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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版> No.223


 OECD Observer 日本語版

持続可能な開発のために

REMI PARIS
DEVELOPMENT CO-OPERATION DIRECTORATE, OECD

目標:2015年までに環境資源の損失を逆転させるために,2005年までに持続可能な開発のための国家戦略を実施すること。

 全世界で10億人を超える人々が極貧生活をしており,また,開発途上国においては予防可能な病気が死亡率を高める主たる原因となっている中で,どうして環境についてまで心配する必要があるのだろうか。開発途上国においては,依然として,農業,林業,漁業など天然資源をベースとした活動の方が工業やサービス業よりも経済に占める比重が高いことを思い起こせば,その答は自明である。また,世界の貧困層の多くはこれらの活動によって直接生計を立てているので,環境の悪化は特に貧困層に痛手を与える。

 貧困者は大気や水の汚染にさらされており,また,砂漠化や土地の劣化,更に洪水や地滑りなどの災害(天災であるか人災であるかを問わない)を極めて受けやすい。環境管理が改善されれば,その直接的な効果として貧困者の生活は改善され,生産性が高まり,持続可能な開発に向けて弾みがつく。

 重要な環境資源の保全は,貧困層の差し当たっての福祉および長期的な経済的機会の保障のための前提条件である。そのためには,相異なる資源利用者のニーズを調和させ,減少が進む資源に対する競合的な要求が(ローカルな紛争であるか,国際的な紛争であるかを問わず)暴力的な紛争に発展するのを防止することも必要である。

 1992年の環境と開発に関するリオ会議(UNCED)において,各国政府は,持続可能な開発のための国家戦略を策定・実施することにコミットした。5年後,国連の特別総会において,各国政府は,緊急感の高まりを背景に,すべての国における国家戦略策定の目標年を2002年に設定した。OECDの開発協力戦略「Shaping the 21st Century(21世紀の方向付け)」においては,この目標を達成するための開発途上国の努力に支援を与えることを援助供与国にコミットさせている。


「1つのサイズですべてに間に合わせることはできない」

 持続可能な開発戦略は一つではない。それぞれの国が,それぞれの社会・経済優先事項,文化的価値,制度および政治的仕組みに合わせて,それぞれのアプローチを策定しなければならない。また,各国は,それぞれの地理上,生態上,気候上の特徴によって直面する環境上の問題に大きな相違があるので,国別のアプローチが不可欠である。

 更に,持続可能な開発戦略の策定は,必ずしも,新しいプロセスや新しい計画,新しい制度を持ち込むことを必要とするわけではない。国によっては,工業開発計画において例えば大気および水資源に対する長期的な影響を考慮に入れさせるといった持続可能な開発に資する政策および制度メカニズムを整えている一方で,公式の「持続可能な開発」戦略ないし文書は持っていないという場合もあろう。逆に,国によっては,公式の持続可能な開発戦略を設けているが,実際にはこれを実施していないという場合もあろう。ある国が持続可能な開発戦略のための基本的な「要素」を持っている,ないし策定中であるかどうかを判断するのは容易なことではない。そもそもこの国は,開発の主たる制約要因や可能性を見分ける能力,民間および公的な行動主体を共通の目標に動員する能力,また持続可能性を開発政策に組み入れる能力を持っているだろうか。

 このような問いに答えるのを助けるために,OECDの開発援助委員会(DAC)は,開発途上国が持続可能な開発戦略を策定するのを援助供与国が支援する上での適切な方法を策定中である。このような戦略を構築する上で,パートナーシップが重要である。DAC自体の作業も,他の開発関係組織と協議しながら行われている。

 フィリピンがその好例である。同国では,1992年のリオ・サミットの後,持続可能な開発のための評議会を設けた。政府,市民社会および民間企業の共通の目標となったのは,2000年4月までに有鉛ガソリンを段階的になくすことである。フィリピン・アジェンダ21が同国の行動計画である。主要企業は,副製品の再利用,汚染防止,労働組合との団体交渉協約への環境条項の挿入など,持続可能な生産イニシアティブを実施に移した。


