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DIRK PILAT,
DIRECTORATE FOR SCIENCE, TECHNOLOGY AND INDUSTRY*
サービス業は,OECD諸国でダイナミズムの度合いを高めている分野である。その一つの要因は規制緩和であり,もう一つは情報技術の普及である。
エコノミストの間での上品な会話の中でサービス業を話題にすると,無関心な態度で迎えられることがある。主流の見方は,サービス業はあまりダイナミックでなく,主に給与の低い雇用を創出し,生産性の伸びがほとんどないかまったくないかであり,技術革新をもたらさないといったものである。銀行業,小売業および企業サービス業は,ソフトウェア生産や遺伝子技術と異なり,必ずしも皆が話題にしている産業ではない。しかし,詳細に見てみると,実態は異なる。
まず,現在,サービス業はOECD諸国の経済の60〜70%を占めており,真剣に取り上げる必要がある。ダイナミズムがないどころではなく,サービス業のいくつかの部門は急速な生産性の伸びが注目されており,また,多くの部門は技術革新的である。事実,企業のR&Dにおけるサービス業企業の比率が高まっている。
主たる問題点は,われわれは,依然として,サービス部門がどのように機能しているか十分に理解していないということである。技術革新を取り上げてみよう。製造業においては,技術革新とは,企業が新しいもしくは改良された製品または新しい生産工程を導入することである。これは,マイクロプロセッサーであってもよいし,オートメーション化された生産設備であってもよい。もとより,新しい製品や工程は,サービス部門でも生じるが,サービス業における技術革新は,あるサービスを引き渡す方法,場所および時期の変化にかかわっている場合が多い。例えば,電子バンキングは,伝統的な銀行サービスをいつでも家庭で提供する革新的な方法である。しかし,サービスの革新は,必ずしも技術の変化に結び付いているわけではない。マクドナルドのようなファーストフードのチェーンは,そのレストランにおける客の回転をよくするために,革新的な手法を採用した。特に,食べ物を出すのにジャスト・イン・タイム組立てラインの方法を借用した。また,サービス業企業は,しばしば,具体的な財務上または営業上の問題に対する新しい解決方法など,その場に応じた技術革新も行う。
このような典型的なサービス技術革新(引き渡し方法や組織の変化または臨時の技術革新)は,往々にして製造部門における技術革新よりも識別するのが困難であり,明確に状況を把握するのに役立つ新しいデータが出てきたのは,つい最近のことである。新しいデータは,多くのサービス業が技術革新的であり,サービス業企業は,製造業企業とほとんど同じくらい技術革新に支出することを示している(グラフ1)。実際,サービス部門の一部は,製造業よりも技術革新的である。例えば,1997年において,フランスの知識集約的サービス業の企業の55%が技術革新を行ったのに対し,製造業企業は45%であった。
サービス業が技術革新的になっていることについては,他にもデータがある。例えば,企業のR&D合計に対するサービス業のR&Dの比率は1980年に5%未満であったのに,1995年には15%強に上昇した。カナダのようにサービス業R&Dを綿密に測定する国においては,今や,企業R&D合計の約30%に達している(グラフ2)。電気通信,コンピュータ・ソフトウェアサービスおよび専門R&Dサービスにかかわる企業は,最大のR&D支出者である。また,サービス業部門は,近代的技術の大ユーザーであり,情報通信技術(ICT)の最も重要なユーザーの一つである。特に,金融サービス,教育および電気通信の企業は,平均的な製造業企業よりもICTを用いる。
新しいデータ
生産性のデータに技術革新の影響が徐々に出てきている。例えば,小売業においては,ICTの利用により生産性が大幅に改善している。特に,レジでのバーコードスキャニング作業や在庫管理の分野で改善が見られる。電気通信分野の生産性は,オーストラリア,フィンランド,イタリアおよびスウェーデンで,1990年代に年率8%以内の率で上昇した。また,輸送分野における生産性は,オーストラリア,フィンランド,イタリアおよびオランダで,1990年代に年率2ないし3%で上昇した。しかし,その他のサービス業では,生産性の伸びは不振であった。一部には,ダイナミックな変化の余地がほとんどないことによる。例えば,クラシック音楽の生の演奏やヘアドレッサーの生産性を改善するのは容易なことではない。
また,基礎的データがないことや,あるサービスが実際に何を生産するのかについて意見が分かれるために,生産性の伸びを測定するのが困難な場合がある。サービス引き渡しの際のICT利用も,測定を一層困難にしている。銀行サービスを特定のクライアントのニーズに合わせるなど,ICT利用によりサービスのカスタマイゼーションが行えるようになっている。
