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各国の税制を比較する時,多くの人は中央政府の課する個人所得税の最高税率を比較しがちである。しかし,このような「大見出し」の税率に集中することは,まちがいを起こすもとになる。2回の連載の第1回目である本記事で,
FLIP DE KAMとCHIARA BRONCHIは何故そうなのかを説明する(1)。
OECDのすべての国で,中央政府は個人所得に税を課している。各々の所得税の税率構成は大きく異なっている。ここでの焦点は,最高の限界税率,即ち,標準課税所得水準以上に稼得された各追加ドル,円,ドイツマルク,フランに課される最高の税のパーセンテージにある。多くの研究は各中央政府の課す個人所得税の最高税率だけを比較している。しかし,OECDの29カ国中22カ国では,個人所得に対してほかの税も課している。従って,個人所得に対するすべての税の総合税率を勘案しない税制の各国比較研究は,OECD諸国の最高の所得税の実態を把握していないことになる。
中央政府の課している個人所得税制度の基本構造はOECD諸国で極めて似通っている。所得の一定額は免税とされることが多い。それは個人所得税の「免除」,あるいは控除として知られている。一部の国々では,所得の最低分位は課税免除とはならず,ゼロ%で課税される。このゼロ率は個人所得税の(一部)免除と同じ効果を持っている。もう一つの方式は,すべての所得に課税し,且つすべての納税者に「基本税額控除」の形式で税額控除を行うものである。
たとえ所得税の根本的構造が各国間で概ね同じだとしても,納税者に対する納税告知書による請求額は概ね同じであることには,全くならない。主要な理由の一つは各国がその市民に異なる租税控除を用意しているからである。平均的製造業労働者の総賃金に対するパーセンテージで見て,ギリシャは平均労働者資金のわずか3%,韓国は7%,オランダは14%,フランスは20%,イギリスとアメリカは平均賃金の約24%の控除を行っている。スウェーデンの平均的製造業労働者は中央政府に対し,全く所得税を納めていない。これは租税控除が自分たちの賃金より10分の1高いからである。
いくつかの租税形式を適用するドイツを除き,個人所得税免除またはゼロ課税の水準を超える所得はいくつかの階層に分けられる。この階層数は大きく異なる。スウェーデンは納税上の1階層,アイスランド,アイルランドは2階層,ルクセンブルク,メキシコ,スペイン,スイスはそれぞれ8又はそれ以上の階層を持っている。ある階層内の課税所得は同率で課税される。その後の階層での所得に適用される率は大きくなる。その結果は,累進税である。課税所得総額が増えると,租税負担は益々多く,少なくとも理論上は,納税者に帰着する。
累進制度では,租税軽減は所得の最高単位に適用される限界税率で決められることになる。従って,賃金稼得者がより高い課税階層に移ると,彼らへの租税控除は実際上価値が高くなる。言葉を換えて言えば,個人への所得控除とゼロ税率課税帯の価値は下がるのではなく,上がることになる。これに対し,税額控除額は納税者の所得水準とは関係ない(囲み記事参照)。1998年,オーストリア,カナダ,ハンガリー,アイスランド,イタリア,メキシコ,ニュージーランド,ポーランド,ポルトガルの9カ国は基本税額控除を採用していた。
ある税率表がどの程度累進的であるかは,基礎的租税軽減額いかんによるばかりでなく,課税階層の幅(大きさ)や各階層で所得に適用される限界税率にも依存することになる。そして所得税の階層の幅が大きく異なる一方,所得税の限界税率は著しい多様性を示している。これは,税負担の公平な配分についての各国の見解を反映したものである。
中央政府が課した個人所得税の最高限界税率は,スウェーデンの25%,ニュージーランドの33%からオランダの60%にまで及んでいる。アイルランドとニュージーランドでは,平均的製造業労働者の所得水準にある納税者は,それぞれすでに48%,33%の最高限界税率を適用されている。オーストリア,ベルギー,カナダ,フィンランド,フランス,ドイツ,オランダ,イギリスでは,労働者は最高税率を払う前に平均の約2倍の稼ぎをしなければならない。他方,スイス,アメリカの従業員は,その給料が平均的製造業労働者の賃金の10倍にならないと,最高税率をつきつけられることはない。トルコでは課税所得が平均賃金の29倍以上にならないと,最高税率が適用されない。表はOECDのすべての国の中央政府の課する個人所得税の税率構成を概観したものである。
