栄養不良になったり5歳前に死んだりする可能性は,初等教育を完了した母親の子どもの2倍から3倍にもなる。

 教育とHIV/AIDS予防との間にも相関関係が存在する。アフリカ諸国のいくつかでは,教育水準の高い人々の間ではHIV感染率は急速に低下しつつある。1990年代に5歳未満児死亡率の上昇が最も顕著だった諸国においてさえ,初等教育を終えている母親の子どもの早期死亡率は低下している。要するに,教育は,HIV感染やその他の子どもの死病を防止するのである。

 教育と死亡率のギャップの拡大は,多くの国における富者と貧者の間の所得格差の拡大を反映している。子どもは,こうした傾向の犠牲となることのほか弱い存在である。全世界の予算のわずかな増加と,教育その他の社会的分野におけるもう少し想像力に富んだ政策決定によって,開発途上諸国の子どもたちの早すぎる死を大幅に減らすことができる。その結果,ジョーのような子がもっと長生きして,更に多くの誕生日を祝うことができる。■


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