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Home OECD Tokyo > OECD Observer 日本語版 > No.223


 OECD Observer 日本語版

1,000語の読み書き能力

BEATRIZ PONT AND PATRICK WERQUIN
EDUCATION AND TRAINING DIVISION, DEELSA
ELS.CONTACT@OECD.ORG

 読み書き能力は,経済的成功のカギである。問題は,この能力に欠けている者があまりにも多いことである。

 アメリカ経済は,優に世界最大の経済で,前例のない伸びを享受している。しかし,同国の成人人口の40%は,今日の複雑な知識経済に参加するのに必要な読み書き能力を欠いている。同様に,ドイツ,イギリスなどの他の主要国も同じようなパターンを示している。われわれは懸念を抱くべきだろうか。

 少し前であったら,答えは「ノー」だったかもしれない。現在よりも工業ベースの経済においては,自動車や製造業などの部門の給与が高い職は,必ずしも読み書き水準の高さに依存していなかった。また,資格水準が比較的低い者にも雇用機会が十分にあった。しかし,現在では,うまくやっていくためだけでなく,そもそも経済活動に参加するために,読み書き能力が必要不可欠である。

 ある調査〔国際成人識字能力調査(IALS)〕によると,労働者は,これまでより高い教育水準を必要とするのみならず,迅速かつ効率よく新しい技能に適応し,これを学び,習得する能力を持つ必要がある。今日の経済は知識を基礎としており,これに参加するためには,ますます複雑な能力を必要とする。政策当局者は,一般および成人教育プログラムの設計戦略において,このような変化に対応しなければならない。

 IALSは,読み書き能力を「家庭,職場およびコミュニティでの日常活動において,印刷された情報を理解し利用する能力」と定義している。言い換えれば,読み書きは,もはや単に読めるかどうかと言った問題にはとどまらず,より複雑な能力の組み合わせである。同調査では,いくつかの文章の断片(例えば新聞やパンフレットからのテキスト),資料の識字能力を評価するために一連の地図,日程表,図表およびグラフならびに基礎的な量的読み書き能力を検査するために算数計算を含めた。これらは,先進国において生き残り,うまくやっていくために必要であると専門家が判断した能力である。

 残念ながら,多くの国において,読み書き能力は満足のいく水準からほど遠い。IALS調査に参加した20カ国のうち最も目立ったのは,アメリカ,ドイツ,カナダといった経済の原動力となっている国での結果である(グラフ参照)。これら諸国は高度の識字能力を持つ成人の比率が高い一方で,満足な水準を下回る者の比率も同じように高い。最下位はチリで(3つの能力分野で満足な成績を上げた成人人口の比率は20%未満),ポルトガル,ポーランドおよびスロベニアがこれに続いている。

 北欧諸国は,ほとんど常に読み書き能力の3つの分野(文章,資料および数量)において最高位を占める。スウェーデンは総合順位で最高であり,一方,フィンランド,ノルウェーおよびデンマークは,読み書き能力のレベルによって変化がある。しかし,これら諸国においてさえ,調査対象者の少なくとも4分の1は,最低水準に達しなかった。それでも,最低の読み書き能力水準にある者の能力を改善しようとするためにこれらの諸国においてなされている学習,なかんずく成人学習にかかる努力が実を結んでいるものと見られる。北欧諸国は,他の諸国と比較して読み書き水準がかなり高いだけでなく,その読み書き能力水準の分布が国民の間で均等である。すなわち,読み書き能力が最も低い層と最も高い層との間の格差がどの国よりも小さい。


経済的意義

 経済と読み書き能力との間の関係はいくつかあり,かつ,直接的な関係である。高い読み書き能力は,個々の経済ポテンシャルを決定する。すなわち,高い雇用参加,低い失業可能性,高い能力の雇用である。また,高い読み書き能力は,労働力全体の構造に影響を及ぼす。平均能力水準が高い諸国は,知識労働者(移動性が高く,能力が高い労働者)の比率も高い。このような労働者は,技術発展に貢献する度合いが高く,また,技術発展に効果的に適応する。

 マクロ経済の観点からは,読み書き能力と国内総生産(GDP)とは相関している。高い文章能力を持つ成人の比率が高いほど,1人当たりGDPも高い。更に,経済的格差が高い国ほど,読み書き能力の格差も高い。

 重要な社会的利益のいくつかは,読み書き能力と関係があるようである。読み書き能力は,健康の改善および平均余命の伸長と関係付けられてきた。能力の高い人々は,情報へのアクセスや予防保健習慣を通じて,そうでない人々よりも保健ニーズを適切に管理することができるのかもしれない。その他の興味深い調査結果が示すところによると,読み書き能力と政治への女性の参加との間に相関関係があり(図表参照),また,読み書き能力と公衆・市民参加との間につながりがある。

 明らかに,成人人口の読み書き能力を改善しようとするならば,すべての国がしなければならない仕事がある。昨今の厳しい経済の現実にかんがみると,選択の余地はあまりない。制度的プロセスを過度に重視する代わりに,生涯学習や訓練プログラムといった手段を用い,結果の評価方法を改善することができる。若者や読み書き能力が最も低い成人の教育水準に重点を置くことにより,国の全般的な読み書き能力水準の改善に役立てることもできよう。また,政策当局者は,インフォーマルな学習の価値も進んで評価するべきである。そのためには,単に人々が卒業証書を持っているかどうかだけではなく,実際に何を知っているかを評価することが必要である。職場での経験や実作業による学習からリーディングやインターネットにいたるまで,すべて有益な学習であるが,その価値は見逃されがちである。このためにたいへんな努力が必要かもしれないが,これまでより能力が高く競争力も高い経済という見返りが得られることを考えれば,努力する価値がある。■


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