この各国の所得税率表一覧からなんらかの結論を引き出す前に,以下の3点に留意すべきである。第1に,各納税者に対する実際の納税請求額は,様々な控除の影響を受けている。例えば,住宅ローン利息とか職業年金計画負担がある。また例えば,資本利息や受取利子のような非課税となる所得もある。これは,法定税率は低いが基礎的な租税軽減,控除,非課税が殆どない国々の実効税率は,非常に寛大な非課税措置や控除が高い法定税率に伴う国々の実効税率よりも高くなり得ることを意味している。第2点は,我々が最初に述べたことである。即ち,多くのOECD諸国では,中央政府が課するのとは別に,所得に対する税があるという事実である。最後に各国の税制制度は些細な特異性で特徴づけられることがしばしばあり,これは事態をいくぶん複雑にするではあろうが,これまで述べてきたような全体像に大きな意味を持つことはないであろう。
納税額のつり上げ
幾つかの理由で,多くのOECD諸国における納税者は税率表に示されている個人所得税の代表的あるいは「標準」税率より高い限界税率に当面することがしばしばある。中央政府は時に所得税を一時的に増加することがある。ベルギーの緊縮付加税やドイツの連帯税のような例である。そのような付加税は,所得税総額をつり上げることになる。
所得のある者は,中央政府の所得税の上に,地方税,地域税,州もしくは邦の所得税をも払わなければならないことがある。これはベルギー,カナダ,アイスランド,日本,韓国,ノルディック諸国,スペイン,スイス,アメリカに見られることである。少数のOECD諸国では,地方や地域の所得税が非常に高率である。スウェーデンは州および地方の所得税の典型的な最高税率は31.7%で,これは中央政府の課する25%を超えている。一部の国では州,地域あるいは地方所得税の支払額は控除対象となる。それでそのような税の支払い額は,中央政府における所得税の課税所得の計算を行う際,控除されることがある。グラフで「総合計」税率を示す際に,中央政府以外の所得税が控除され得ることは勘案してある。
すべて税か?
もう一つ注意すべきことは,特に欧州で一部の国の政府が国家教会のために所得に課している税である。オーストリア,ドイツ,ノルディック諸国,スイスはすべてそのような教会税を有しているが,図表ではデンマークとスイスにだけ含まれている。人は実際教会税とは,国際機関が定義している「税」だろうかと疑問を持ったであろう。即ち,一般政府への強制的で無対価の支払いとは異なると考えたかもしれない。ここで「無対価」というのは,政府から納税者に供与される便益は,通常は納税額に応じたものでないという意味である。
社会保障負担の属性を定義するのは時に難しい。負担金は実際に税なのか,或いは社会保護に対する支払いなのであろうか。その回答は,部分的にはこれらの支払いがその提供する便益の価値に直接関連する程度によることになる。社会保障プログラムは2つの基本的形態がある。ある場合には収入は本質的に全人口に及ぶプログラムの資金を賄うために用意される。この場合,税源は個人所得税の税源と同一か,極めて似ていることになる。しかし,所得税の税率構成とは対照的に上限が適用されることが多く,その上限以上の所得はさらに給付を求められることはない。
総人口を対象とするプログラムに加え,多くの欧州諸国は,労働者のみ,少なくともその一部を保護する社会保険プログラムを運営している。そのような雇用者社会保険の資金を賄う税源は賃金所得であって,通常上限が設けられていた。それはまた,失業と能力喪失のリスクに対する賃金保障最高額と関連している。更に年金プランのような,支払いが個人勘定に行われる数少ない事例では,負担金と便益の比較的強い繋がりが,その負担から一層「税金的性格」を薄めるのである。