しかし,測定方法を改善することにより,はっきりとすぐれた結果を出すことができる。例えば,アメリカの銀行業についての最近の労働統計局の調査においては,銀行業務の利便性改善(例えば自動現金預け払い機の利用にかかわるもの)について品質調整を行った。この調査では,1977年から1994年までの間に年7.4%の生産の伸びがあったことが示されたが,これは,その前の公式の評価結果である年1.3%を遙かに上回っている。公式の評価が往々にして生産性の伸びの一部を隠すことがあるのは,銀行業だけではない。
ICT利用の増大は,これらの変化を促進する上での重要な要因である。多くのサービス業は,情報を処理するとともに流布する。金融サービス,通信産業および行政がその適例である。ICTの発展により情報のコード化が進み,これまでより迅速な処理および流布が可能になる。更に,自動車修理から複雑な意思決定にまで及ぶ諸分野で人間の専門家が提供する知能を補完(または代替)するエキスパートシステムのような,新しい知識技術とともにICT利用の範囲が拡大した。ICTは,輸送および流通の分野でロジスティックスを改善し,複雑なプロセスをオートメーション化することができる一方,保健および社会サービスの分野での利用も普及度が高まっている。また,近年,インターネットおよび電子商取引が提供する新しい機会は,サービス部門に対するICT投資を一層刺激している。技術革新調査によると,ICTは,サービス業企業の必要不可欠な要素である。例えば,ドイツのサービス業企業があげた最重要の5つの技術は,パソコン,オフィス・ソフトウェア,通信ネットワーク,データバンクおよび専門ソフトウェアである。
ICTは,企業が技術革新について協力し,サービスを電子的に交換し,サービスを全世界に提供することをも促進しつつある。電子商取引は,既存のビジネス過程の効率を高めることにより,迅速でこれまで以上に費用効果的に企業を結び付ける方法を提供する。電子商取引は比較的安価であり,かつ,流通,販売,アフターサービス,在庫管理などの比較的簡単ではあるが一般的に必要とされるプロセスのオートメーション化を可能にするので,特に企業間関係の面で,生産性を大幅に高めることが可能である。
ダイナミズムがないどころではなく,サービス業のいくつかの部門は急速な生産性の伸びおよび技術革新が注目されている。
サービス部門を変化させるのに寄与した第2の要因は規制緩和である。比較的最近まで,多くのサービス分野が大幅に規制されていた。郵便,電気通信,鉄道といった一部の分野は「自然」独占とみなされていたが,これは,これらの分野には競争の余地がなく,独占の乱用を防ぐために規制しなければならないということを含意していた。道路輸送など他の分野においては,社会的理由により,無制限の競争は望ましくないと考えられていた。多くの場合,規制のためのこのような根拠は重要性が低下し,多くの国の政府は,競争を強化する措置をとるようになった。競争がない場合,企業は,技術革新を行うインセンティブがほとんどなく,また,品質と商品・サービスのミックスを変化する顧客のニーズに合わせる意欲が弱くなるので,パフォーマンスを改善する上で規制改革が重要であるとの根拠が強まっている。
OECD地域全体の経験によると,適切な規制改革は効果を上げるようである。その証拠は,道路・交通輸送,流通サービス,電気通信,専門・金融サービスにおけるパフォーマンスの改善である。電気通信産業の一層の規制改革は,特に多くのサービス業にとって重要である。ICTのコスト引き下げに寄与するからである。これは,効率改善のためのICTに対する投資を助長し,高性能広帯域通信などのICTサービスへのアクセスを改善し,更に安価にするのに役立ち得,商取引を円滑化する。公共部門が依然として重要な供給者としてとどまっているようなサービス分野(例えば,ヘルスケアや教育)において,市場の役割が増大するのと相まって,民間部門による供給の範囲も拡大した。
技術革新にとって,適切な能力へのアクセスも重要な要素である。サービス業は,通例,製造業よりも労働集約的であり,その一部は高度に知識集約的である(例えば,企業サービス業)。顧客が何を欲しているかを理解し,そのニーズに応えることが特に重要であり,これは,サービス労働者の動機づけおよび訓練に大きく依存する。
したがって,サービス業は見掛けほど不活発ではなく,また,サービス部門と製造部門との間の区別は不明瞭になりつつある。事実,製造部門は,サービス業との類似性を高めつつある。現在,フォード・モータース,ゼネラルエレクトリック,ソニーといった大メーカーの売上の大きな部分は,融資サービスやアフターサービスなど製品に一括されるサービスからのものである。他方,ICTが一層のオートメーション化を可能にし,大量生産を可能にするのに伴い,一部のサービスは,製造業との類似性を高めている。両部門における技術革新の性格も混じり合ってきた。しかし,評価,分析および政策に関する討議の大部分は,依然として,サービス業と製造業との間の区別に重点を置いている。このことは,経済が一層複雑化するのに伴い,相違を理解することに引き続き意義があることを示している。■
* 現在OECDは,オーストラリア政府と協力して,サービス業における技術革新および生産性に関するワークショップを準備しているところである。詳細情報はオーストラリア政府のインターネット・サイトで入手できる。
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