ローカルならびにグローバルなモニタリング

 気候変化や森林破壊などの多くの環境問題は,明らかにグローバルな問題である。しかし,一般的に,環境被害の影響は,ローカル,国または地域のレベルで表面化する。水不足・汚染,土壌浸食または森林・マングローブ・サンゴ礁の悪化は,まず第1に,事態に直接にさらされる地元コミュニティに害を与える。大気汚染の度合いは,一つの都市の中でも地区によって大きく異なり,国全体ではなおさら異なる。したがって,環境状況の大部分の指標は,主としてローカルなレベルで妥当する。そのため,環境状況および人々の生活に対する悪影響をモニターする能力を培うのも,国の持続可能な開発戦略を定める作業の上で重要な要素である。

 それでも,適切な開発戦略において利用可能な人間開発についてのすぐれた普遍的指標が存在する。その一つが安全な水へのアクセスであり,これは,開発の基本的な目標でもある。世界の人口のほとんど20%が日常のニーズを満たすために浄化されていない水を使っている。都市住民に対する水供給状況は農村の住民より良いが,市の水道水でも病原菌や産業汚染物質により汚染されている場合がある。安全な水に対するアクセスを持たない人々は,ニーズを満たすために毎日のように悪戦苦闘し,常に水系感染病の危険にさらされなければならない。

 もう一つのグローバルな問題は,森林破壊である。人間の干渉さえなければ,世界の大部分は森林で覆われることだろう。持続可能でない採取や土地の浸食により,世界は何百万エーカーという森林を失い,また,それに伴って経済的に重要な森林からの木材・非木材製品を失った。1990年代初期には,毎年約1,700万ヘクタール(スイスの面積の4倍に相当)の熱帯林が失われた。森林破壊がこのペースで進むとすると,熱帯林の種の5〜10%は今後30年の間に消滅しよう。影響はこれだけではなく,土壌浸食,更に水系や気候パターンの撹乱も招く。森林破壊は,森林の住民の生計にも直接的な打撃を与える。これらの住民は,世界で最も疎外され,脆弱な部類に属する原住民である場合が多い。

 エネルギーの利用(および乱用)とその大気に対する効果とがもう一つのグローバルな問題である。大気を更に悪化させないで開発途上国の成長を速めるために,主として先進国が調整を図る必要がある。気候変動に関する国連枠組条約の目的は,大気中の二酸化炭素(およびその他の温室効果ガス)の総ストックが地球の気候を撹乱するレベルに達する前にこれを安定させることにある。気候に配慮した経済開発に向けての動きは,経済成長とエネルギー利用とを切り離すことができる程度に左右される[Observer No.221/222(2000年夏号):「2020年における環境」参照]。


エネルギー効率

 これは厄介な問題である。高所得国はエネルギーを効率的に利用し,浄化技術を持っているかもしれないが,総排出量が多い。貧困国も,発展するとともに,エネルギー効率が高まり,同じ量のエネルギーからより多くの財貨およびサービスを生産するようになる可能性がある。しかし,総消費量の伸びは,効率化による総エネルギー節約量を上回ろう。したがって,貧困国が単純に現在の高所得国のモデルに倣うとすると,その総エネルギー消費量は増加を続け,それとともに温室効果ガスの排出量も増加を続けよう。

 幸いなことに,グローバルな温室効果ガスを減少させる政策(例えば,輸送や工業におけるエネルギー効率改善策)とローカルな汚染を減少させる政策とには共通点がある。このことは,富裕国(二酸化炭素の最大の排出国)にも開発途上国にも当てはまる。気候変動問題の長期的な解決は,先進国および途上国の双方におけるエネルギー消費パターンを化石燃料に対する依存から抜本的に脱却させることができるかどうかにかかっている。このような変化には,政治的コミットメントおよびグローバルな協力,更に制度的・技術的・社会的革新が必要である。■


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