勿論,最高限界税率を考えた場合,社会保障負担は上限が課されない場合だけ考察の対象となる。社会保障負担が課されている場合,これは通常は個人所得税の対象から控除できるが,例えば,ハンガリー,ノルウェー,イギリスの場合はそうなっていない。「総合計」限界税率を計算する場合,OECDは社会保障給付金の控除を勘案している。
所得税と社会給付金は,それらの税源も経済的影響もよく似ているので,中央政府の個人所得税の「標準」最高税率と「総合計」最高税率とを比較した図表の基礎にある計算に両者は含まれている。これらには中央政府の所得税の一時的増収,地方や地域そして州の所得税,教会税,従業員社会保障負担などの総合効果も含まれる。これに含まれないのは,雇用主が直接払う社会保障負担で,たとえそれらが厳しい賃金交渉を通じて最終的には労働者によって支払われることになったとしても含まれない。これと反対に,労働の需要が大きいと,従業員はその所得税や従業員給付金の一部を,さらなる賃金上昇を要求に続くものとして,雇用主に負担させることができるかもしれない。そうは言っても,この記事は法が従業員に支払いを求めている法定税率だけを考えている。
あなたの考えよりも差は小さい
さて,我々の「総合計」の税率に関する分析の結論はどうなるであろうか。一つの教訓は,様々なOECD加盟国に居住する最高の所得稼得者間の限界格差は考えられているより少なく,最高税率が示す程大きくないことである。事実,多くの国の限界最高税率は,所得への総合計の税率を考えると,フランスとトルコで所得の61%,デンマークとスウェーデンで62%,日本で65%,ベルギーで66%に上る。アメリカの納税者に対する総合計の最高税率は,彼らの居住する州により40%から48%になる。これは,多くの人が典型的な福祉国家と考えるスウェーデンにおける総合計で最高税率を支払う人々との差が,多くの場合アメリカの方が9%分低いことになる。しかし,欧州諸国がこのことから過度の自信を持つ前に,アメリカの所得稼得者は,スウェーデン及び他の多くの欧州OECD諸国の納税者は,アメリカ人がそこに至るよりもかなり低い所得水準で最高の税率が課される所得階層に移ると指摘できるであろう。
次の『OECD Observer 217号』では,同じ国で最高税率がいかに変わり得るかを見ることにする。そこで注目すべき驚くべき事実は,限界という点になる。所得が増えた一単位で最高税率を負担するのは,富者でないことが少なくないことである。
(1) この記事のデータはOECD Tax Data Baseからのものである。
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租税軽減は実際にはどのようになされるか
所得税納付者に対する基礎的軽減は様々な手段から構成され得る。A国とB国は4階層からなる同じような税制構造を持っているとする。所得の最初の20,000は20%,次の20,000は30%,次の20,000は40%,60,000以上の所得は50%の最高税率で課税されるものとする。
A国では納税者は10,000の個人免除の権利を持つ(税率適用以前の処置である)。第1階層の低所得者の納税告知書は2,000減らされる。というのは,上述の10,000の除外でその20%が免れ,最初の10,000単位に対してのみ納税するからである。最高税率の階層の納税告知書は5,000減らされる。というのは,これら所得の最高の10,000単位に50%の納税を免れるからである。言葉を換えて言えば,租税軽減は,所得の最高の10,000単位に適用される限界税率で決まるので,その軽減額は所得が大きくなるにつれ大きくなる。
B国ではすべての納税者はその所得税に対し,3,000の税額控除を請求できる。B国ではその所得水準にかかわらず税額軽減額は各人同一である。税額控除が納めるべき納税額を超えていても,「無視しえる」と認定されれば,余剰額は納税者に還付されない。税額控除が「無視不能」であれば,税額控除と納税義務額との差額は国庫が払い崩し,その結果,「負」の所得税ということになる。
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